信頼を勝ち取るためのレスキューメニュー
皆様のサロンにも、ネイルが折れてしまった際などのレスキューメニューがあるのではと思います。
それは、何を目的としたメニューでしょうか?
と、質問しておきながら、別の話をさせてください(勝手)。
少し前に、パソコンを故障させました。
飲んでいたコーヒーをキーボードの上に思い切りこぼしてしまったのです。しばらく一人で考えたり分解してみたりと、試行錯誤の末にネットでデータのバックアップをしてくれる会社をネットで探し、電話をしてみました。
コーヒーをこぼしてうごかなくなった旨を伝えると、オペレーターの方にまずこう聞かれました。
「こぼされた後、電源を入れましたか?」
「はい」
「パソコンを乾燥させましたか?」
「はい」
「その二つは、絶対にやってはいけないことです。」
マジですか?? と、激しく動揺する私…Σ( ̄ロ ̄lll)
「その2つを実行すると、ショートを起こしてデータがダメになる可能性が高くなります。対応が早ければ早いほどデータが復旧できる可能性が高いため、なるべく早く診断されることをおすすめします。診断だけなら無料ですので、本日お持ちいただくか、すぐに集荷にうかがうこともできます。まず状態を見てお見積りをしますので、復旧を依頼されるかどうかはそれからご判断いただければ結構です。」
「目安としてはいくらくらいになりますでしょうか?」
「パソコンの状況によりますが、5万から50万ほどになります。
よろしければさっそく集荷の手配を致します」
…いや、5万と50万、違いすぎるでしょ…!!
とは思ったのですが、もはや他に手立てはないだろうと観念した私、
「ではお願いします」
と集荷を依頼したのでした。
ここで、夫登場!
「ちょっと待て!5万でも高いだろ! まずは自力で分解してハードディスクを取り出してみてからだ!それから頼んでも遅くない!」
と冷静な意見。
まあそうかな…と思い直し、いったんキャンセル。
その後、PC専門店でアダプターを購入し、再度分解に挑戦。何度かチャレンジしたところ今度はうまくいき、無事データを引き出すことができました。(トップの写真はその時のものです)
手間はかかりましたが、かかったお値段
2,916円。
5万~50万と言われたのに…。夫よ、ありがとう。
さて、落ち着いて考えると、長年PCを使っている私でもデータ復旧が必要になったのははじめてのこと。つまり、このデータ復旧のサービスは、リピートを取ることを前提としていません。
リピートを取る必要がなければ
「相手のパソコンをゲットしてしまえばこちらのもの」
「問い合わせをいかに商談に持ち込むかがすべて」
「なるべく高い値段で受注できるようしむける」
といったやり方もできなくはないでしょう。
しかし、同じ「ピンチの時」のメニューでも、爪が折れてしまった、かけてしまった時の「レスキューネイル」は、それ自体が大きな売上となるわけではありません。
あくまでお困りの方のお役に立つためのサービス的なメニューという位置づけです。
既存客に対しては、「こんなこともできるのね!」「さすがプロ!」と言わせる、信頼を上乗せすることができるメニュー。
新規客は、私がデータ復旧屋さんを検索したように、困ったときに自らレスキューしてくれるサロンを探す可能性があります。つまり、「レスキューメニュー」によって、お店を知っていただきご来店いただくきっかけとなる可能性があります。
「そんなこと、ネイリストならみんなできる」とネイリストさんは思うかもしれませんが、一般の方はまだまだ知らない方もたくさんいらっしゃいます。
私のあるクライアントさんは、1本だけレスキューできるとは知らず、サロンで勧められるままに10本ジェルを付けていました。ネイル禁止の業界の方なので、周囲に気を使いながらこそこそと…という状態で、私から1本だけでもできるということを聞いて憤慨されていました。
当然、そのサロンにリピートはしませんよね。
目先の売上を優先することで、将来の売上をなくしてしまっては本末転倒です。
レスキューメニューは、ある意味、「お金をいただきながらサロンの技術を宣伝できる」メニュー。
売上は小さくても、最大限親切に対応し、感じよく振る舞い「いいサロンだな」「素敵なネイリストさんだな」と思っていただけるかどうかが勝負であることを忘れないでください。
お客様のピンチをサロンの信頼づくりのチャンスに繋げましょう!!
<おまけ>
データ復旧屋さんのトークについて。今思えば、よくも悪くもかなり練られたトークなので、参考までにまとめておきます。
1)誰でもやりそうなことを言って危機感をあおる
水分をかけてしまったパソコンを「乾かす」「電源を入れる」のは誰でもやりそうなこと。その2点を「決してやってはいけません」と指摘されれば、ほとんどの人が動揺するでしょう。動揺すると、冷静な判断力も失います。あまり疑うのもよくありませんが、あのトークは、動揺させて早くパソコンを持ち込ませる作戦だったのでは…と思えてなりません。
2)見積もりの幅を大きく伝える
さらに、「5万から50万」という情報を与えられた上で、見積もりが「10万です」と言われたら、「50万と比べれば安い」と思ってしまった可能性大。このトークも、間違いなく上限を必要以上に高く伝えていると思います。
なかなかよくできたトークだなあ…と感心しつつも、わたしが今、その会社のことをどう思っているかというと…
「顧客のピンチにつけこむ悪徳業者」です(笑)
皆様も、お気をつけくださいね! (望月啓子)