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空家レンジャー活動レポート「教え上手な大工さん」

2017.06.20 03:00

「ごようてい」

天皇陛下が静養のために訪れる別荘がある町。

葉山にはそのイメージが強烈にある。

なぜかそこだけが時代に取り残されたような、明治天皇が休息されていたときのままのような、そんな空気が漂う葉山町。


海があって、山があって、自然豊かで静かで、別荘がたくさんあって、クルーザーが一家に一台あって?、駅なんか要らなくて……。


そんな格調高くセレブな町にはまったく似合わない? 突如現れた異色集団。

その名は「空家レンジャー」

空き家を救う集団は、現在総勢150名を超えてまだまだ増殖中である。


空家レンジャーの使命は、空き家をDIYで蘇らせること。

費用も最小限に抑え、廃材を有効利用する。

ガラクタを宝物に変えてしまう、まさに秦基博の「ひまわりの約束」のように。

(♪ガラクタだったはずの今日が、二人なら宝物になる……)


6月17日(土)、18日(日)

この週末のメイン作業は二階部分の床と壁。

二階には六畳の個室が8室ありクリエイターたちが使うためのシェア工房になる予定だ。

18日はあいにくの雨


すでに古いフローリングを剥がしてある廊下に、新たなフローリングを敷く。

材料は安価な杉板だが、レンジャーたちが丁寧にヤスリがけしてステイン塗装してあり、アンティークとモダンが融合したようないい感じだ。


個室の壁と天井は古く黄ばんでいる壁紙はがしから。

勢いよく剥がすとコマ切れになってしまうので、ゆっくり丁寧に剥いでいく。

一度に大きな面積が剥がせると、とても気持ちがいいものだ。

日焼け後の皮をむくときの喜びに似ている。


壁紙を剥がしたあとは、ペンキで塗装。

童心に帰れるようなワクワクがあり、空家レンジャーの中でも人気の作業である。

色は白、さびれた感じだった部屋が明るさを取り戻す姿を見ると、この活動の価値を改めて感じることができる。


個室の床は長年の酷使でだいぶ傾斜してしまっている。

まずは水平を取り戻すことから。


ここで登場するのが、空家レンジャーの強い味方プロの大工さん。

DIYリフォーム特別講座の開催である。

何事もそうであるが、基礎知識があるのとないのとでは仕上がりが違ってくる。

プロの知識や技術を教えてもらうことは、とても貴重な経験だ。

大工さんの教え方がいいのか、レンジャーたちの呑み込みが早いのか、レッスンの効果はテキメン。

木材を切る体制や、ネジ打ちの電動ドライバーを持つ手の形は、プロのようにかっこよく見える。

プロの姿勢、背筋がピーン

「いいですね~、すごく早いです、完璧です!」

教え上手の大工さんは、ほめ方も最高にうまい。

個室に新しい水平な床の土台が完成した。


参加したレンジャーたちは、毎回絵日報を提出する。

作業で得られた知識や、気づいたヒントを絵に描いて記録として残すのだ。

自分のためのおさらいになるし、絵は上達するし、なんといっても他のレンジャーに伝えることができる。

初心者レンジャーの教育マニュアルにもなるし、いつか自分の子供たちに伝授することもできる。

とても貴重な資産だ。


いろいろな物への価値観が大きく変化している現代社会において、スクラップアンドビルドはもうかっこ悪い。

いまあるものをいかに活用するか、そんなことができる人たちがこれからの社会を創っていくのだろう。


空家レンジャーは、その可能性を十分に秘めている。

これからますます彼らの活動から目が離せない。


(了)

空家レンジャーが誇る空間デザイナーの作品!