Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

今日はあなたへ向けて

2016.06.29 22:20

 以前、自分に向けて書いた「うつの情景・メモ」を、こんどはたいせつな「あなた」にあてて書いてみたかった。




 自己陶酔とならないように、気をつけながら。







 **************



 



 この世から消えてしまいたい。



 でも、自分では死なないつもり。かろうじて、それくらいの分別を持っているあなた。



 



 それでも、やっぱり消えてしまいたいと思ってしまうあなた。



 



 消滅したい。そっと消えてしまいたい。この世の自分の存在を、なかったことに、してしまいたい。



 



 地上の記録から、自分を消してもらいたい。家族の記憶からも消してもらいたい。自分がそこにいたことを、なかったことにしてもらいたい。情けない自分の存在を消してしまいたい。



 



 ここにボタンがひとつ、それを押したら自分が消えるボタンがひとつ、それがもしあったなら、この世にいなかったことになるのなら、みんなの記憶から消えるボタンがひとつあるなら、そんなボタンがあったら、それを押すかもしれない。それが、いまのあなた。



 



 もう、あなたには指先でボタンを押すくらいのエネルギーしか残っていないから。心の力を使い果してしまったあなただから。








 善意を受け入れる力を、いまは失っているあなた。

 心がすべてを否定してしまうから。




 



 自己肯定感を持てって言われても、持てないから苦しんでいるあなた。



 



 みんなちがって、みんないいと言われても・・・ 



 ほんとに? 



 ほんとにそう思っているの? 



 自分はそれほどちがっていないから、だから言っていられるんじゃないの? と、信じきれないあなた。

 



 



 「大丈夫か?」とか「がんばれよ!」とか、優しく声かけられて、「大丈夫です」「ありがとうございます」と、笑顔を作るあなた。



 



 でも、もうそう答えることに、疲れている。

 答えるたびに疲れていく。



 



 「本心で言ってくれているのですか?」と、心の中ではうがった見方をしてしまうあなた。





 



 「大丈夫だよ、そばにいるよ」と言われても、困ってしまう。

 

 しっかりとした信頼関係のない人から言われても、困ってしまう。



 



 



 「ありがとう」と答えながら

 でも、



 できれば、



 そばに、



 いないでもらいたい。



 



 そばにいられると、もっと疲れてしまうから・・・そう声に出してしまいたい。



 でも出せない。



 



 



 死ぬくらいならどこでもいいから逃げろって言われるんだけど・・・ 



 



 でも、

 どこへ? 





 どこへ逃げていいかわからないから苦しむあなた。



 



 



 自分のところに逃げてこいと言ってくれているのだろうか? 



 



 でも、いけない、そんなとこ。逃げていったら、きっと迷惑なんだろうし。

 



 そんな気をつかうところに、あなたは逃げてなんていけない。



 



 誰かに相談しなさいと言われても、そんなことできない。



 人に見せたくない心の部分で悩んでいるのに、それを相談するなんて、そんなことできない。



 



 情けない自分のことで落ちこんでいるのに、そんな情けないことを人に語って相談できるようなら、とっくにしている。



 



 



 元気を出させようと、元気な歌をうたってくれる人はありがたい・・・のかもしれないけれど。



 



 でも、元気な歌を聴くと、いまのあなたは疲れてしまう。



 元気な歌で、心がさらに消耗してしまう。



 



 



 とても立派な格言を聞かされても、いまはあなたの心を動かせない。

 



 くよくよするなと言われて、くよくよしないでいられたら、悩まない。



 気にするなと言われて、気にしないでいられるなら、苦しまない。



 



 「うん、わかるわかる、そうだよねー」と、あなたの言葉をしっかり聴きもせず、ただなんでもかんでも大きく肯いて肯定する声に、失望する。



 



 あなたの言葉尻を繰り返し「うんうん、そうなんだねー」と、いかにも「傾聴」の講習を受けてきましたからー・・・みたいな、心理カウンセラーの勉強してますからー・・・みたいな・・・「わたしがあなたを救ってあげましょう」という受け答えに思えて、心が消耗する。



 



 だから、その場から逃げたいから、その人の言葉に肯いている。逃げたいから、ありがとうと答えている。



 



 あっちに行ってもらいたいから、「おかげで気持ちが楽になりました」とお礼を言う。



 はやく、あっちに行ってください。

 わたしを一人にしてくださいと、震えているあなた。



 



 



 元気な人は言う。

 「それでいいよ」って言う。

 「そんなあなたが好きよ」って、言う。



 



 でも、言われたあなたの心には、そんな言葉は入ってこない。



 あなた自身があなたを好きになれないでいるのに。



 



 それを本心で言っているなんて、信じきれないあなた。



 



 



 ************



 



 でも、ほんとに・・・



 なんとかしたいのに。



 あなたは自分のダメを認めることのできるあなたになりたいのに。



 自分をイヤだと思ってしまうあなたを、ほんとは好きになりたいのに。



 



 自分を認められない自分でもいいんだ。

 イヤらしい自分でもいいんだ。



 そんなダメなダメなダメなマイナスの自分でもいいんだと、あなたはあなた自身を納得していたいのに。



 



 それができずに、苦しむあなた。



 



 



 *************



 



 お願いだから、

 信じてほしい。



 自ら命を絶たないかぎり、きっと大丈夫だということを信じてほしい。

 お願いだから、信じてほしい。



 



 いつかまた、頭の上には空があるんだなって気がついたり、窓の向こうに広い世界があるんだなって思い出したり、耳をすませば微かにでも小鳥のさえずりが聞こえてきたり、それまではモヤと耳鳴りの中にいたような世界が、すこーしずつ晴れてくるときがくるから、どうかそれを信じてくれないだろうか。



 





 ************



 



 わたしはあの日々に戻りたいとは、けっして思わない。



 でも、あの日々のことに後悔はない。



 病んだおかげで、わかったことがいっぱいある。

 病まなければ、わからなかったことがいっぱいある。





 だから、わたしはあなたに「気を大きく持て」とか「小さなことでクヨクヨするな」なんて言わないから。



 



 「あなたより苦しい人はいっぱいいるんだから」とか「それは気の持ちようだから」なんて、けっして言わないから。



 あなたのことを、他の人と比べたりなんか、けっしてしないから。



 「お医者さんは役にたたない」とか「薬なんか飲んだってムダだよ」とか、そんなことけっして言わないから。



 あなたが病んで失ってきたのは、最初からあなたにはいらなかったゴミだから。そして、あなたが得たものは、宝だから。






 あなたが心を病んだというそれだけで、わたしはあなたを信じることができる。

 




 わたしは黙ってあなたの横で、あなたの好きなコーヒーを淹れていたい。いつかあなたがその香りに気づくかもしれないと願いながら。