ACT REPORT|はじめての抽象画〜自分なりに感じたことを、表明しあっていた時間
「今日は見えないものを描きます」と伝えるところからスタートです。
生徒は音楽(ガムラン)を聞きながら、具体的な形は描かずに、線と点と面だけで描いていきます。
抽象画は上手/下手、正解/不正解がない絵。
音に意識を寄せて、オイルパステルを使って心のままに描いていきます。
生徒たちは戸惑いながらも、思い思いに描き、講師はそれぞれの作品一つ一つに声がけをしていきました。
その後、完成した作品を班ごとに鑑賞会。
ルールは3つ。
・言われて気持ちのいい言葉を使うこと。
・上手い下手がない絵なので、「上手」という言葉は使わない。
・自分の言葉で良いところ・好きなところを伝えよう。
他人の表現した(しかもよくわからない)ものから良いところを見つけ出し、言葉で伝えること。 そして、表現する心地よさ、わからないものを認める寛容さ、褒めて(認めて)もらう気持ちよさを経験することができたと思います。
それでは、講師のチノさん、メンバーのちなつさんからのレポートをどうぞ。
悩んでいることにも共感し、それを肯定すること
全体的に見れば、拒否する生徒はいなかったし、激しくおちゃらけて向き合わない子もいなかったように思います。
そして、それぞれが表現に工夫を凝らしていて、絵を描くことを楽しんでいるようでした。
また、自分なりのイメージを持って描いている生徒も多かった気がします。
それぞれの表現が作品として生き生きとしていました。
なかなか始められない生徒もいましたが、それは当然だと思うし、悩むことは悪いことではありません。
大事なのは、悩んでいることにも共感し、それを肯定することだと思う。
むしろわたしとしては悩んでいる生徒を見ると、向き合ってくれているのだと嬉しくなってしまいます。
(チノ)
見えないものを描くこと
今回のワークショップへ入る前にチノ先生は見えないものって何?という質問をした。
返ってきた答えは様々。
「気持ち」
「空気」
「命」
「音」
そこには彼らが見えないけれど、確実に「ある」ということが直感的にはわかっているものだった。
どのクラスも最初に「空気」と出たのが、「僕らは生きている」という表明のように思えて、なんだか清々しかった。
点と、線と、面だけで描くと限定されて、 困った顔をしてしばらく固まっている子もいたし、 音を流れるのも待てないくらいに描きたくてウズウズしている子もいた。
また、描き出してみたものの終わりが見えずにぼんやりしている子もいた。しかし、どの子もみんな描いた。 流れる音を描いたのか、今この自分の気持ちを描いたのか、 とりあえず手を動かしていたらそれらしいものに見えてきたのか、 作品が出来た経緯も様々だったと思う。
「この絵の良いところどんなところ?」
最後にみんなで聞きあう時間があったけど、みんななんとも言えない顔で絵を見つめる。
絵は確かに見えているけれど、それが何なのか不確かだ。
この問いは、目の前にいる誰かのことを自分の目で見直すという行為なんだと思い、言葉に詰まっている様子はとても良かったのだ。
そうそう、そんなに簡単にわかるもんじゃないよねって。
できた作品について詳しく聞いてみると、「この線は低音なんだよ」「これはキラキラっていう音」など実はいろんな思いがあって、同じ音を聞いているのにこんなに違う! それを話しながら描いていた子もいる。
自分なりに感じたことを自分なりに表明しあっていた時間。
描かれた絵よりも何よりそれがキラキラしていた時間だった。
(ちなつ)