歌舞伎界異色のコラボ 初心者歓迎の石川五右衛門が渋谷で観れる
【芸能報道】 平成二十九年六月九日に東京・渋谷にて、歌舞伎役者の十一代目・市川海老蔵(丁巳)が『第四回自主公演ABKAI(えびかい)二〇一七 石川五右衛門 外伝』の公開舞台稽古を報道陣向けに行った。会場は、Bunkamuraシアターコクーン。一公演で七百五十人の広さだ。歌舞伎座の半数の収容だが、役者との距離感が近い演出となっている。
本公演は海老蔵(写真上)が近年、積極的に取組んでいる“伝統の継承”と“新時代の歌舞伎の創造”がテーマ。二十五年より自身で企画制作を行っている。第一回公演から四度目を数える。『ABKAI』は歌舞伎を縁遠く感じている若い世代や舞台を見る機会が少ない層に楽しんで貰うべく発足された企画公演。公演開始と共に、津軽三味線と太鼓の音が会場に鳴り響き、音の波が会場を支配する。現代の劇では感じる事が余りできない研ぎ澄まされた世界。息遣いや足音。一つひとつに全身が反応し、胸が高鳴るのを感じる。
歌舞伎独特の言い回しで台詞が聞き取れなくとも、現代舞台の会話の様な一面もあり、初めての歌舞伎挑戦者にはとても見やすいだろう。
<初心者でも愉しめる様に>
囲み取材では海老蔵、中村壱太郎(庚午)、市川右團次(癸卯、写真上)、ジャニーズの中山優馬(甲戌)、俳優の山田純大(癸丑、写真下)、前野朋哉(丙寅)が受答えをした。今回の俳優とのコラボについて最年長の右團次は、「みなさん純粋なもの持ってる。我々、職業化してる所があるので、そういう純粋な無垢な精神に戻してもらえる所ですね。まだ、何も分からなかった自分に、良い化学反応が起きてお客さんから観て、面白いミスマッチのマッチみたいな新しい世界ができると良いですね。色んな色が癒合して、新しいABKAIになっていったら。」とコメント。良き面が大きくあった事に刺激を受けた。
初参加の中山は、「海老蔵さんに教えてもらって自分(メイク)でやりました。一段と気合い入りますし、緊張もします。筋力もかなり使うので。」と、歌舞伎の大変さを一身に感じた。海老蔵は最後に「歌舞伎俳優もさる事ながら、俳優が出てる事で新しいお客様や、若いお客様も多いのかなと思って。初めて(歌舞伎を)観る方が多いんじゃないのかなと、私の中では推測してるんですね。ですから内容も比較的、分かりやすく早く、テンポ良く、お祭り感のある内容にしていきたいなと思っている。そういう意味で初めて観る方には観易い作品になったなという事で。」と、今回の挑戦を話した。
歌舞伎俳優、日本舞踊の藤間流・花柳流等の様々な流派、義太夫や津軽三味線、太鼓、アクロバティック等の要素を交ぜ合わせ、日本の新しいスタイルを創る。尚、本公演二十五日までの全二十七公演。料金は一等席が一万二千円。
=あらすじ=
豊臣秀吉が天下統一を果たしてまもない頃。世間では石川五右衛門一家が活躍し、庶民の喝采を浴びている。
ある日のこと、石川五右衛門(市川海老蔵)の表向きの稼業である白浪夜左衛門一座の小屋の前で、三上の百助(山田純大)、足柄金蔵(前野朋哉)らが見物客を呼び込んでいる。やがて一座の花形である堅田の小雀(中村壱太郎)が踊っているところへ、何者かに追われるマリオ(市川九團次)が逃げ込んで来る。このマリオは先ごろ駿河沖で襲撃された南蛮船に乗っていた宣教師で、船にはポルトガルの国王から日本の民へ送られた財宝が積まれており、それが何者かによって奪われたことを語る。そして国王の財宝が戦のために使われては元も子もないと五右衛門たちに伝えるところ、不意打ちに遭って殺害されてしまう。
マリオの話から五右衛門は、この一件が徳川家に仕える柳生宗矩(市川右團次)の仕業であることを悟ると、徳川家の居城のある駿府へ向かう。当の駿府城では、徳川家の重臣である酒井忠次(片岡市蔵)が今回の陰謀を画策した柳生宗矩を叱りつけている。そんな様子を宗矩の子息の柳生十兵衛(中山優馬)は、無念の思いで聞いているが……。
こうして南蛮船の財宝を巡って五右衛門たちと、宗矩、十兵衛、くノ一お雪(大谷廣松)ら柳生の人々との、お互いの秘術と計略を尽くした物語が幕をあける。
=クレジット=
市川海老蔵 第四回 自主公演 ABKAI 2017 石川五右衛門 外伝』
主催:株式会社3Top/テレビ東京/読売新聞社/ABKAI2017実行委員会
企画:市川海老蔵
制作:株式会社3Top
協力:松竹株式会社
制作協力:全栄企画株式会社/株式会社ちあふる
撮影記者:岡本早百合