とほんの新刊案内 no.001
こんにちは。とほん店主の砂川です。実験的に新刊本をざっくり紹介する投稿をしています。普段のSNS投稿はどうしてもどんな本なのか基本情報が中心となってしまうので、もう少しゆるい個人的な感想のような、なぜ仕入れたのかというあたりを、つらつらと書いていくのも面白いかなと書いてみたいと思います。
小川洋子さん9年ぶりのエッセイ集です。まず、装丁の美しさが目を引きます。陶器を思わせるツルツルした質感の紙に、陶器作家・上出惠悟さんの絵を印刷。飾っておきたくなります。小川洋子さんのエッセイはその人柄や小説への真摯な向き合いかたが滲み出ていて、小説好きとしては自然と入り込んでしまう。
ウェブメディア掲載記事をまとめたもの。「やってみた」系の自らネタを生み出して記事にするタイプの読み物で、帯に「〈実験〉的エッセイ」とありました。なるほど、そんな呼び方をするのかと勉強に。家の中のちょっとしたことを夢見がちに掘り下げる独特の世界感に引き込まれます。ワタナベケンイチさんの遊び心のありつつ洒落たコラージュ的な装画が内容にぴったり。
坂口恭平さんはここ数年特に注目している方で本もほぼほぼ仕入れています。精神科医の斎藤環さんは、私も引きこもりがちだったため、昔から著書はよく読んでいました。『心を病んだらいけないの?』でもそうでしたが、斎藤環さんの心の問題に対する実践的な経験・知識の引き出しの多さに驚かされます。そして坂口恭平さんの生き方はほんと凄くて、もう凄いとしか言えない。
日本の江戸時代もそうでしたが、本屋の創成期は本屋は少なく世界各地で行商スタイルも盛んでした。本書はイタリアの山奥にある村がかつて本の行商を生業としていたことを知り、その子孫を訪ね歩くというノンフィクション。本について、本屋について、その世界の奥深さを堪能できる傑作。文庫になって加筆修正・写真も増えたのだけど、単行本の装幀も素敵なのでどちらも販売中です。
個人的に現役の作家さんで一番読んでるのが津村記久子さん。会社の職場でのリアルな状況や雰囲気の描写に共感でき、登場人物たちの視点やテンションがなんとなく自分に合っていると感じるので、すっと世界に入ることができます。この本は文芸誌「群像」掲載もの中心で文学的な作風もの。
「実験的エッセイ」として、日常のなかで「あえて」視点をずらすことで、いろんなことを再発見して楽しむような。表題作にあるような、いつもの自分が選ぶものとは違うものを選んで過ごしてみるなんて、ちょっとやってみたくなる。