実話怪談~絞殺~
2年前の春夜、私は就寝中に夢を見た。
得体の知れぬ異様なナニカが、逃げる私を仕留めようと追ってくるというものだ。
ナニカの仔細は不明であったが、それが生身の人間ではないということは直感的に分かった。
運が良かったのか捕らえられる直前にパッと目が覚め、現実世界に戻ってきたのだが、それとほぼ同時に外から小石を投げられ窓ガラスにコツンと当たった。
私の住処は山間部の廃れた別荘地であるため、深夜に人が往来するような場所ではないのだが。
盗人かと懸念し起き上がろうとすると、身体が硬直して指の一本すら操作できなかったのだ。そう、金縛りである。
すると数秒後、寝室内に音もなくナニカが現れた。それは異次元から召喚されたようにスーッと私の傍らへ登場したのだ。
山間部の春の夜はまだまだ震えるような寒気が漂っており、尚且つ一人暮らしのため戸締まりは怠っていなかった。にもかかわらず、床に就く私の傍にはナニカがいる。
霊的体験は数度経験済みであった。だからナニカがこの世ならざる異形の存在だと即座に判じた。
ナニカは出現後、仰向けで横たわる私の上へ躊躇なく乗り、尋常ではない力で首を絞めてきたのだ。咄嗟に思った。「殺す気だ」と。
以前より死を切望していたが、今ではない。為すべきことがあるのだ。
呼吸が出来なくなった私は丹田に神経を集中させ、念彼観音力(観音経の一節)を必死に唱えた。すると身体の自由が戻ってきた。
今だと思い勢いよく寝返りをうつ。すると身体が軽くなり、ナニカの重みはなくなった。
寝室の電気をつける。なにもいない。窓も玄関も施錠されている。
その後、朝日が昇るまでラップ音が鳴りやまなかった。
今宵も私は静寂と闇が辺りを埋め尽くす頃、件の部屋で夢の中へと落ちていく。
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