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風光る

2023.12.25 02:00

雲二つ宇都宮こそ風光れ  高資

ゆく雲を追う雲もまた風光る  高資

風光る石にほどける屈みかな 五島高資

三四郎池や垂水に風光る 五島高資

麗らかに曲がるスプーンの麒麟かな  高資

目つむりていても額に風光る  高資


http://sogyusha.org/saijiki/01_spring/kazehikaru.html  【風光る(かぜひかる)】


冬の弱々しい日光が春になると力を増し、ものみな輝いて見えるようになる。そこに吹く風はまだいくぶん冷たさを残してはいるものの柔らかな感じで、草木の芽吹きを促し、きらきらと輝かしい。草木ばかりではない、人も物もすべてがまばゆい。

そのような春の日に吹く風の様子を、俳人は「風光る」という季語に言い止めた。

春に吹く風を表す季語としては「春風」と「東風(こち)」が代表的である。春風は「春風駘蕩」の言葉もあるように、あくまでもおだやかでうららかな気分を表す季語であり、東風は春の到来を告げる風という側面が強調される季語である。これに対して「風光る」は、万物生動する季節に吹く風の特質を示す言葉と言えば良いだろうか。この意味では、夏の季語である「南風」に対する「風薫る」という組合せと似ている。

立春を過ぎて二月後半から三月になると、西高東低の冬型の気圧配置が弱まり、台湾近海や東シナ海にできた低気圧が日本列島を北上し、これに向かって東風、南風が吹き込むようになる。うらうらとした春風の場合もあるし、時には「春一番」という強風を見舞うこともある。

低気圧が通り過ぎて移動性高気圧におおわれると、それこそ春眠暁を覚えずの麗かな日和となる。またこの南風は湿った空気を運んで来るから、しとしとと春雨を降らせることにもなる。

こうして寒い日、暖かい日を交互にしながら、本格的な春になる。この間を吹く風は、それまで縮こまっていた動物、植物、そして人間に生気を吹き込む。まさに「輝く風」である。

 「風光る」が季語として立てられたのは江戸時代も末になってからのことで、実際にたくさん詠まれるようになったのは明治以降である。風が「光る」という、ことばの響きが新鮮な感じであり、近ごろとみに人気が高まっている季語でもある。

「光る風」「光風」「風かがやく」「風眩し」などとも詠まれる。

  風光る杉山かひに村一つ   芥川龍之介

  風光る入江のぽんぽん蒸気かな   内田百間

  風光る閃めきのふと鋭どけれ   池内友次郎

  生れて十日生命が赤し風がまぶし   中村草田男

  野の鳩の塔掠めしよ風光る   五十崎朗

  海女潜る間も一湾の風ひかる   針呆介

  風光るエアロビクスの大鏡   宮脇良子

  一点を揺れるヨットや風光る   鈴木智子

  なつかしきくねくね道や風光る   市野沢弘子

  風光るやや大きめの園服に   賀谷祐一


https://tenki.jp/suppl/m_yoshino/2019/03/10/28912.html

【「知って得する季語」──「風」はなぜ「光る」のか?】

「春風」と「風光る」の違いとは?

まず、春の風とはどのようなイメージでしょうか? 言葉から想像すると、暖かくて、やさしくて、ほんわかする、そんな感じですね。四字熟語の「春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)」は、春の風が穏やかに吹く様子から転じ、性格や態度が温和な人を指す言葉ですが、やはり春の風は“気温の暖かさ”がキーワードかもしれません。

一方、「風光る」の暖かさは「春風」よりも少ないイメージはありませんか? 「光る」という動詞には、『光を反射し輝く』という意味があります。つまり、風は自ら光るのではなく、太陽の光に輝いて見える、ということなのです。

では、どんなときに「風は光る」のでしょうか?

そもそも「風光る」という季語は、江戸時代から使われ始め、明治時代に盛んになったそうで、現代でも好んで使われています。いつ使われるのかは限定できませんが、立春を過ぎた2月後半頃~3月頃になると寒気が弱まり、南からの風「東風(こち)」や「春一番」が吹くようになります。南風は同時に湿った空気を含んでいるので、今頃のような「春の雨」を降らせながら、また晴れた日には「うららかな」日和と、寒暖を繰り返しながら本格的な春になっていくのです。日差しは徐々に強くなっていき、鋭かった風もやや弱まり、風も光ってみえるようだ、という感覚的な季語の一つなのです。

「名詞」+「動詞」のユニークな春の季語

「風光る」は春を感覚的にとらえた季語でしたが、春の季語には、ほかにもユニークな季語がたくさんあります。なかでも「名詞」+「動詞」の代表的な季語をご紹介しましょう。

まだありそうな「冴返る(さえかえる)」

いったん暖かくなってから、また寒さが戻ることをいいます。「冴」は、冬の季語「冴ゆ」で、透き通るような寒さ。それが返ってきたような春の寒さのことで、暖かさに慣れた身にはこたえそう。人は甘い環境にすぐになびいてしまいますからね、ご注意を!

いくらなんでも「山笑ふ(やまわらう)」

「風光る」同様、山が笑う訳ないとお思いでしょう。が、山は笑うんです(笑)。春になると山の木々が芽吹き、花が咲き、明るく生気に満ちてきます。その山の様子を擬人化したのが「山笑ふ」。ユーモアがあり洒落た感じがありますよね。

『臥遊録』の「春山淡冶にして笑うが如く、夏山蒼翠にして滴るが如く、秋山明浄にして粧うが如く、冬山惨淡として眠るが如く」が語源で、夏は「山滴る」、秋は「山粧ふ」、冬は「山眠る」として使われています。

まさかの語源!? 「下萌え(したもえ)」

季語では「下萌」と書いて(したもえ)と読みますが、類語に「草萌(くさもえ)」や「草青む」などもあります。早春の冬枯れした大地からわずかに草の芽が萌えだすと、庭も野原も春の訪れを感じます。草萌より、大地の息吹に焦点をあてた季語ですが、どこかで聞いたことがありませんか? そう、アニメの『萌え~~!!』は、これが語源なんだとか!?

(参照:俳句歳時記(春~新年) 角川学芸出版 角川文庫/入門歳時記 大野林火・著 角川学芸出版/広辞苑/水牛歳時記)


小さな「春」を見つけよう!

いかがでしたか?一見しただけでは分からない言葉も、まさかの意味がありましたね。──言葉や漢字の成り立ちを知ることは、日常生活に膨らみを持たせてくれるはず。

目に見えない風や、四季の折々に言葉を持たせているのが歳時記です。ただ単にカレンダー通りの生活を送るのではなく、日々の生活に合間に少し意識するだけで季節の移ろいを感じることができそうですね。まずは足元にある小さな植物から見つけてみませんか?

ぬばたまの大黒天や虎毛犬  高資

甲斐犬のまなこつぶらや風光る  高資

闇を出て風やわらかきさざえ堂  高資

巡り来てなお風光るさざえ堂  高資

風光るみもろやベツレヘムの星 五島高資ー 場所: 二荒山神社

時じくの桃カステラや涅槃西風  高資

ふふみたる桃カステラや風光る  高資