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とある冒険者の手記

A.小さな祝賀会

2021.11.27 04:21

白き一族の集落跡。

開けたその場所に、足の低い簡易テーブルが置かれ、料理が並び始めていた。

その場で作ったものではなく、持ち込まれたもの。

それを準備しているのは、アリス、ヘリオ、ヴァル、ガウラの4人だった。


「なんであたいがアリスの企画の為に料理を……」

「アリス達も作ってきたんだから良いじゃないか」

「はぁ…」

「祝いの席なんだから、そんな顔するな」


ガウラに言われて、納得いかないと言う顔をするヴァル。

そんな2人とは裏腹に、テンション高めのアリスは鼻歌を歌っている。


「それにしても、小さいとはいえ、立派な家だな」

「でしょ!俺の力作です!」


ガウラに感心され、自信満々で答えるアリス。

あまり褒められる事が少ないせいか、かなり嬉しそうだ。


「漆喰を使ったのか」

「はい!木造だと、やっぱり、すきま風とかあるだろうから、こっちの方がいいかなって」

「なるほどねぇ」


クラフターもしているガウラは、ついつい職人目線でアリスの建てた家を見る。

そして、アリスと木工の話で盛り上がり始める。

それを面白くなさそうに見つめるヴァル。


「不機嫌だな」


ヘリオの言葉に、ヴァルは目線を合わさずに答えた。


「不機嫌にもなるさ。そういうお前こそ、面倒くさそうにしてるじゃないか。お前は関係者だが、あたいは部外者だ」

「ならなんで来た?」

「ガウラに来いって言われたからだ。ガウラの面子を汚す訳には行かないだろ」


溜め息を吐いて、ヘリオに視線を向けた。


「お前は自分のパートナーが他の誰かと仲良くしてて、気分悪くならないのか?」

「別に…」

「別にって…」


理解できないと言うように首を横に振るヴァル。


「アリスの対人関係に口を出すつもりは無い」

「そーかい、聞いたあたいが馬鹿だったよ」

「?」


ヴァルの呆れた様子に、理解が出来ずに首を傾げるヘリオ。

いつまでも話が終わらないアリスとガウラ。

流石に止めないとと判断したヘリオが2人に声をかけた。


「おい、姉さん!アリス!いい加減始めるぞ!」

「あいよ!」

「分かった!」


戻ってくる2人。 


「母さんも始めるぞ」


ヘリオの声に、遺品の保管庫から出てくるジシャ。


「すまないね。片付けに手間取ってしまった」

「義母さん、そういうのは言ってくださいよ。手伝いますから」

「1人でも出来るようになっておかないとだろ?お前達は冒険者で、毎回来れるわけじゃないんだから」


ジシャの言葉に、少しシュンとするアリス。


「気持ちだけ、受け取っとくよ」


苦笑しながらジシャはそう言った。

そして、適当な岩を椅子替わりに全員が座った。

飲み物の入った木製のコップを全員が持つと、アリスが音頭を取った。


「えー、改めて今日はお忙しいところお集まり頂きありがとうございます!」

「なにもそんなに畏まった言い方しなくても良いんじゃないのか?」

「親しき仲にも礼儀ありって言うだろ?こういうのはちゃんとしないと!」

「…そういうもんか?」

「そういうもんなの!」


ヘリオの横槍に、アリスは咳払いをして続けようとした。


「ゴホンっ!えーっと、なんだっけな…。もー!ヘリオが横槍入れるから、何言おうとしたか忘れたじゃんか!」

「知らん」


その2人のやり取りに、ガウラとジシャはクスクスと笑う。


「とにかく、えっと…、義母さんの家が無事に完成したのを祝して、乾杯!」

「「「「乾杯!」」」」


全員が飲み物を飲む。


「結局、締まらない音頭だったな」

「俺のせいじゃないです!」


苦笑しながら言ったガウラの言葉に、頬を膨らましながらアリスはヘリオを見る。

知らん顔をして料理に手をつけるヘリオ。


「それ、美味いだろ?」

「ん?あぁ」


嬉しそうに声をかけるガウラに、ヘリオは素直に返事をした。


「ヴァルが作ったんだ!最近、食事関係はほとんどヴァルが作ってくれているんだけどね、これがまた美味いんだ!」

「ほう…」

「へぇー…」


ヴァルがガウラ宅に頻繁に出入りしてるのは知っていたが、世話を焼いている事は知らなかったヘリオとアリスは、少し驚いた様な顔をする。


「この前、リリンが家に来た時なんか、クッキーとアップルパイを…」

「ガウラ、喋り過ぎだ…」

「なんだい?事実を話してるだけじゃないか」

「いや…だから…」


何とも複雑な表情で口をモゴモゴしているヴァル。

そんなヴァルの反応に、更にアリスとヘリオは唖然としている。


「あ、あたいの話しはしなくていいっ!」

「良いじゃないか、別に。ヘアセットなんかもヴァルがやってくれてるおかげで、色々助かってるんだ」

「だ·か·らっ!」


ガウラはヴァルの反応を気にもとめず、嬉々として日頃のヴァルの話をする。

自分のイメージが崩れていく様で、どんどん恥ずかしくなったヴァルは、最終的に顔を真っ赤にさせ、両手で顔を覆い、俯いてしまった。


「ガウラ…もう…勘弁してくれ…」


消え入りそうな声で発される言葉。

ヴァルの意外な一面に、驚きで言葉も出ないアリスとヘリオ。


「ガウラ、その辺にしといてやりな。ヴァルが可哀想だよ」

「そうかい?私はヴァルの凄さを知って貰いたかっただけなんだけど」

「~~っ」


ジシャの言葉にキョトンとして返すガウラ。

耳を垂らし、蹲るようになるヴァル。


「嫌だったかい?」

「…嫌とか、そういう以前に…あたいにも、イメージってもんがあるだろ…」

「それはお互い様じゃないかい?フロンティアドレスの件、忘れたとは言わさないよ」

「……」

「フロンティアドレス…あ!」


2人の会話に出てきたドレスの名前に、アリスは何かを思い出した。


「ひょっとして、リリンちゃんと服を買いに来た時に、裁縫師の店でフロンティアドレスに釘付けになってた女性って、やっぱり義姉さんだったんですか?」

「な、なんでその話をアリスが知ってるんだ?」


意表を突かれ、驚くガウラ。


「お店の裁縫師さんが、ドレスに釘付けになったリリンちゃんを見て、話してくれたんです。その特徴が義姉さんに似てたから、まさかとは思ったんですけど」

「……」


今度はガウラの顔が赤くなる番だった。


「……ヴァル、ごめん。お前の気持ちが今分かった…」


顔を真っ赤にして俯く女性陣2人。


「おやおや、リンゴが2つになったね」


笑いながらジシャが言う。


その後は、なんだかんだと賑やかな食事が続いた。


それは一時の平穏であった。