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Cub〜戦慄のサマーキャンプ〜

2017.07.15 13:36

3連休初日、溶けそうなくらい暑くて死にそうだし、 どうせ何処へ行ってもダダ混みだろうから、とわたしの中で始動したお家でまったりプロジェクト。


近くのGEOで『ミュージアム』『The Consultant』とあわせて『Cub』なるものを借りてきた。


B級の香りがするホラー映画は話題作と違って気合を入れて見なくても良いような気がして、色々家事をやりながら休みの昼間に「流しておく」のに最適だと思う。


そんな感覚で借りてきた「Cub」だが、レンタル新作ホラー、という以外に前知識まったくゼロの状態で借りてくると意外性があって見入ってしまった。


ここから先はネタバレになるので要注意。

意外性その①

アメリカ映画だと思って借りたらベルギー映画だった

ベルギー映画ってレア感満載じゃない?でも当初はオランダ映画だと思って観ていた。その理由は言葉にある。


英語だと思って見始めたのに訳わかんない言語で、英語ではないけど発音は微妙に近くて、ドイツ語に聞こえるんだけど発音が微妙に違って、ラテン語系ではないし、この「聞き取れないモヤっと感」は飛行機の中で聞いたことがあるぞ、と思い出したのだった。


KLM機内で生まれて初めてオランダ語を聞いたとき、

「ナンジャコリャ」

と感じたものだ。集中して聞いていないと英語のようだし、でも耳を傾けてみると英語ではないから聞き取れないし、ドイツ語にも似ているけどドイツ語でもないあのモヤっと感。


言語に疎いから感じるものではあるのだけど、そのナンジャコリャと同じものを映画内の台詞から感じたためオランダ映画だと思って調べてみたところ「ベルギー映画」だと知って、それはそれで納得した。


ベルギーには「ベルギー語」ってなくて、公用語がフランス語とオランダ語と英語なんだって。それも地方によってフランス語圏とオランダ語圏が分かれていて、『言語境界線』が公式に設定されているそうだ。


言語境界線で同じベルギー内でも徹底的に言語を分けており、フランス語圏ではニュースなどもフランス語で流れるがオランダ語圏ではすべてオランダ語、といった感じ。ちなみにオランダ語とフランス語はどちらも大きく分けるとインド・ヨーロッパ語族で同じ部類に入るが、ゲルマン系とイタリック系という違いがあり共通要素はあまり多くはない。

同じ国内で、共通要素の少ない言語が境界線によって使い分けられているということは、同じベルギー人の間で意思疎通が困難になる可能性もあると考えられるが、そのあたりは海に隔たれて隣国との言語が全く異なる文化の中で生まれ育った日本人になかなか理解できない歴史的民族的背景があるのだろう。


しかし一方では、言語コンプレックスに陥りやすい日本人にとって、いとも簡単にオランダ語と英語、またはフランス語と英語、さらにオランダ語とフランス語と英語、と2、3ヶ国語を使いこなせるベルギー人は羨ましくもある。オランダ語が使えたらドイツ語圏の人とはほとんど意思疎通が出来るし、フランス語が使えたらラテン語圏のフランス以外の国でも充分通用するからだ。


ベルギーの首都、ブリュッセルはオランダ語圏に属しているが、フランス語圏の人々が多く生活するため公用語がフランス語になっているそうだ。首都で使われていることもあって、ベルギー=フランス語のイメージが強かったが実際のところ、オランダ語を話す人々が6割と過半数を超えており、そういう理由もあってか日本で珍しいベルギー映画「Cub」

はオランダ語メインで作られている。


ただし、作中ではフランス人のDQNぽい男子2人とボーイスカウトの団長がフランス語でやり取りをしていたシーンなども見受けられ、やはりベルギー人にとってオランダ語とフランス語を使いこなすのは日常茶飯事なのだと思われた。

意外性その②

映画と関係のない言語の話をダラダラとしてしまった。ここからは真剣に内容を語っていこう。


登場人物はボーイスカウトに参加している小学生くらいの子供達10人くらいと、ボーイスカウトの団長、副団長、料理人の女性、副団長のペット「ゾルタン」(犬)、フランス人のDQN2人組、「カイ」と呼ばれる野生児のような顔の分からない不気味な人間、おっさん。


夏休みを利用してキャンプへやってきたボーイスカウト「チームCub」の男子達。このキャンプ場には夜中に出てくる『カイ』という名前のモンスター(UMAみたいな扱いだった)がいるという噂を聞いて少年たちは盛り上がる。


和気藹々と楽しんでいるようにも見えるが、主人公の少年はちょっとイジメられ気味。


キャンプ場へやってくるとゴーカートのようなもので遊ぶフランス人男性二人と早速突する。子供達が遊ぶこと、テントを設営することなどボーイスカウトの団長が説明するがエンジンを上げて騒音を撒き散らし、話さえしようとしないDQNな二人。


あまりムキになるのも子供の手前良くないと判断したのか、団長と副団長はキャンプ場から少し離れた森の中まで入り込み、そちらにテントを張ろうとする。


森の中へ入ろうとするボーイスカウト団を何故か慌てて止めようとするDQN達。しかし団長達はDQNを無視する。なんとなく危険フラグがこの辺りから立ち始めた。


DQNとの争いを巡査に連絡した団長。小さなバイクに巨体を無理やり乗せてやってきた巡査は、かつてこの地で自殺がたくさんあったなど怖い土産話を置いて帰る。


主人公はそうそうにイジメられて森の奥深くを一人で探索していた。ちなみに主人公をイジメるのは子供達だけではない、副団長も何が気に入らないのか主人公を目の敵にしていて、団長が常に注意をしていたもののイジメが収まる気配はなかった。


そんな中で主人公は『カイ』の住処を発見、さらに森の中で彼と遭遇し「カイがいた!」と騒ぐのだが、もちろんもともとがイジメられっ子なので本気にされるはずもなく、それどころか「人騒がせな子」と迷惑そうに扱われる。


一方、ボーイスカウトの団長と話をした巡査は森を抜けて戻ろうとするが、罠にハマって命を落とす。するとおっさんがどこからともなく現れ、巡査の死体をどこかへ運んでいった。


スプラッター要素は皆無の映画なので死に方はアッサリしたものだが、この先とにかく人がバッサバッサと死んでいく。


二人目はフランスDQNのうちの一人。DQNならではの発想で、遊んでいたゴーカート(?』のガソリンが無くなったためボーイスカウト団から拝借しようと森の中へ入っていく。


ボーイスカウト団が森へと向かった時、突然イイ奴っぽくなって大声で叫んで止めていたのに、ガソリン盗む発想と入るのを止めたはずの森へうかうかと入っていくあたりが若干理解しがたいのだが、まぁB級モノと思えばアリ。


このDQNが大層な死に方をするのである。なんだか良く分からないが、カイに鍵を盗まれる→見つける→木の幹に置かれた鍵を取った瞬間、罠発動→矢とともに蜂の巣が飛んでくる→刺さる→蜂まみれになって死亡→身体中ぶくぶくに腫れ上がった状態のDQNを運んでいくおっさん…


おっさん、誰やねん!?


っていう疑問は最後まで解けなかった。

おっさんと「カイ」の関係性も作中では語られていないのだが、親子なのかなぁという描写はあるにはあった。


キャンプ場では相変わらず孤立する主人公。

ただ、この主人公もなんだか薄気味悪いところがあって、イジメられても怒られてもあまり気にせず「カイ」を探しに森の中へ入っていく。


唯一、金髪巻き毛の眼鏡っ子が主人公に懐いている感じを醸し出していて、彼と一緒に森へ「カイ」を探しにいくも見当たらない。夜中に食料を持ち、テントを抜け出して「カイ」の住処へ行くとそこに彼はいた。


食べ物(缶詰)を渡してちょっと手懐けた感が出たが、今度は「カイ」がテントへと盗みに入ってボーイスカウト団は騒然となる。


その夜、主人公は副団長と料理人のラブシーンを見てしまい、さらに副団長の飼い犬ズルタンに手を噛まれた。


眠っている主人公を「カイ」が起こしに来る。森の中へとついて行くと、そこにはなんと袋詰めされたズルタンの姿が。


わたし、この作品を観始めたときに犬の登場シーンでふと夫に「こういう映画って犬は死なないのよね」と知ったかぶりで言ったのだが…。


意外性その③

普通、こういう皆殺し系ホラー作品は主人公が生き残るとともに、ペットが出ている場合、そのペットも上手い具合に逃げ出して助かるものである。


しかし、なんともエグい話だが、早々にその予想は覆された。


袋詰めにされたズルタン(犬)を棒で思いっきり殴る「カイ」。どうやら仕返しのつもりで主人公を呼んだらしい。主人公は袋の中身がズルタンだと知って当初は止めるのだが、犬の悲鳴と唸り声を聞いて何かのスイッチが入ったのか急に「カイ」と一緒に殴り始めた!


子供が犬を殴りまくるシーンのある映画って、そうそうないよね。


で、撲殺される犬。


このシーンでうちの犬、めちゃ吠えてたけど、そりゃ吠えるわ。動物虐待反対。


いや、ある意味想定外だし、ここまで描くあたりが日本の映画とは決定的に違うなとは思うけど。


袋に入っているので撲殺された犬のリアルな姿までは見えなかったのがせめてもの救い。


犬の悲鳴を聞いて駆けつける副団長。即座に逃げる「カイ」。主人公は『カイがやった』

と言ったけれど、どう考えても信じてもらえる状況ではないし、そもそも、

お前もやっとるがな。

って話ではある。


怒り心頭の副団長は主人公に殴りかかるのだが、団長と料理人が止めに入る。


とりあえず落ち着こう、と車に主人公を乗せて話をする団長だったが、やはり主人公は『カイがやった』としか言わない。


団長も主人公を信じられず、車から追い出してしまった。


犬のことを気にせず、森の中へと走る主人公。「カイ」を探すはずだったが、途中でおっさんのアジトを発見。こっそり侵入した彼は、おっさんの手下として働く「カイ」の姿を目にした。


「カイ」に見つかり、一目散にキャンプへと逃げる主人公。


その間、団長と料理人は森の中へと入っていった主人公を探し回る。副団長はキャンプの火に犬の遺体を焼べて弔う。


ここで犬の丸焼けシーンが映されるので要注意。豚の丸焼きにしか見えなかったけど。


団長は森の中で「カイ」の住処を発見する。中にはテントから盗まれた物と巡査の携帯があり、不審に思うとともに主人公の言っていたことがウソではない(少なくとも森に住む者がいたことは確か)ことを知る。


そこへ逃げてきた主人公が合流。

「君は本当のことを言ってたんだね」

と理解を示すも、主人公の背後から現れたおっさんに襲われソッコーで絶命した。

あっけなさすぎる。


団長の死を目撃した主人公は危険を感じてテントに飛び込み、ここから出るな!と騒ぐが誰も相手にしない。


唯一、彼を信じたのは金髪巻き毛の少年で、それ以外の少年達は慌てて外へと飛び出していく。


そこへやってきた1台の車。おっさんの運転するトラックで、

子供達が殲滅されていく。

特にスプラッタシーンなどがあるわけではなく、結構淡々とした感じになっていて気づきにくいのだが実は死人の多い作品だ。


主人公は金髪巻き毛の少年の協力でトラックのガソリンに引火させておっさんを撃退する。その後の金髪巻き毛の描写がまったくないのでどうなったのか分からないのだが、彼は助かったのだろうか。


さて、森の中で彷徨う料理人のおねーちゃんはというと、罠にかかって「カイ」の餌食に。女性に興味があるのか、傷つけるというより身体を触りまくる「カイ」の描写が病んでいて気持ち悪い。


主人公はおっさんを撃退したものの、なぜかまた森の中へと入っていき、復活したおっさんに捕まってしまう。


ガソリン引火してトラック爆発してるのに顔ケロイド状態で戻ってくるおっさんの生命力ってどうよ。


で、料理人のおねーちゃんともども、おっさんのアジトで縛られるんだけど、おねーちゃんの機転で一度は逃げ出すことに成功する。


このとき、おねーちゃんの蹴りで「カイ」が井戸の底へと落ちて行ったのだが、アホなのかなんなのか、おねーちゃんも主人公もまたまたおっさんに捕まってしまう。


おねーちゃんか主人公か、どちらか一人しか生き残れない、と暗に主人公へ「おねーちゃんを殺せ」と伝えるようなおっさん。


主人公はナイフを握ったままおねーちゃんに近づいていくが、おねーちゃんの大暴れで主人公も井戸に落ちてしまった。


井戸から這い上がろうとしたとき、後ろから忍び寄る影。「カイ」が生きていたのだ。


その姿を見て、上で落としたナイフをおっさんが井戸に投げ込む。子供達の死闘が繰り広げられ、しばらくしたのち、仮面を被った少年、すなわち「カイ」が生き残って井戸から這い上がってきた。


その頃にはおねーちゃん、吊られていた腕を外して逃げられる体制を整えていたため、井戸から這い上がってきたのが「カイ」だと分かった瞬間、逃げ出した。


おっさんと「カイ」は森の中を捜索する。

おねーちゃんは、通り過ぎる車の音を聞いて道路が近くにあると思い助けを求めて出ていくが、なんとその音もおっさんの罠だった。


捕まって木の幹に作られた出っ張りに思いっきり刺されるおねーちゃん。近寄るおっさんと「カイ」。そのとき、「カイ」が仮面を取る。下から現れたのは主人公の顔。そう、彼は「カイ」との戦いに勝っていたのだ。


仮面の少年が主人公だと知り、息も絶え絶えに助けを乞うおねーちゃん。しかし、井戸の中での戦いがそうさせたのか、もともと持っていた猟奇性のようなものが芽を出したのか、主人公は顔色ひとつ変えずおねーちゃんに何度もナイフを振りかざし、息の根を止めた。


結局、侵入者を全員仕留め(金髪巻き毛とフランスDQNのかたわれはどうなったか分からない)家へと戻っていくおっさんと主人公。


しかし、前を歩くおっさんの後ろからついて歩く主人公の手にはナイフがしっかりと握り締められていたー。


感想

最後の最後まで救いようがなかった作品だが、予想を裏切る展開で昼寝をすることもなくスルッと集中して観ることが出来た。


後味の悪さとか暗さが、いかにもヨーロッパの映画だなぁと思う反面、おっさんと「カイ」の関係性や「カイ」の仮面の謎などが描写されていなかったためストーリー展開の分かりにくさが目立った。


思わず引き込まれてしまう作品なだけに、このあたりの背後関係が描かれていなかった点は残念である。


ただ、アメリカ映画のホラーに辟易としている方などは、ヨーロッパホラーの作りを楽しむという意味も込めて、それなりにオススメ出来る作品だといえるだろう。


少なくとも、わたしは嫌いじゃない。