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桃森ミヨシ・鉄骨サロ先生ファンサイト 200m先の熱ネタバレ

ハツカレという物語の特徴

2021.12.02 20:40

初めての恋

初めての彼氏

初めての彼女

好きな人と付き合う中で経験する、いろんな「初めて」のエピソードがぎっしりつまった物語。

初告白、初デート、初手つなぎ、初やきもち、初キス、初ケンカ、初失恋、初遠距離恋愛…

登場人物がみんな初恋で、両思いと片思いの2組の対比もせつない。

あと、コミックの表紙を1巻から並べて見ればよく分かる特徴がある。

それは「ものすごくゆっくり進んでいく恋愛」なのだ。表紙はすべて主人公のチロを彼氏目線で見た姿の変化であり、彼氏に対する目や態度、接し方が1巻から巻が進むにつれだんだん仲良くなっているのが分かる。

1巻では緊張感さえ漂い、恥じらい遠慮気味に彼氏を見ているが、2巻で手を差し出されとまどい、それでも嬉しくて4巻では笑顔になる。5巻でキスされるかと思いきや6巻でかわされ7巻でふてくされる。

この異性に対し「ふてくされる」軽くケンカが出来るようになるまで実に7巻を費やしているのだ。

ここまで細かく繊細に恋愛の心の距離を近づけていく描写をした物語を他には見ない。

そして、彼氏の人物像というのも気持ちの近付きに連動してゆっくりと輪郭が見えてくるのだ。

他には「1話ごとのキーワード」という特徴がある。

1巻は完全に1話ごとに分離されたストーリー、つまり同じキャラクターを使った短編集のような形。2巻以降は大きなストーリーの流れで話が動いていく長編に突入するのだが、それでも1話ごとにテーマがあって、そのテーマに沿ったキーワードがあって、最後はきちんとオチがつくような形でまとまっている。1話完結というわけではなく、次にひっぱる形の時も1話ごとにまとまりが形成されているのだ。長編続きものの話になってからもそのスタイルは一環している。

ここでもう一つ、この漫画の特徴であるのが「比喩の美しさ」だ。それは1巻ではまだ発揮されていない。個性として表れてくるのは2巻の後半からである。気持ちや感情の流れを単に文章としてモノローグで表現するのでなく、気持ちの流れをどちらかというとその場面の現象や雰囲気、セリフの中のたった短いことば等で現している。セリフで説明せずとも気持ちが伝わってくるような演出方法は、読み飛ばしてしまうと気付かない事だったりもする。そういったところで、説明されていないが故に、登場人物の気持ちを読みとらなければならないマンガなのだが、かえってキャラクターの細やかな心の機微が伝わってくるように思う。