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海外旅行にただひとつ必要なもの。

2017.06.30 11:36

海外へ行くことを嫌がる若者が多いといわれて久しい。その、まず第一の理由は外国語、特に英語コンプレックスと恐怖感が挙げられるだろう。言葉が通じないことへの不安、そして『世界一治安の良い国』と呼ばれる日本に比べると先進国であっても日々物騒なニュースが流されるだけに、恐怖感を持つのも当たり前だと思う。実際、日本はなにより『宗教』と『人種・民族』『銃』という問題が他の大陸諸国に比べると目立たないため表面的には非常に穏やかなイメージがある。

しかし、実際には海外だって行ってみると意外なほど怖くないものなのだ。特に、誰もが海外へ行きたくない理由に挙げる『言語力』は、少なくとも旅行で行くぶんには個人旅行であってもほとんど問題ないと言い切れる。

逆にツアーで行く方が下手にツアコンに任せっきりになってしまうぶん、警戒心が薄れたり突然の会話が出来なかったりとトラブルになる可能性は高くなるとわたしは思う。

なぜなら、個人旅行の場合、日本の空港を一度出たらあとはほとんど強制的に英語を使わねばならなくなる。なんとしてでも英語を聞き取り、最低限の回答が出来なければ観光はおろかホテルや最終目的の国へ行くことさえ出来なくなるからである。それが出来ないから海外に行かないんだ、とかツアーを使うんだ、と言うけれど、わたしは自分の経験上ひとつ言い切れることがある。

中学英語を侮るなかれ。

まぁ中学時代3年間、一切英語を聞かず勉強せずにやってきた人は別にして、それなりに真面目にやって高校入学まで進学したレベルであれば、十分中学3年生レベルの英語でも海外旅行は楽しめる。特に英語圏ではない、東南アジアやヨーロッパ、中南米などでは向こうの人だって英語は母国語でないのだから、ホテルで働いている人も妙に訛っていたりするし、中にはほとんど英語を理解しない人だっている。

実はハードルが高そうに見えて高くないのがヨーロッパ。日本人よりはアルファベット文化なので英語に馴染みのある人々も多いが、スペイン、フランス、イタリア、ポルトガルあたりはラテン語圏だからそれらの国々では英語よりラテン語系の言語のほうが通じやすかったりする。実際、スペイン語とイタリア語では6〜7割の会話が成立すると言われており、現地でもスペイン語を話す人々がイタリア人と普通に母国語同士で意思疎通している瞬間を何度も目にしてきた。フランスでも英語よりイタリア語やスペイン語のほうが受け入れられると言うし、ゲルマン言語のドイツでも英語以外にイタリア語やフランス語、スペイン語が通じているのを目の当たりにしてきた。これらの国は地続きで隣り合っており、旅行やビジネス、留学などで行き来が盛んなので馴染みがあるのだろう。

日本人にとって言語のハードルが高く感じるのは、日本が海に隔てられて隣り合う国がひとつもないことに起因していると考えられる。中国語とは文字でやり取りをするとなんとなく意味が掴める内容も多いが、言葉でやり取りをするとまったく理解出来なくなる。

これは、そもそも中国から発祥した言語が「話す言語」ではなく「読み書きする言語」で、ラテン語は「話す言語」というところに大きな違いがあるのだ。また、英語コンプレックスを植え付けられた日本人は、必要以上に英語の発音にこだわり、自信のない人はあまり話さなくなってしまう。一方のラテン語圏の人々は自信たっぷりに自国語訛りの英語を話すから、日本人は余計に気圧されてなんとなく自分より相手の方が英語に通じていると思い込み、余計に受け答えができなくなってしまう。実のところ、相手も訛りが酷いと分かれば、こちらも酷い訛りでなんとかかんとか意思疎通が出来るのに、言語力にこだわって海外へ行かないのはもったいないと言わざるを得ない。

では、海外旅行に必要なものはいったい何なのか。それは唯一、『時間』である。日本では社会人になると、なかなかまとまった休みが取れなくなる。休みが取れるときはGWやお盆、正月など『一斉休暇』ばかりだ。 

日本人はよく働くと言われるが、実は一斉休暇の数は先進国の中でも多い方なのである。ただ、全員が同じ日に休むためどこも混雑したり旅費が高くなったりして、休んだ気になれないのも事実だと思う。一方、欧米諸国は『個別休暇』で業務を行いながらそれぞれがバラバラに夏休みを取得している。これはサービス業も同じで、イタリア人の友人はホテル勤務だが夏休みには2週間以上の休暇を取っていた。日本では公務員や一般のサラリーマンなどが一斉休暇を取るときがサービス業の掻き入れどきとばかり、長期休暇の取りづらい業界だが、欧米諸国、特にヨーロッパではこのあたりの制度が根本的に異なってくる。

結局、日本のような休暇の取り方をしていると、ビジネスマンは休んだ気がしないのにビジネスには滞りが発生するという、なんとも効率の悪い状況に陥ってしまうのである。

グローバル化も進んだ現代、ほかの先進国と対等にビジネスを行うためにはいい加減、一斉休暇の弊害に気付いて交互に休みを取得するようなムードに企業全体が持っていかなければならない時期が来ていると思うのだが、なぜか政府は一斉休暇をさらに増やそうとしているあたり、呆れてものも言えない。


話が少しズレてしまったが、要するに今の日本の世の中では社会人になってからゆったりとヨーロッパ旅行を楽しむような長期休暇を取りづらいために、余計に海外旅行が縁遠くなってしまう。ならば学生時代に行けば良いのだが、学生時代にはお金がなくて行けない、言葉の問題があって行けない、などとほかの理由で結局は海外に行かない。学生時代ならバックパッカーにもなれるし、一度はバックパックで世界中を見て回るくらいの気概がなければこれからの社会で活躍できるタフな人材はなかなか生まれないと思うのだが如何なものか。

海外で出会う日本の若者はみんな、とてもタフだ。さらに、海外でよく見かける中国や韓国の若者も、日本の若者に比べると度胸も根性も座っているといえる。海外ばかりが良いわけではないけれど、日本の良さを知るためにも、時間がたっぷりと使える学生時代に一度はツアーやリゾートではない、海外旅行や留学を経験してみるべきだ。