蒸気機関車の旅
2017.06.15 02:06
結婚式を前に
雨月物語に怯えていた
正太郎のような
放蕩者だから
いつか取り殺される
愛想を尽かして
出て行くのが先か
私との30年を
『波瀾万丈で面白かったわ』
と屈託なく笑う
愛は波瀾の中にしか存在し得ない
と嘯(うそぶ)いてみる
蒸気機関車は
何処にいざなう
カメラを担いだ
かたわの老人が行く
私も行こう
トンネルの向こうへ
蜃気楼のように湖面に映る
家を目指して
ゆっくりと
スコッチを飲む
ゆっくりと
生きて行こう
ゆっくりと
終着駅まで行こう
死を望まなくなって
久しい