「STORIE SENZA FINE」Iela Mari & Enzo Mari
本はページをめくると時間が経過する、という大前提の約束事を意識的にその本造りに取り入れた作家として、以前ブルーノ・ムナーリを挙げましたが、このイエラ・マリ絵本を見ると、彼女もまたそのことに意識的だったということがうかがわれます。
しかしイエラ・マリの場合は時間が経過することがスムーズに、連続して進むのではなく、そこにはページをめくる断絶、ある場面と場面の間にある避けることの出来ない断絶があることもはっきりと自覚していたのでしょう。(ムナーリはこの断絶を乗り越えるためにページに穴を開け、また次のページが透けるような紙を使ったのでした)
この絵本「STORIE SENZA FINE」はそうしたページとページの間に断絶があることを利用した絵本なんです。ページに変わった作りがあるというわけではないのですが、そのコンセプトからはしかけ絵本と言って良い絵本だと思います。
二つの作品が収録されている絵本なのですが前半の「Mangia che ti mangio」では動物たちの食物連鎖の様子が、そのページをめくるということをうまく利用して描かれているのですね。
後半の「L’uovo e la gallina」(こちらはエンツォ・マリとの共作で日本版も「にわとりとたまご」の題で出ております)も同じアイデアを更に発展させたような絵本になっています。
どちらの絵本もページをめくることの時間の連続性、そして断絶をうまく利用した絵本で、しかもその内容は円環的になっていて(この絵本のタイトル「STORIE SENZA FINE」は訳すと「終わりのない物語」とのことです)、言葉が一つもつけられていないながらも、深いユーモアと、そして哲学とも呼べそうなものを感じることが出来る美しい絵本になっています。
是非オンラインストアでもご覧下さい。
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「STORIE SENZA FINE」Iela Mari & Enzo Mari