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なんて日だ!(一昨年前の話)

2017.07.13 23:56

12月12日、土曜日の朝9時。

汐留オフィスのサーバ室で収益管理システムのネットワーク配線をいじっていたさいに、LANケーブルを床下までたどりよせていると、ビリビリビギッ!とスーツの股下が裂けたのである。

こともあろうか、その日はどピンクのボクサーをパンツを履いていたことに気がついたが、どうしようもないため、そのまま作業を続行することにした。

サーバ室には後輩の男が1人いるだけである。

昼すきに汐留での作業を終え、浜松町駅から東京駅まで京浜東北線で移動する。

お尻の部分を鞄で隠してはいるが、やはり全部は隠せていないのであろうか、電車内で怪訝な顔で睨むおばあさんがいたが、外を見て視線を合わせないようにするのが精一杯であった。

俺としては、大丈夫、履いてますよ、という心境である。

東京駅につき、日本橋まで歩く。

背後をとられたら負けだと思ったので、バカみたいに半身になって、ナンバ走りをする。

信号が憎たらしい。

三越ビルを越え、東京日本橋ビルに到着する。

ここまでくればひとまず安心だ。

エレベーターに乗り込み、33階のボタンを押して、ほっと肩をなでおろす。

だが、エレベーターは7階で止まり、進入者がやってくる。

まだオープンしていないビルだ。建設関係の人だろうと思っていると、ツナギをきた若い女性が2人乗り込んでくる。

右前方の操作パネルの前にいたため、慌ててエレベーターに背中で寄りかかり、行き先階ボタンを見つめる。

『さんじゅうよんかいおねがいしまーす』

気だるい声が響き、

俺は慌てて34のボタンを押す。

エレベーターが上昇していく。

8、9、10、11・・

どうやっておりようか。

28、29、30、31・・・

エレベーターの現在位置を示す表示が時を刻む。

頭を使え!まつり!

すると指が勝手に動き35階ボタンを押す。

33階で扉が開き、気まずい空気の中でエレベーターは再び上昇をはじめる。

34階。二人がひそひそと会話をしながら降りていき、

俺は無事に35階にたどり着く。

前日に顧客から送らてきた「関係のない階には出入りしないでください」というメールに記載された文面が頭に浮かんだが、なんとでもなると自分を鼓舞し、階段をおりて、ようやく33階のサーバ室にたどり着いた。

この日の作業はSWHUBとサーバの移設である。

股が裂けててもパンツが丸出しでも何ら支障はない。

早く終われば22時には終わるだろう。

ところがそうはいかなかった。

業者が持ってきたHUBと、サーバのディスクの27台あるうちの1台が故障していたのである。

顧客に謝罪の連絡をし、営業に保守部材の手配を依頼する。

一時間半後にやってきた保守員のワイルドすぎる話は割愛するが、作業が完了したときには0時を回っていた。

帰宅を急ぐ。

東京駅までナンバ走りでたどり着き、大宮行きの最終電車に乗り込む。

地元の駅までは電車はすでにない。

赤羽で降りて深夜バスに乗ろうとするが、平日しか運転がないことを知る。

そこで気がつく。

タクシーチケットもカードも今日は家に置いてきてしまっていた。

仕方なしに歩いて帰路を目指す。

1時半発。

ネオンの光る赤羽の繁華街を抜ける途中で、石鹸の匂いを漂わす男性3人とすれ違う。

荒川にたどり着き、大橋を超えれば埼玉県である。

いざ、参ろう!と右足をだしたところで警察官に呼び止められる。

「酒をのんでいるのか」「どこへ行くのか」としつこく聞いてくる。

新宿にたむろするキャッチのお兄さんなみである。

飲んではいないと答えると、息をかけろと言ってくる。

変態だろうか。

身分証明書をみせろというので財布からマイナンバーカードを取り出し見せてやる。

するとこれは重要情報だから簡単にださない方が良いと言う。

変態だろうか。

家が越谷だとつげると、怪しいと言わんばかりに鞄の中を見たがってくる。

変態に違いない。

全部を見せてやると警察官は満足したように聞いてくる。

「変態なのか」と。 

思わず「そうです。私が・・」と言いかけた所で思いとどまり、パンツが丸見えな旨を説明し、ようやく解放された。

それから2時間半歩き、越谷についたのは4時である。

疲れた。思考が麻痺している。飲まずにはいられない。

パンツが丸見えでも入れる店を探す。

駅前のbarが目に入る。

お一人様歓迎。

気軽にお越しください。

ならば入ろう。

右手でノブを回し、左足から店に入る。

カウンターに座り、ワイルドターキーを注文する。

酒がきた所で後ろのテーブル席にいた女がキャッと悲鳴を上げる。

どうせ酔っ払っているのだろうと思いながら、酒を一息に飲み干す。

するといかつい男がやってきて、囁くように告げる。

「お客様、下着が・・・」

私は、うむ、と頷き平静を装い、代金を払って店を出る。

冷たいものが、頬を垂れる。

雨が降り始めていた。

私は空を見上げて呟いた。

「なんて日だ!」