生島尚美さんエッセイ / バリ一代ドタバタ記 (生々流転vol.19より転載)
第9回「そもそも何故『カバンのお店』なのか?」
▲このミシンは職人さんが10年程前から使ってるもの
本当に「カバンの専門店」にして良かったな、と後々何度もいろんな場面で思います。
だが、そもそも何故「カバンのお店」なのか。
「そういうデザイン学校に行ってたんですか?」とも聞かれるのですが、私は飲食店でのお仕事と設計事務所にちょっとだけいたことがあるだけで、服飾関係の仕事は一切したことがありませんでした。
「日本人だから日本料理のお店は?」なんて気軽にバリの人から何度も提案されましたが、飲食店の大変さを知ってる私だけに容易に手を出すことはできませんでした。知らない土地でどんなお客さまが来るか分からない状態で腐っていく生ものなんて扱えない!
極貧の私に、例え小さな冷蔵庫であれ、ガス台であれ、食器類であれ、設備投資がある程度かかる「飲食店」をする余裕はない!それがまず「一番得意なジャンル」に走らなかった理由です。
もちろんわたしも女性ですから、例に漏れずバッグや靴は好き!(今となっては一年のうち350日ほどは草履ですが)
インドネシア、この素敵な布大国で腐らない「物販」のお店を始める。ウブドにすでにあった日本人の経営するお店と言えば、洋服と雑貨屋さんぐらい。 雑貨屋さんというのは昔から「説明が難しいジャンル」と思っていました(雑貨ってなに? って聞かれそう)。そうなるとお洋服のお店なの? しかしバリではまだまだ職人さんたちものんびり、そしてラフに商品を仕上げて来る人が多い。お洋服の場合、サイズが違うと「着れない」というリスクがある訳です。
消去法で行くと…
バッグなら少々サイズを作り間違えても「使える」!
え? それで??? だからバッグ?? と言われてしまえばそこまでなのですが...好き、そして更にそれだけではなくちゃんと「リスク」を避けてジャンルを選んだのは、今考えても「何も深く考えずにバリ島に飛び込んでしまったおバカなりによくやった!」と思う訳です。
後になって「sisiのバッグは折り畳めるし、かさばらない。壊れ物の間に挟むとクッションになる! 本当によく考えられていますね」と褒められ、「そ、そうなんです~、へへへ」と調子良く答えている私がいました。陶器や木彫りのお店やさんを見ているとつくづく布バッグで良かったものだと思うばかりでした。
<つづく>