🎦『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』を観た。
12月3日から公開となった映画『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』を同日の午後、渋谷のシネクイントで観てきた。THE SMITHS解散が報じられた1987年9月、コロラド州デンバーのレコード店で働く若者が地元のラジオ局を占拠して同バンドの曲だけを流させたという都市伝説めいた話を軸としながら、彼を取り巻く若者たちの苦悩や葛藤、脆さを描いたもので、監督を務めているのは『WE ARE X』を手掛けていたスティーヴン・キジャック。全編を通じてTHE SMITHの楽曲が20曲以上も使用されていて、当時の映像素材なども挿入されていることもあり、ラジオ局ジャック事件は実のところ「部分的には事実」ということだったようなのだが、かなりリアルなものに感じられる仕上がりになっている。
主人公が占拠したラジオ局ではメタル専門番組を放送中。実際、この映画の中で最初に聴こえてきたのはオジー・オズボーンの“Bark At The Moon”だった。ただ、主人公や仲間たちはTHE SMITHの音楽や歌詞世界に共鳴していてそこに救いを求めているわけだが「他のみんなが聴いていないものを聴いている」という自尊心を支えにしているところがある。そうしたファンの意識というのは音楽のジャンルを問わずあるものだし、1987年のアメリカにおいて彼らがメタルを敵視していたというのも頷けるところではあるが、たとえば時代設定がブリティッシュ・インヴェイジョン全盛の1980年代序盤、グランジ旋風が巻き起こっていた1992年頃だったならば、メタル・ファンが同じような行動をとっていたとしてもおかしくないところではある。
キジャックは、そうした音楽ファンの心理をとてもリアルに描いている。なかでも、主人公からの襲撃を受けたフルメタル・ミッキーというメタルDJがとても素敵だ。THE SMITHをろくに知らない彼が、ジョニー・マーのギターを耳にした途端に興味を示したりするあたりには特にニヤリとさせられた。一箇所だけ、彼の吐いた台詞に時代考証の間違いを気付かされた部分もあったが、それはこの場では具体的には書かずにおこう。
そういえば僕は、キジャックから取材を受けたことがあったのだった。御存知の方もいるはずだが、僕は『WE ARE X』にほんの少しだけ登場している。実際にスクリーンに映るのは数秒間のことだが、インタビュー自体は1時間半くらいまで及んだ記憶がある。そこで話したことの多くは直接的に映画には反映されなかったものの、作品をまとめていくうえでの知識として少しは彼の役に立ったのではないかと思う。そしておそらくこの『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』の制作にあたっても、たくさんの取材を通じて証言を得ながらリアリティを追求していったのだろう。
というわけで、この映画、THE SMITHに興味がなくても楽しめるはずだし、それこそフルメタル・ミッキーのように新たな発見をすることになるかもしれない。ちなみに僕は、彼らの曲ではやっぱり“How Soon Is Now?”がいちばん好きです。ベタですみませんが。