「性格整形外科」w/ ねじ
彼女の実家に初めて遊びに行ったときだった。
緊張しながらお父さんと話すうちに、お父さんの趣味を知って引いてしまった。
なぜなら、お父さんがぼくの大嫌いなサウナ好きの人だったからだ。
それでもお父さんとお近づきになりたいと思い、家に帰って頭を悩ませた。
と、ぼくはアッとひらめいた。
友達にサウナ好きのやつがいたことを思いだしたのだ。
さっそく電話をかけて、彼に事情を伝えて尋ねてみた。
「どうやったらサウナ好きになれるかな…?」
すると彼はこんなことを口にした。
「えっ、そんなの整形すりゃいいじゃんか」
戸惑うぼくに彼はつづける。
「知らないの?
いまの時代、性格なんて好きに整形できるんだよ。
性格整形外科っていうんだけどね、そこに行けば、おまえの望むサウナ好きの性格が簡単に手に入るよ。
ちなみに、おれもそこで整形してもらってさ。
ほら、おれ前は固いあずきバーが好きだったじゃん?
でも、いまじゃカスタードしか受け付けない。
それも整形の効果なんだよ」
聞きたいことは山ほどあったが、その話を耳にして、ぼくは居ても立ってもいられなくなった。
そして、目白にあるその店にさっそく足を運んでみた。
友達から聞いていた通り、店は出口と入口が別になっている構造で、初めて訪れても安心して入れるようになっていた。
先生も優しそうな初老の男性で緊張することもなく、保険こそきかなかったけれど、ローンを組んで、ぼくは無事にサウナ好きの性格を手に入れることができたのだった。
それから数週間してのこと。
ぼくは「別に無理しなくていいんだよ」という彼女の気遣いを押し切って、再び彼女の実家を訪れた。
お父さんが出てきたところを見計らって、ぼくはすぐさま切りだした。
自分がサウナにかける思い。
サウナのどこが好きなのか。
しかし、ひとしきりしゃべり終わったあと、ぼくはなんだか様子がおかしいことに気がついた。
隣を見ると彼女は顔を青くしていて、その視線の先には眉根を寄せたお父さんの姿があったのだ。 「どうかしましたか……?」
おそるおそる尋ねると、彼女がそっと耳元でささやいた。
「お父さん最近、性格整形外科に行ってきたみたいなの…!」
そのとき、お父さんは声を荒げて口にした。
「サウナなんて入るもんじゃない!!」
ライブの様子はこちらから↓