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「宇田川源流」 メルケルから16年ぶりに変わったドイツの新政権を率いるショルツ新首相

2021.12.13 22:00

「宇田川源流」 メルケルから16年ぶりに変わったドイツの新政権を率いるショルツ新首相


 ドイツにおいて選挙の結果から社会民主党(SPD)、自由民主党(FDP)、緑の党の3党が連立のショルツ政権が発足した。社会民主党が206議席、緑の党が118議席、自由民主党が92議席、ドイツ連邦議会(議席数735)の過半数を占めることになった。

 新首相となったオラフ・ショルツ氏は、ハンブルクの出身である。メルケル前首相は、旧東ドイツ出身であり、旧東欧的な社会主義教育を受けてきた首相であったのに対して、ショルツ氏は旧西ドイツの人物である。この意味ですでに様々なことが異なるということになる。そのショルツ氏の出身であるハンブルクは、母体である社会民主党(SPD)の本部も存在する場所である。もともとメルケル内閣の副首相や財務大臣を歴任している呂いうことから考えれば、メルケル首相の路線をそれほど大きく変えることはないと考えられるが、しかし、逆にメルケル首相の率いたキリスト教民主同盟(CDU)が惨敗しているということになれば、メルケル首相的な政治がドイツ国民から受け入れられなくなったということになり、そのことから、なんらかの政策の変化があるということになろう。

 では、ショルツ政権になって何が変わるのか。そのことを注視しなければならない。

 その意味で、ドイツ社会民主党は、もともとは日本の日本社会党との関係が深い。そのことから考えてもわかるように、西ドイツにありながらも左派的な考え方をしており、ショルツ首相自身も左派的な考え方をしている。ショルツ首相になってドイツがEUを離脱したりドイツ一国主義になるということは考えられない。

 ショルツ氏は首相就任を翌日に控えた7日の記者会見で、「世界には米中ロだけでなく、多くの強力な国がある」と語ったうえで、日本や韓国、インドなどの国名を挙げ、そのうえで、「対中政策で米国と協調し、(中国への)戦略的依存を減らすため、志を同じくする国々とも協力する」と連立の協定で文言が盛り込まれたことを明らかにしている。つまり、アジアということでメルケルのようにロシアや中国一辺倒の外交を行うのではなく、アメリカの民主主義サミットなどから、対中国依存を減らすということをしていることは見えてくるのである。

 さて、このブログではドイツの内政に関してはあまり興味がないということになるのであるが、一方で、ドイツの外交やそれに伴ってEUがどのように変わってゆくのかということに関しては非常に興味がある。

 

【解説】 ショルツ氏の「信号連立」政権、新しいドイツを約束

 ドイツ国民は、今年のクリスマスには新政権が誕生すると約束されていた。そしてベルリンの政治街のモミの木にもクリスマスの明かりがともりだした今、まさに新政権が生まれようとしている。

 社会民主党(SPD)、自由民主党(FDP)、緑の党の3党が連立に合意した。8日にはこの毛色の違う3党が就任式に臨み、アンゲラ・メルケル氏の時代から、社会民主党のオラフ・ショルツ氏による新しい時代へと正式に移行する。

 今回の連立は、公平な社会を目指すSPDの赤、経済界を後ろ盾にするFDPの黄色、そして環境政策を掲げる緑の党の緑と、各党のイメージカラーをとって「信号連立」と呼ばれている。

 新型コロナウイルスの第4波が猛威をふるい、人々の生活が厳しく制限されている中、新政権は素早い立ち上がりを見せなければならない。

    気候変動に注力

 つまり、ドイツは政治的に大きく変わるが、ショルツ政権が独自路線を貫くなら、社会的にもさらに大きな変化が訪れるだろう。政権が目指しているのは、気候変動対策を重視する、より公平でリベラル寄りのドイツだ。

 新政権では、以下の3点が環境政策に含まれている。

・ 石炭の段階的使用禁止を加速し、目標をこれまでの2038年から2030年に前倒しする

・ 2030年までに国内電力供給の80%を再生可能エネルギーでまかなう

・ 2030年までに国内の電気自動車台数を1500万台に増やす

 また、社会福祉面でも大規模かつ寛大な政策が提示されている。社会福祉制度を利用しやすくし、最低賃金を時給12ユーロ(1540円)に引き上げるとしている。

    大麻と選挙権年齢

 一方で、大麻の合法化や、医師による人工妊娠中絶の広告掲載を禁じてきた法律の廃止など、一部の政策については有権者の意見が分かれているようだ。

 選挙権年齢を18歳から16歳に引き下げる案も、国民の心を捉えなかったようだ。世論調査では、回答者の30%しか、この案に賛同しなかった。

 さらに3党は、ドイツの移民システムを全面的に見直し、欧州連合(EU)の難民政策にも改革のメスを入れようとしており、この案も国内外で議論を呼びそうだ。

 新政権は移民を奨励し、難民申請者の権利を改善するほか、外国人の市民権獲得を容易にしようとしている。

    世界でのドイツの立ち位置

 では、世界から見たドイツはどのように変わるのか? 欧州その他の世界にとって、ドイツの新政権はどのような意味を持つのだろうか?

 ロシアや中国といった国々には、少なくとも論調としては厳しめの対応を取るだろう。

 ショルツ政権は中国における人権侵害に言及しているほか、香港の一国二制度の復活や、台湾への支持も表明している。

 次期外相に内定している緑の党のアナレナ・ベアボック共同党首は、「欧州の民主主義国家、そして大西洋の民主主義連合の一員として、我々もまた、中国のような全体主義政権に対する構造的な競争の中にいる」と述べている。

 これはEUと同じ立場だが、その語調は、メルケル氏の時代とは一線を画すものだと指摘する声もある。

 新政権は国防費も拡大すると約束しているものの、国内総生産(GDP)の2%という北大西洋条約機構(NATO)の目標には触れなかった。

 ドイツがさらにハト派色を強めることで、同国が西側諸国の核協定への協力をやめてしまうのではないかという懸念は、弱まっている。

 ドイツは今後もNATOの核共有政策にとどまり、アメリカの核兵器を預かり、核兵器を搭載できる戦闘機を新しいものに替えていくだろう。

 アメリカやフランス、日本などは、ショルツ政権はメルケル政権と大きく変わらないだろうとみている。

 オラフ・ショルツ氏:SPDが総選挙で勝利したのは、ショルツ氏の立ち居振る舞いが非常にメルケル氏に似ていたからだと、多くの人々が信じている。これまで財務相を務めていたショルツ氏は冷静かつもの静かな人物で、その慎重さと思慮分別に定評があった。一方で、パンデミック初期にはすぐに予算投入を発表し、国民の支持を得た。

 アナレナ・ベアボック氏:緑の党の首相候補だったベアボック氏は、これまでのドイツの外交政策に難色を示すなど、すでに歯に衣着せぬ外相になる片鱗(へんりん)を見せている。ただし、同氏がどれほど外交で力を示せるのかは不透明だ。メルケル時代には、ほとんどの外交政策が首相の采配で行われていた。

 ロベルト・ハベック氏:ベアボック氏と緑の党の共同党首を務めるハベック氏は、経済と気候保護を統括するいわゆる「スーパー省」のトップにも就任する予定。

 クリスチャン・リンドネル氏: 財務相に内定しているFDPのリンドネル党首は、新政権の財布のひもと権力の多くを手にすることになる。FDPは総選挙で3位につけたものの、他党に高速道路の速度制限や富裕税の導入といった条件を破棄させるなど、連立交渉中に大きな成功を収めたことは特筆に値する。

    成功のチャンスはあるか

 政治的な立場も、ドイツの将来像も、この3党は全く異なっている。3党がまずは連立を成立させたこと自体が奇跡だと言う指摘もあるほどだ。

 しかし数カ月にわたる激しい交渉の末、各党の党員の大半が連立内容を支持している。

 6日に緑の党が連立に合意したことで、8日にも連邦議会でショルツ氏が首相に選ばれる道筋が立った。

 ドイツ連邦議会(議席数735)の内訳。社会民主党が206議席、中道右派のキリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟が196議席、緑の党が118議席、自由民主党が92議席、極右・ドイツのための選択肢が83議席、左翼党が39議席、南シュレスヴィヒ選挙人同盟が1議席となっている

 連立政権の維持は常に簡単なものではなく、新政権の「新しいドイツ」に向けた計画はお金がかかる。新政権がどのように予算を組んでいくのか疑問を呈する専門家もいる。

 そして、パンデミック開始以降、最も感染者が増えている中で、新閣僚が就任する。

 ドイツはすでに、デジタル化した世界から置き去りにされている。パンデミック初期には、保健当局がいまだにファクスでやりとりをしていることが発覚。教育インフラでも著しい欠陥が明らかになった。

 ショルツ次期首相はロックダウンを否定しており、その新型ウイルス対応をすでに多くの人が不十分だと批判している。連立の中心人物の中には、立場を再考し始めている人もいる。

 ショルツ氏は新政権のトップとして就任宣誓を行う以前から、前任のメルケル氏が第2次世界大戦以来、最悪の危機だと言ったパンデミックに巻き込まれている。

(英語記事 Ready for power: Team Scholz promises a new Germany)

2021年12月8日 BBC

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-59558788


 メルケル首相の失敗とはいったいなんであったのか。EU至上主義ということに関しては、EUにおいてドイツが最も重要な国として尊重されている間は間違いなく問題はないということになる。

現在のEUはドイツが中心になり軍事はフランス・経済はドイツというような感じで中心的な存在になっていた。しかし、そもそも政治と通貨発行権が別々になっているということになり、なおかつ、企業許認可が中央で一括で行うということになれば、当然に、その許認可が得られなかった国が産業が衰退する。

例えば製薬会社の許可が全ての国に認可されなければ、薬剤師役するの研究者を目指す人は、その許可のある国に移民しなければならなくなる。もちろん、「EUは一つ」というような考え方からならばよいかもしれないが、しかし、文化も歴史も共有していない国に強制的に移民をするか、未来をあきらめるかという選択を迫られれば、様々な人々が不満を感じる。日本で言えば、中国に行かなければ薬剤師になれないというような感じになった場合、どのような反応になるであろうか。

 そのような場合は「人材がドイツ一国に集中する」ということになってしまい、他の国が植民地的に搾取されることになる。通貨発行権が一つであるから、その分を国債でまかなうこともできずに、債務の罠的にEUに取り込まれてしまう。そのことに危機感を抱いたイギリスは離脱したのである。

 さて、そのEUが、今度は同様のやり方で中国に取り込まれようとしている。ギリシアの実などの経営権などを売るなど、ギリシア危機から一帯一路に組み込もうとしている中国に対して、ドイツのショルツ政権はどのような対応をするのかということが非常に大きな問題にあるのであろう。

メルケル首相は「中国とロシアを天秤にかける」ということを行い、その中国とドイツが統一化してしまった場合に、幸場所が無くなったということになってしまい、手詰まりが出てきた。イギリスなどが離脱をし、フランスも極右政党が台頭しドイツに反発することになる。特に、ISの移民が出てきた時には、非常にマイナスのイメージになってしまったのではないか。

 ショルツ首相は、アジアを中国と他のアジア、つまりアメリカの影響下にある日本や韓国ということで天秤にかけた外交を行うことを模索している。しかし、「天秤にかける」というようなことをしても、そのことが、日本に有利なるとは限らない。もちろんドイツを無視したり敵対視する必要はないが、そのことで、どうなるのかということをしっかりと見てゆかなければならないのではないか。

 忘れてはならないのは、メルケル政権の副首相をしていたという実績でありまた、左派政権であるということである。当初中国やロシアと対抗しても、もともと親和性があるということになる。そして歴史的にドイツが国家社会主義に大きく傾けば、世界にとってあまり良くない内容になる。

緑の党など、地球環境を重視する政党もあることなので、何とも言いようがないが、そのことから、ドイツが今後どのような外交を行い、隠語用やアジアに影響してくるのかは大きな関心がある。