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uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

笑うな

2012.08.15 23:36

わシリーズ

●笑うな

 

○月△日

 

 死んでしまった友人の家にご焼香。

わたしの知らないうちに、病んでいた。黙ってやがってコノヤロウ。

 

 車が彼の家に近づくにつれ、だんだんとせつなくなった。

 だから一人でいくのはイヤなんだ。

 大勢ならば、途中まで賑やかにバカ話をしていられるじゃないか。

 

 酒の苦手な彼のためにコーラが一本。かーんと鐘を鳴らすわたしを見ているのは、さわやかに笑った写真の中の彼。

 

 ここらで泣いたら絵になるんだぜと思ったけれど、そのステキな笑顔のせいで、涙がぜんぜん出てこない。

 

 じいっと彼の写真を見つめたけれど、それでも涙は出なかった。

 いい写真だな。いつもこの笑顔に騙されてしまうんだな。

 

 でも、アンタ。幼い家族を残して死んじゃったんだよ。笑っている場合じゃないだろう。お参りにきた人をさわやかにしている場合じゃないだろう。

 

 奥さんのところにいき、挨拶をしようとすわり直し、すぅっと息を吸い

「このたびは・・・」と、しかし、それきり言葉が出なかった。

 

 かわりに涙が出た。いったん出たら、止らなくなった。

 ずっとうつむいていたら、彼の可愛がっていたネコがきた。

 上目使いでこちらを見ている。そこに彼の視線を感じた。

 だからいってやった。

 



 「笑うな」って。



 「こんなときくらい、泣かせてろ、バカヤロウ」って。

 

 

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