京山幸太 節目の27歳を前に想いを語る 2021年2月号より
目次
1.今後の方向性を見つけた一年間
2.27歳を目前に控え更なる進化を
1.今後の方向性を見つけた一年間
―去年からコロナの影響で活動が思うようにできない日々が続いています。その分、新ネタを書いたり、覚えたりしていたような印象があります。
幸:ネタは覚えてましたね。「加茂の河原」覚えましたし、「ギャルサー」も覚え直して、この前の繁昌亭の節劇も覚えて、今も幸乃さんとの掛け合い浪曲を覚え中で、覚えるのが続いている気がしますね。
―去年の夏頃のインタビューで小鉄シリーズを全部覚えたいと話されていましたが、進捗はどうでしょうか。
幸:「加茂の河原」は覚えたんですけど、その後「山崎迎え」はストップしてますね。R-1がヤバいなってなって、とりあえず毎日朝起きて昼まではネタ書いてるんで、そっから仕事がなかったら…本読んじゃうな(笑)
―あれ?(笑)
幸:なんでこんな時間ないんやろうと思ったら、読書してるからですね。覚える時は長々と時間かけず、一週間とか期間決めて覚えるので。あと、古典を参考に新作を書こうと思ってて、昔の講談の台本集、落語の怪談集、柳田邦男の日本の伝説系の本を買いました。
―なるほど、覚えるよりも、書く方に気持ちが向いているのですね。そういう意味では読書はこれからアウトプットしていくためのインプットとして知識の蓄積になってますかね。
幸:どうなんでしょう。直接的ではないかもしれんけど影響を受けてるとは思います。
それと、去年を通して今後の活動の方向性が定まりました。
―といいますと。
さっきも少し言いましたが、日本の古典の浪曲化をしていきたいなと思ってます。
―なるほど。これまでも新作は書かれていましたが、今後はそういったにテーマを絞り、さらに注力していきたいと思ってるわけですね。
幸:そうですね。今もそうですが、これまで目指してきたのは知名度をつけることで、それはずっと過去に生きてる感じだったんですよ。
―過去に生きてる感じですか…。詳しく教えてください。
幸:以前のインタビューでも自分は27歳くらいで売れると思い込んでるって話をしたことがあったと思うんですけど、これは子どもの時から思ってて、そう当時から「今は将来27歳で売れる自分の過去なんや」って意識があって、今を生きてる実感がしたことがないというか。だから、ウィキペディアとかに書かれてる年表の途中にいるような感覚です。でも、もうすぐ実際に27歳になるので、売れれたにしろ、売れれなかったにしろ、その後自分がどうやって生きていくんかあんまり思い描けてなかったんですよね。
―27歳までが描かれた年表で、その後は白紙だったわけですね
幸:そうなんです。知名度を上げる目標の次が何もなくて。どうやって生きていくんやろって思ってんですけど、最近になって売れる以外にもやりたいことが見えてきましてたね。だから40歳、50歳まで生きたいなと思うようになりました。
―40,50もまあまあ短いですよ。みんな心配します(笑)
幸:その都度目標が湧いてくることがわかったので、その時なったらまたやりたいことが見つかってるかなと(笑)。
―それなら安心しました。それではその新たな目標について具体的に聞いていきたいと思います。古典の浪曲化を考え始めたきっかけは何かあるのでしょうか。
幸:おととし町田康さんにお会いして、それで町田さんに憧れちゃって、本とか読んでる中で、町田さんが明治以降の文学が西洋化されて、それ以前と途切れてしまってるという話をされてて、それがめちゃくちゃ自分に刺さったんですよ。だから、自分は途切れる以前の文学の続きとして浪曲を書いていきたいなと思ったんです。
―なるほど、それがつまり古典の掘り起こしての浪曲化だったり、自分で創作するにしても古典からの流れを感じるものを作ろうということですね。
幸:そうですね。
―面白そうですね。古典といってもジャンルは幅広いし、色んな作品を見てみたいです。題材を探す上で、どういう話とかイメージはありますか。
幸:それもよく考えるんですけど、今持ってる自分の演題の中で好きなものを考えると。十人斬りと小鉄の名張屋新造なので、そういうところが参考になるかなと。
―その二つに惹かれる理由はなんでしょうか。
幸:たまたまかもしれないですけど、人生取り返しつかない事が結構あるけど生きていかないといけない、そういうのが描かれてる話は好きですね。理想を描いてるような浪曲よりは、こういうのが好きですね。ヒーローよりは人間臭い感じというか。
―歴史の教科書に載るような英雄伝とかではないのですね。
幸:あとは、ストーリーが節と相まって共感させられるものがいいなと思いますね。
―たしかにストーリーの複雑さよりも、描かれている感情をいかに節で伝えれるか、そこは浪曲の醍醐味でもありますね。
幸:そうなんです。だから、どんなんが書きたいかって言われたら難しいですけど、それも含めて見つけていきたですね。
―個人的にはどんどん色んなジャンルやってほしいです。幸太さん自身も気づけていない自分に合ったジャンルを見つけるために、新ジャンルに挑戦し続けるとか。
幸:そうですね、自分も気づいてない一面が絶対ありますし。やってみないとわからないことがあると思います。
―何をやるにしても、幸太さんの新しい挑戦が見られるのは本当に楽しみです。
2.27歳を目前に控え更なる進化を
―次はお笑いの活動の話を聞いていきます。知名度を上げることを目標に掲げている芸人活動ですが、まさに今年は自分自身が売れると思っていた27歳になる年です。
幸:あんまり27歳に縛れて、自分を追い詰めると、しんどいと思うので意識し過ぎない方がいいかもしれないんですけど、あと1年半の間に売れないと自分の当初の予定からは狂ってしまうので、焦ってはいますね。
―今年の早々にR-1の二回戦がありました。敗退してしまいましたが、昨年の一回戦敗退からは大きなステップアップではないでしょうか。
幸:R-1はまずは準決勝を目指してるので、今年は最低でも準々決勝までいきたかったですね。二回戦用のコントのネタを用意してたんですけど、なんかネタ変えて落ちたらめちゃくちゃ後悔するやろなと思って、一回戦と同じネタにして、結果いまめちゃくちゃ後悔してます(笑)。
事務所のマネージャーさんからはR-1の1回戦、2回戦で落ちたネタとか、ライブでスベったネタをいつまでも、自分の時代が来ると思ってやり続けんと、すぐ捨てて、新ネタを書かなアカンって言われてて、それだけはちゃんと守ってるんで、マシにはなっていってるんやとは思います。
―なるほど、そういうスタンスで試行錯誤を繰り返すことが大切なのですね。先日はテレビ出演もあったので、それも知名度という点で成果ではないでしょうか。
幸:こないだのテレビで即興浪曲がウケたんで、ひな壇に座れれば出来るネタがあるって、そう思えるようになったのはめちゃくちゃ進歩やなと思います。芸人やって一年目はテレビ出ても何も喋れなかったと思うんで。出ても何もできなかったところから、出れさえすれば出来ることがあるっていう状態にまでこれたのは大きな変化やと思いますね。
今後このネタを舞台でもやってみて、それがウケたら舞台用のネタとしても磨いていこうと思ってますし。
―テレビに出た感想はどうですか。
幸:緊張しました。やっぱり。
―いつも堂々としてる幸太さんでも。
幸:緊張しますよ(笑)。即興浪曲はホンマに台本にもなかったんで、それでも形にできたのは自分にとって大きいことやなと思います。
―自信にも繋がりそうですね。
幸:繋がりますね。そして、収録の後はドッと疲れました。気が張ってたんでしょうね。
―即興浪曲はツイッターでも面白いって反応が結構ありましたしね。そうやってウケるネタが少しずつ増えてきてる感じですね。
幸:事務所のオーディションも自分の向き不向きとか決めずに積極的に受けてきてたので、それもあって、場面に応じて求められるモノが分かってきた気はします。
―そして、即興浪曲が舞台でもウケれば、舞台でもトークでも臨機応変に使えるネタの土台にもなりますね。
幸:あんまりそんな風に気負わないようにはしてるんです。今までも気合入れたネタの方がスベッて、やけくそでやったネタの方でウケたりもしてるんで(笑)。(今度の舞台では)試すくらいの気持ちでいてます。
―気持ち高めすぎると、ダメやった時の精神的なダメージも大きそうですもんね。
幸:本当に浪曲では味わったことのない喜びと悲しみを味わいます。スベりまくった時はホンマにこんな悲しい気持ちなるんやってくらい落ち込みます。
―人格否定されたような…。
幸:ホンマに。根っから否定されたような気持ちなりますね。
―浪曲はお客さんも応援する気持ちで観に来られてますけど、お笑いは面白くなかったら笑ってくれないし、そのネタ書いてるのも自分やからダメージは大きそうですね。
幸:そうですね。だから、自分に何ができて何ができないのか本当に客観的に見定めるきっかけになるというか。自分に合ったネタをやることの大切さが顕著に出るんで。自分に合ってるものは何かずっと考えてますね。
―ピン芸はやり方もジャンルも無限にありますもんね。その中から自分に合った笑いを探すための試行錯誤があるのでしょうか。
幸:傷つけられまくって、残ったものがホンマの自分みたいな(笑)
―本当に磨かれてる感じですね。
幸:やっと自分の形みたいなモノに、もしかしたら近いんじゃないかと思うものが出てきたんで、それがウケたらいいなっていうところですね。
―なるほど、ご自身で期限を定めてることもあって、日々成長されている感じですね。1年前との違いを感じます。今年1年大活躍を期待してますね!