Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

西ローマ滅亡の道9-敵包囲下「神の国」へ

2017.06.12 11:00

さてアウグスティヌスは、キリスト教以前にもローマに災厄は見舞われていたと論証する。そしてキケロなどを引用して、ローマの危機は自らの堕落のせいであるという。これは塩野七生さん以外のほとんどの定説である。そして彼は「地の国」と「神の国」を区別する。

「地の国」で考えているのはローマ帝国で、この原理は自己愛で、命令と服従で成り立っている。そして「神の国」とは最後の審判の後の国であり、この原理は神の愛で、隣人愛で成り立っている。しかしこの2つの国は混じり合い存在している。この世での「神の国」の端緒は教会である。

もちろん神の国の民も最終的な審判が来るまでは、弱さや苦しみが付きまとうが、神の光に導かれて地上の時を巡礼してゆくのである。これは現在に至るまでのカトリックの基本的な考えである。

晩年、ゴート族によってイタリアを追い出されたヴァンダル族はアフリカに押し寄せ、430年、アウグスティヌスのヒッポを包囲した。その中で人々を励ましながら74年の地上の生涯を閉じた。その後ヒッポは侵略され、西ローマも滅ぶ。しかし彼の書いた通り、ローマの滅亡の中から教会が育ち、それが中世をつくる大きな力となっていく。アウグスティヌスの思想も中世の思想の核となってゆくのである。

下はベノッツォ・ゴッツォリ作「聖アウグスティヌスの死」