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uni-nin's Ownd フジタイチオのライトエッセイ

「ニヒル路線の崩壊」 忘れられてしまわれそうシリーズ

2016.11.11 21:30


 また息子が小学生のときの話を書く。



 



 当時わたしは授業参観にはよく顔を出していた。

 とくべつ教育熱心というわけではないが、妻が忙しくて仕事を休めないこともあり、そんなときは喜んで行っていた。



 



 あいかわらず学校には父親の姿が少ない。共働きの家庭も多くなったのだろうが、仕事を休んで学校にくるのは、まだまだ奥さまの役目のようだ。



 もっとも、圧倒的に女性の多い状態では、男性としても入りにくいからという理由もあるのかもしれない。





 



 少し早めに学校に着いたから、まだ授業は始まらず休み時間だった。



 



 「あー! ゆっぴー(うちの息子の愛称)のお父さんだ!」と、廊下にいるわたしを見つけて子どもたちが走ってきた。





 「ねえねえ、ゆっぴーのお父さんは、手で石を割れるんだよね? すごいねえ」と、ピンクのスカートをはいた女の子がわたしに言った。



 



 きっと息子が自慢していたのだ。



 「うちのお父さんはね、手で叩いて石を割っちゃうことができるんだよ」って。





 コツさえわかれば誰にでもできることなのだが、息子には魔法に見えるらしい。



 「こんどわたしにも見せてね」という女の子に、「ああ、いいよ」と頭をなでながら返事をした。



 その姿を、奥様方がニコヤカに見ていた。





 



 自慢じゃないが、わたしは「黙っていればニヒル」と言われる。





 ニヒルな男が子どもたちに優しく接している姿が奥様方にウケるんだよなと、勝手に思い込みほくそ笑む麗しの美中年。



 「あらヤだ、うににんさんって意外とステキ!」なーんて想像の世界に耽っていたら、別の女の子が「ねえねえ」とわたしの服をひっぱった。



 



 「ねえねえ、ゆっぴーのお父さん」





 「はい、なんだい?」



 「ゆっぴーのお父さんは、ゆっぴーとプロレスごっこするんだよね」



 「うん、ときどきね」



 



 お母さまがたは「まあ、ニヒルなうににんさんは、家では息子さんと遊んだりするのね、ステキステキ」と思っているにちがいない。



 



 「そして、ゆっぴーの顔を足で挟んで動けなくしちゃうんだよね」



 「そうだよー」



 うん、いいぞいいぞ。

 いいおとうさんやってるぞ。



 



 「そして最後に、そのまま思いっきり臭いオナラするんだよねーε=┏(^▽^)┛」







 「・・・・ w(゜o゜)w」

 



 

 それを聞いた奥様方はどっと笑い、ああ、わたしのニヒル路線はその瞬間に音をたてて崩れてしまったのだわよ。

 





 



  終わり ○| ̄|_