川苔山(かわのりやま)夏至が近い時こそ奥多摩をゆっくり日帰りハイキング
2017年6月3日の天気予報は晴れ。向夏は梅雨入りとなるため、日本列島に梅雨前線が上昇してくる前に川苔山の日帰りハイキングを選びました。6月21日は夏至で、春が過ぎてから少しずつ日照時間が延びているように感じられます。
川苔山の標高は1363m。それに対して、スタート地点から頂上までの標高差は1048mになります。標高差があるということは、一生懸命に高く登らなくてはいけない証拠。そして、その頂上から安全に降りてくるためにはたくさんの時間と体力が必要になります。当日の日没時間は18:53となっていたため、冬とは違って焦らずにハイキングできることを考えて川苔山を選択しました。
上の写真は出発前に撮影したJR青梅線・鳩ノ巣駅です。この写真の左奥側にベンチやトイレがあるため、登山の準備や待ち合わせにちょうどいいかもしれません。この広場には、早朝から売店が開店しているため飲料水を購入することも可能になっています。この線路沿いに向側へ進むとJR青梅線の踏切があるため、それを渡って北へ進むと少しずつ上り坂に変わっていきます。
急こう配を登ってくると、15分以内で登山道の案内標示にたどり着きます。「いや、もう少しなのかな?」と思いきや、この階段を登れば登山道がスタートします。そのため、ここらへんでもう一度屈伸やアキレス腱の伸展、ストックや靴ひもの調整をすると登りやすくなることが考えられます。
6月に入り、太陽から照らされる植物が緑色に溢れてきていました。ここは、たくさんの鳥たちが綺麗な鳴き声で登山客を迎え入れてくれるため、気持ちよくスタートが切れます。
椛(もみじ)といえば、紅葉の季節にイメージされるくらい季節感の強い木になります。「紅葉」という漢字は「もみじ」とも読めることはご存知だと思います。この椛は普段から見るものより太く、たくさんの葉が風に揺られながら涼しげな音をつくり出していました。
川苔山・本仁田山・瘤高山への分岐路に来ると、1つ目の通過地点「大根の山ノ神の祠」があります。この祠(ほこら)には、大山祇命(おおやまずみのみこと)が祀られています。大山祇命(おおやまずみのみこと)はこの山々を司る神であり、伊邪那岐と伊邪那美(いざなぎ・いざなみ)の間に生まれた子どもになります。 ここは分岐地点として、各ルートへ進む前に安全祈願を込めてお参りすると御利益があるかもしれませんね。
「大根の山ノ神の祠」に着くと、そこから広場に出ます。向側の山に向かって北へ進むと川苔山への最短ルートとなります。左の北西側に進むと本仁田山や瘤高山を経由できるコースになります。
この日は日照時間も長くなっていたため、左側を選択し瘤高山の方へ向かって歩きました。杉ノ殿尾根という道で、標高1000m以上の地点まで一気に登ります。
この尾根道では針葉樹林がたくさん生えているため、太陽の光を強く浴びる心配はありません。しかし、せっかくの登山ハイキングで日光を避けるのはもったいないのかもしれません。登山をする際、太陽を多く浴びれば頑丈な骨に近づけられるメリットがあります。たくさんカルシウムを摂取したからといって骨が強くなるわけではありまあせん。これが身体の中で吸収されないと意味がないのです。それを助けるのがビタミンDで、皮膚が太陽をたくさん浴びることでコレステロールはビタミンDに変化するのです。
じつは、骨密度のピークは20歳前後でそれを過ぎると少しずつ低下していきます。女性は男性にないホルモンがあり、40歳を過ぎるとそれが大きく低下するため骨密度に大きな影響を与えます。「牛乳を飲んでるのに…サプリを飲んでるのに…病院で診てもらってるのに…」それでもなかなか効果が得られないのは、カルシウムの吸収力を強くするビタミンDが足りていない証拠なのかもしれません。しつこいようですが、ビタミンDは栄養剤を買わなくても太陽を浴びれば身体の中で作られるものです。それだけ、太陽を浴びることは大切ということが分かって頂けると嬉しいです。
針葉樹林から広葉樹林の広がった場所へ移動してきました。紅葉の時期に来たときは、カラフルなスポットになっていました。聞いたことのない鳥の鳴き声があちこちから聞こえてきました。ここは、足場も安定し、集団で歩いていても列を作らずに進むことができます。
2つ目の通過地点「大ダワ」です。祠の中は祀られている神が入っていませんでした。この祠の西(左)につながる登山道はロープが張られており通行禁止になっています。ニホンジカが異常繁殖し下草を食べ荒らしたことで登山道の一部分が崩壊し通過不能になったことが知られています。そのため、川苔山の頂上を目指すためには真っ直ぐのルートを選択します。
上の写真は坂を上がり、大ダワを下に見たものです。大ダワからは急斜面を登ることになるため、筋肉を多く活用します。直線状に上がることは困難になるため、足元を見て登りやすい地面を選択しながら上がることをお勧めします。
大ダワを越えると岩が多くなります。このルートは鋸尾根と言われ、川苔山の中でも難関場所のひとつになります。鋸尾根は急斜面によって標高を1100mから1200mまで一気に登らなくてはいけないルートになります。
驚いたのが、鋸尾根の岩には木が生えていること。木の根が岩に食い込むようにして力強く伸びています。
岩に登り、後ろを振り返ると、左側に城山、真ん中に瘤高山、右側に本仁田山が見えます。
3つ目の通過地点「舟井戸の鞍部」です。6月に入り、ここではヤマツツジが綺麗に咲いていました。舟井戸の鞍部では広葉樹林が多く、黄緑の葉が上に広がっています。この分岐点では、直進することで川苔山方面に向かい、右折することで海老小屋山・赤杭山方面に向かいます。左後方は先ほどまで登ってきた大ダワ・瘤高山・本仁田山方面、右後方が大根の山ノ神と最短で結ぶルートになります。
舟井戸の鞍部を過ぎると30分程度で川苔山頂上へ到着します。登山のガイドブックでは奥多摩駅側の川苔橋をスタート地点として鳩ノ巣駅をゴール地点にするルートが多く紹介されています。そのため、午前中は山頂より奥多摩駅側に登山客が多くなります。鳩ノ巣駅を早朝にスタートすることで登山客と会うことは少ないため、大自然をゆっくり堪能しながら自分のペースで歩けるメリットがあります。川苔山のルートは狭いため、登山客を横から追い越すことは困難になっています。自分のペースを保持して登りたい時は鳩ノ巣駅側からハイキングすることをお勧めいたします。
山頂は小広く、ベンチもあるため休憩しながら展望を楽しめる場所になっています。山頂では西側の展望を目的に登ってくる人も多く、雲取山、大菩薩嶺、御前山が見えます。南側にも大岳山が見えます。この日の山頂到着時間には空に雲が多く出てきていたため、富士山を見ることができませんでした。山頂手前の最後の登山道は広くなっているため、その脇でシートを敷いて休憩している人が多く見られました。
休憩をとった後は山頂より西側の奥多摩駅方面。山頂からどうやって降りて行くか迷ってしまうこともあるかもしれません。雲取山に向かって写真を撮影していたところでたくさんの人たちが休憩をしていますが、その人たちの前を降りて行くことになります。「え!?本当にここ降りれるの…?」と思うかもしれませんが、ウスバ尾根というルートになっています。
5つめの通過地点「足毛岩の肩」ですが、案内標示に傷後があるのは何の仕業なんでしょうか。ここまでは足が壊れるような激しい段差が継続するため、この傷後があっても休憩だけはとりたくなってしまいます。足が少し滑ると同時に石が転落していくため、集団で降りるときは前方・後方の間隔を空けて一人ずつ降りていくことをお勧めします。集団ハイキングのコツとして、降りる際は経験者が先頭になり安全な地面を選んで降りて行くことで初心者も迷わずに足を進めることができます。
足毛岩の肩を過ぎると橋を渡ることが多くなってきます。橋を渡っている最中は自分の体重によって橋が揺れるので、転落に注意して慎重に進まなくてはいけません。
前回は一年前の秋に来ましたが、百尋の滝を見てからしばらく興奮が続いていたのを思い出します。それを家族や友達に自慢したり…。でも、今回は滝が少し小さいような?川苔山のいちばんの名所は百尋の滝であるため、今回はこれを目的にしているようなもの。内心ではガッカリしながら下を目指すことにしました。
それでも、更に西側の方から水の音が聞こえていました。今度は階段や梯子があり、どんどん下へ降りていくため滝のことを考えている暇はありません。しかし、降りる方へちゃんと「百尋の滝」という案内標示が出ていたため、先ほどのテンションがまた上昇してきました。
大渓谷が見えると、水の音が更に強くなってきました。
これこそ、6つ目の通過地点「百尋の滝」です。「やっぱりすごい…。」40mの高さから降りてくる水がものすごい風圧をつくり出し、休憩の回復力を促してくれます。運が良ければこの滝に虹がかかる瞬間も見ることができるため、到着時間を午後に設定して滝に太陽が当たっているタイミングを狙うといいかもしれません。大きなカメラを持った人はこのタイミングを知っているのか、やはり午後を狙って百尋の滝の下でずっとカメラを構えています。
百尋の滝を通過した後は何度も橋を利用して大渓谷の両端に沿って降りて行きます。このルートの特徴は、渓流に触れる場所があれば、高い崖から見下ろすようなところもあります。高いところは道が狭く1mも幅がないため、下山ルートに使用するときは滑落に注意しながらゆっくりと降りることが必要になります。
川苔山は苔が豊富に生えているため雨をたくさん吸収できます。山の内側に水を溜めこみ、湧水があちこちから合わさることで渓流が太くなっていきます。川苔山は奥多摩のなかでも雲取山の次を争うほど登山時間が長い場所になります。そのため、水分が不足する事もおかしくありません。でも、ここは奥多摩の中でいちばん水が豊富な山になるため、水場を利用して空いたペットボトルを補給することもできます。
川苔山の滝は「百尋の滝」が有名になっていますが、他にも滝をたくさん見ることができます。水の音と木や花の香り、そして鳥の鳴き声によって気持ちのいい日帰りハイキングを堪能できます。
渓谷沿いのルートは、針葉樹林と広葉樹林が混ざり合って生えているため植林地帯ではないことが分かります。自然豊かなルートになっている分、熊の出没は東側よりも高くなることが考えらえます。山には夜行性動物が多く住んでいるため、夜間は人の気配がなくなったことを察して多くの動物たちが活動します。そのため、昼間のうちに登山客が自然界にないものを置いていくと動物たちが病気や怪我の被害を受けることになったり普通では考えられない活動を起こす可能性もあるため、ゴミ等はしっかりと持ち帰らなければなりません。
7つ目の通過地点「細倉橋」です。川苔山を登山していると岩や崖、急斜面が多く神社・寺院を山の中に建てられるような場所ではないことがわかります。高尾山とは違い、ルートの舗装が不十分であったり小屋の崩壊も多くあるため山頂までトイレがまったくありません。ここはトイレが設置されていますが、故障中のまま使用ができない状態になっています。川苔山の難しさは、トイレをしっかりと済ませて水分を上手く調整して進んでいかなければ、下山時の尿意に襲われて苦痛が大きくなってしまうことです。しかし、水分を惜しむことで簡単に脱水症状も起こる危険性があるため、この季節の気温は川苔山ハイキングデビューに最適と考えられます。
最後は川苔橋バス停に向けて、渓流沿いの「川苔林道」を降りて行きます。「こんなにコンクリートが歩きやすいとは…。」と思うほど足の筋肉にピークが近づいていることが分かりました。ここからバス停まで早歩きで30分、ゆっくり歩いても45分程度で到着します。この川苔林道は一般道路からゲートを開けて進入してくる道路になるため、道路の真ん中を歩いても自動車の走行をよける機会はほとんどありません。但し、一般道路の扱いではないため、崖側から岩石・土砂・木が落ちてきたまま整備されていない状態になっています。川苔林道はいつ何が落ちてくるか予測できないため、真ん中よりも渓流側に寄って歩いていけば事故を最小限に防止できます。
川苔林道を歩いている時には早朝の空と同じように雲がなくなっていました。この日は日照時間が長かったため、安全を第一にゆっくりハイキングをすることができました。川苔橋で後ろを振り返ると川苔山のハイキングに大きな達成感を持ちました。
川苔橋から奥多摩駅までは、日原川沿いを西東京バスが走行しています。(13分で到着)日原川沿いの道路はほとんど歩道がないため、車線の外側を歩いていくことになります。自動車の速度が速いため、バスを利用する方が安全な選択になります。
川苔山の特徴として、山頂を境にして東側は尾根道、西側が渓谷道といった二つの側面を楽しめるところです。そのため、往復路にするよりも縦走路にした方が大自然を多く堪能できるといえます。川苔山は「花の百名山」に選ばれているため、登山ルート内で多くの花に出会えます。川苔山は大きな緑の中に季節ごとの花が映えることで違った景色や印象を生み出すことが考えらえれます。初心者でも、まずは夏至の近い季節を狙って川苔山の第一印象をゆっくり目に焼き付けてみるのもいいかもしれませんね。