東北生活文化大学 水谷教授と「精進料理」、「野菜や果物の持つ漢方としての効能」についてお話ししました
2021年冬。
素食カフェRenネット通販のお問い合わせ窓口に一通のメールが届きました。
件名
「薬膳料理(調味料)」の商品化に関して調査研究について
本文
突然、このようなメールを送ります。ご無礼をお許し下さい。私は、東北生活文化大学の水谷 浩と申します。 現在、食養生の観点から、果物や野菜の調理・加工後の残渣物について、その漢方薬としての有用性に注目し、調査研究に取り組んでおります。 具体的には「病の予防や症状の改善に有用な『救民妙薬』として、陳皮(ミカンの皮)や南蛮毛(トウモロコシの花柱)、南瓜仁(かぼちゃの種)等、農産加工品(生薬)としての可能性を考察していく」というのが、小生の調査・研究のテーマです。本研究を通じて、身近な野菜(残渣物)の栄養価に加えて、漢方としての効能にも関心を高めていくきっかけにしたいと考えております。御社は、台湾の素食文化を根底にして、動物性由来の原材料を使用せず、身体に優しい菜食料理を提供されているとのこと。つきましては、地場野菜や果物など、調理・加工後の残渣物を農産加工品(生薬)として活用した「薬膳料理(調味料)」に関しての調査研究にご協力頂けましたら幸いです。
なんともご丁寧なメールを頂戴しまして、台灣人オーナーにも伝えたところ「素食文化を広める活動に、我々がお役に立てることがあるならぜひとも!」ということで、お話をお伺いさせていただくことに。
その旨お返事差し上げたところ、なんとわざわざ東北から京都までお越しくださるとのこと!
東北生活文化大学教授 水谷様と奥様との貴重なお話のお時間をいただけましたので、その様子をお伝えします。
日本の精進料理、台灣の素食文化
2021年12月11日の土曜日。
冬の京都は寒いです。
そんな中、東北生活文化大学の水谷教授と奥様が素食カフェRen四条大宮店までお越しくださり、菜食と食養生についていろいろとお話しさせていただきました。
水谷教授は現在、精進料理や野菜の持つ漢方として効能についても研究されていらっしゃいます。
近い将来、台灣の花蓮にある大学にて、台灣における精進料理の在り方を学ばれるとのことで、その前に日本でも事前に調べていらっしゃるとのこと。
水谷教授はもともと経営学が専門分野でいらっしゃいますが、奥様と出会われたことで菜食の素晴らしさに触れ、今ではご自身も菜食生活を続けられています。
教授の奥様「私は生まれもって体が動物性の食べ物を受け付けなかったんです。だから給食でも無理に食べさせられるので、いつも最後まで教室に残されていました。それこそ同級生が掃除を始める時間になっても(笑)。大人になって食の選択は出来るようになりましたが、主人とも出会って最初の頃は食事のことでよくもめましたね(笑)」
水谷教授「最初は食べるものがまったく変わったので苦労しました(笑)。ただ彼女が食べられるものが限られているとそれに合わせるんですね。そうしているうちに自分もその食事が体に合っているのを感じるようになったんです。それでだんだんと興味を持つようになって。もともと経営学が専門だった私ですが、今は菜食の文化や、食養生の観点から野菜や果物の持つ力について研究しています。ただ私は日本の精進料理について学んでいく中でやがて違和感を感じ始めました。例えば野菜中心の和食の多くが動物製食品の出汁を使用していても、それを表示していないことがあります。日本にはまだまだ本来の精進料理や菜食主義についての理解が浸透していないと感じています。」
大宮店長「そうですね。私もこの仕事をする中で精進料理を提供しているお店を調べたりするのですが、動物性食材を使っていないとうたいながら、『味が決まらなければカツオ出汁を入れる』と言う料理人さんもいるらしいのです。他に不思議に思ったのは日本では『心を尽くせば「精進料理」とされる』という考え方が一部であるらしいということです。『殺生しない=人の命だけではない』という大事な部分が抜けていると思いますね。」
水谷教授「そこにいくと台灣はじめ海外の国は徹底していますから。宗教や環境保護など理由はそれぞれですが、本来の在り方・目的を理解しているから動物性食材は一切使用していない。僕は本来の精進料理の持つ意味合いを研究して、正しく世の中に広めていきたいと思っています。」
教授の奥様「外資系のホテルなんかはそのあたりの理解が進んでいて、ヴィーガン対応してくださるところが多いですね。」
水谷教授「私達は東北に住んでいますが、東北の旅館は外国人の受け入れ態勢が整い始めたのが最近のことです。なのでヴィーガン料理についてまず理解を深めてもらいたい。」
大宮店長「コロナで食事、食材にあらためて関心を持つ人が増えています。その中で菜食にも注目が集まってきていて、プラントベースの料理、菜食をアピールするサービスも増えていますよね。でもビジネスとして広まっている部分もあるように思います。どういうわけか、一度、菜食のセットを頼んで楽しみにしていたのに、箱を開けたらお刺身が入っていたこともあって、いろんな意味でがっかりしてしまいました。」
オーナー「作る人が正しく作ってあげないと、ずれていったら子供たちがかわいそう。台灣では大学でもベジの考え方や料理を広めているよ。」
水谷教授「私も学生に教える立場の人間として、正しく伝えていきたいと思います。現状の日本と台灣との比較をすることで分かりやすく伝えられると思います。」
オーナー「台灣はどこのお店でもヴィーガン対応してくれるよ。」
水谷教授の奥様「『(動物食材の)“抜き”』をやってくれますよね。」
オーナー「『五葷抜き』もそう。日本では『五葷』は味やにおいが強いので味付けに便利だと考える人も多いと思う。」
野菜や果物の持つ力
オーナー「自社農園ではたくさんの野菜を育てています。自然の恵みは何でも大事にいただきます。例えばキャベツの外側の葉っぱも捨てずに料理に使います。油で炒めて塩をふるだけで十分に美味しい。苦みは感じるけど、苦みがある食べ物というのは体に良い。人間の身体はすべて食べた物で出来ているけど、食べる時に野菜や果物の形に注目してみてください。人間の身体の各部分それぞれに役割や形が似ている食べ物があって、実際にその部分に良い栄養を与えてくれるという考え方があります。例えば芯のあるキャベツなどは自分の身体の芯の部分(主に胃腸など)に良い。クルミは脳の形に似ているから脳に良い。ブルーベリーは目に似ているから目に良い、なんていうね。そういう風に説明すれば子供にも楽しく勉強してもらえるよ。教授、子供向けの本をぜひ書いてください!」
水谷教授「そうですね!ただ伝えるならまずは職業柄、目の前の学生達からにはなりますが(笑)。野菜や果物の漢方としての効能を私も調べていますが、そういうところから広めると日本人には馴染みやすく、伝わりやすいと思います。」
オーナー「野菜や果物は本当にすべて体に良いから。Renでは生ゴミが全然出ない。例えばゴボウの皮なども洗って素揚げにしておやつにする。シークァーサーは皮ごとスムージーにして飲んだら美味しい。柑橘の皮も漢方になる。ミカンの皮は免疫力が上がるから食べるようにしています。台灣ミカンの青い皮もとても体に良いんですよ。」
オーナーが素食のお店を始めた経緯
水谷教授「オーナーはなぜ素食のお店を日本で始めたのですか?」
オーナー「京都ならベジの店あると思ったら無かったんで。」
水谷教授「え?」
オーナー「あ、いや。昔は私もベジタリアンの食事をしていませんでしたが、ある日、肝臓の大病を患い大手術をしました。その一件が食事のこと、健康のこと、環境のこと、命のことについて見直すきっかけになったんです。そしたらだんだん『お子様から年配のかたまで精進料理の素晴らしさを知ってもらいたい!』と思うようになってお店をやることに決めました。最初は地元の和歌山でお店をスタートしたのですが、ある時京都に来たら、外国人観光客やお寺が多いにも関わらず京都には菜食のお店がほとんどなくて、京都の大宮でもお店を開きました。」
「ただそのお店は3年ほど前にビルの工事を理由に閉めました。一度は京都から撤退しようと思いましたが、和歌山の店舗で働いていた今の四条大宮の店長が『お客さんが食べれなくなってかわいそう。私が京都でやります』って言ってくれて。それならと物件探しから始めたんですが、なかなか良い物件がなくて諦めかけていた頃、天からの導きでしょうか?ある不動産屋さんで、ちょうど今売り出し始めて5分というタイミングでここを見つけました。」
水谷教授「それはすごいタイミングでしたね。また、お店を開いた途端に、このコロナ禍。たいへんだったでしょう?」
オーナー「そうなの!でも『今必要』というのは天の声。私はそれに従いました。」
水谷教授「そう、まさに今こそですね。素晴らしいことだと思います。」
オーナー「ともに菜食を広めるため、地球のため未来のためにがんばりましょう!」
水谷教授と奥様のように実際に菜食生活を実践されていて、専門性高く研究されている方に菜食を広めていただけるのは心強いばかりです。
本当にすぐの近い将来、旅館でもヴィーガン料理が当たり前のようにお品書きに書かれていたり、学校で給食が食べられなくて残される子もいなくなると良いですね。
水谷教授と奥様、貴重なお時間をありがとうございました。