中世の始まり1-「祈り働く」聖ベネディクト革命
2017.07.06 01:05
ユスティニアヌス大帝没後の590年、グレゴリオ聖歌で名を残す大教皇グレゴリウス1世がローマ司教位についた。彼はローマ市官職の経験もあり、法律学を修め、キケロに親しみ、歴史学、自然学も学んだインテリである。病身であったがそれをおして仕事をこなした。
グレゴリウスは、東ローマの支配下にあったローマで皇帝に対して、両剣論で、皇帝権の支配をけん制し、イタリアを略奪していたランゴバルト族に対してレオ1世のように、無手で交渉して講和を勝ち取った。教皇は多くの著作を残したが、その中で「聖ベネディクト伝」が大きな影響を与えた。
ベネディクトゥスは、イタリア半島中部の岩山にモンテ・カッシーノ修道院を開いた。そこで行ったのが「ベネディクトの戒律」といわれる生活である。「祈り働く」というスローガンで表される規則正しく、過度に厳しすぎない生活は、修道院のモデルとなった。
ローマ時代、「働く」のは奴隷の仕事であった。ベネディクトによって働くことが聖なる仕事になったことは大きな価値転換だった。修道院は、その後修道士と農民の手で開墾を行い、中世の経済改革の中心となっていく。またアイルランドから来たコロンバヌスによって告解が行われ、修道士だけでなく信者の生活の中心となった。
下は聖ベネディクトの開いたモンテ・カシーノ修道院