通信簿
2017.07.18 06:02
1学期の終わり。
―きちんと座って話が聞けています。
―時間も守れて立派です。
―友達とも仲良くやっていますよ。
先生からの言葉に
母さんのこころは
一方でほっとし
一方で揺れる。
成長という言葉のうしろに
社会の道徳が滲み始めた
きみの小さな背中を思う。
それが現代を生きるすべなのだろうけど
母さんの胸には
ひところのきみの姿が
力強くうごめいている。
―所かまわずじだんだを踏んでいた。
―雨どいから滴る雫を
飽きもせず眺めていた。
―あふれだす気持ちを
丸ごと友だちにぶつけていた。
誉め言葉と引き換えに
なぜかしら、
ほんとうのきみが
少しずつ失われていくような気がして。
それが現代を生きるすべならば
母さんのこころのなかで
ふつふつと生かしておくよ。
さんざん手を焼かせた
あの頃のきみを。
いつかきっときみに必要な時が来る。
そう思うから。