銀の小粒。
Carl Zeiss C Biogon T* 35mm F2.8 ZM
経験を積んだ後だからこそ、選べる選択肢ってありますよね。このC Biogon 35mm F2.8 ZMも、そんな選択肢のひとつだと思います。
憧れのMモノクロームを手にした当初は、レンズもライカ純正とか明るさとかがまず気になって仕方ありませんでした。しかしそれから数年がたち、気になったレンズを手が届く範囲で一巡すると色々と気が付きます。自分に大口径は必ずしも必要ではないとか、純正以外にも良いレンズはたくさんあるとか。自ずと、レンズ選びも広く自由になってきます。
レンズもずいぶん増えましたが手持ちの35mmはクラシックな描写のものばかりで、気軽に使える現代的な35mmがほしいと思っていました。色々と検討した中で、選んだのはこのC Biogon 35mm F2.8 ZMです。
このC Biogon、少し不思議な存在です。Contax時代の名玉のリバイバルとのことですが、F2.8で最短70cmという平凡なスペックの割に安くもありません。ライカやフォクトレンダーの35mmレンズは、ブランド力や価格・スペックなどでこのレンズより優位に見えます。それらと比較して、このC Biogonをあえて選ぶ人はあまりいないのではないでしょうか。自分自身、あえてこのレンズを買う人がいるのかと怪訝に思っていました。
しかし調べてみると、数少ないユーザーからの評価はとても高いように感じました。特に興味を惹かれたのはこちらの記事です。
"most enigmatic lens" (最も謎めいたレンズ)
"technically perfect lens with very little chromatic aberrations, low distortion and no flaring. Faster and more expensive lenses can’t touch the C-Biogon " (技術的に完璧で収差・歪み・フレアは極小、より高価な明るいレンズたちはC-Biogonに触れることさえ出来ない)
"Hattori Hanzo of 35mm lenses" (これは35mmレンズの服部半蔵である)
読んでいるだけでワクワクしてくる評価です。猛烈に試してみたくなりました。
そしてこのレンズ、デザインが本当に良いのです。上品な銀色をした小ぶりな鏡胴は涼やかな青文字が刻印された清楚なたたずまいで、ZMレンズの中でもひときわ美しいこの姿に以前から惹かれていました。(ちなみにブラックモデルもあります)
しかもこのレンズを改めて探してみるとほぼ在庫が無く、中古も見かけません。やはり不人気なのでしょう。姉妹製品であるC Biogon 21mm F4.5 ZMは早々にディスコンになっており、この35mm F2.8もディスコンが近いのかもしれない。そう思い、唯一見つけた在庫を買ってしまいました。
届いた週末、早速このC Biogon 35mm F2.8 ZMとともに散策にでかけました。レンズでこんなにワクワクするのは久しぶりです。
小さく美しく、そして逆光にもタフで極めてシャープなC Biogonでの撮影は快適そのもの。一見すると地味で誰が選ぶのかと思っていたC Biogonは、隙の無いレンズでした。
意欲的に新製品を発表しているフォクトレンダーに対し、最近のカールツァイス ZMレンズは目立たないように見えます。しかしライカとは異なる独自の魅力を持つ存在として、頑張ってほしいものです。