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噛む女

2017.06.21 06:59

ある行為について人は、愛だとか遊びだとか、いろいろ言葉をつけたがるものだが、ほんとのところは誰にも分からないのである・・・(ルイ・ベネディクト)



今から4年ほど前のことである。

ピュアかどうかは分からないが、それは確かに、ピュアという名の掲示板に掲載されていた。

「噛ませて下さい」

もちろんあれの最中であれば肩など噛まれるのは嫌いではない。

だがきっと、そういうことは望んでないのだと予感できた。

であれば問題は、その娘が僕を噛めるかどうかだ。

そういうことは聞かなきゃ分からない。

なのでメッセージを送る。

「俺で良いですか?」

すぐに返事がきて、誰でもよいという。

ならばそれ以上の詮索は無用だろう。

噛みたい女がいて、噛まれてもいいと思う男がいる。

当日夜、仕事終わりに新宿に向かった。

21時。賑わう居酒屋の隅のテーブル座り、僕は左手を目の前に座る名も知らぬ若い女の前に差し出す。

彼女は両手で僕の腕をとり、口の高さまで持ち上げる。

一度だけ僕を見るとすぐに視線を落とし「ほんとにいいの?」と不安そうにたずねてくる。

「遠慮はいらない」

僕は彼女を見つめて笑ってこたえる。

僕の甲はゆっくり彼女の口に運ばれ、次の瞬間、僕は激痛に襲われる。

ほんとに遠慮のない噛み方で、甲の肉に歯を食い込ませている。

ごりごりと咀嚼する音をききながら、1分か2分か、そうして僕は痛みとともに彼女の行為を見つめていた。

ようやく彼女が口を離すと、親指と人差し指の付け根辺りの肉がめくれていた。

彼女は不満そうに「ちぎれないんだね」なんていう。

それで僕も妙に納得して「ちぎれないんだね」と繰り返した。

それから「血を飲みたい」という彼女の要求で、カッターで親指に線をつけると、赤い玉がどんどんでてきた。

彼女はそれをしばらくの間口に含んで舐めていた。

やがて血は止まって、彼女はありがとうと帰っていった。

僕はしばらく席に座り考えていたが、やがてそれが徒労に終わることを知って席をたった。

傷は今でも私の左手に残り続けている。