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眠れる東京の凡人【自己満・就活総括③ 】

2017.07.21 14:59

6月篇スタート!

今回、黒いイノウエ若干出てるので、気分害された方いたらすみません。

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「自分が頑張っている姿を実況中継していないと、立ってられないよ…!」


映画『何者』を昨夜、意を決して視聴した。小説は読んでいたからオチは知っていたけど、それでも視覚と聴覚の部分で迫力が加わってそのリアルさに吐きそうになった。朝井リョウは罪深い。

この物語での転換点は「友人の内定」だ。まさにそのポイントが18卒就活生にとってはこの6月だった。


大手出版社は他業界に比べて内定が出るのが少し遅い。期間にして半月。この半月の差がどれだけ大きいか、機会があれば体験してみてほしい。


ちなみに、6月に入った時の持ち駒は7つ。そのうち6つが大量に手書きでESを書いた企業だった。それらの企業の採用倍率は全て100倍を越えているだろう。

第一志望だったKD社は20人近く採用するようだったがエントリー数は3000人を越えていた。

そこでも己の慢心は燻っていた。

「最終的にはなんとかなる…よな?」

ポジティブと現実逃避は紙一重なのだ。



6月の中旬にも入ると、湧いてくる。夏を前にして湧き立つゴキブリのように。梅雨入りとともにまとわりつく粘っこい湿気のように。


それは「内定自慢」しだす奴らだ。

いや、内定もらったらもちろん嬉しいだろうし自慢したくなる気持ちはわかる。わかるからこそ「無い内定」の自分の惨めさが引き立つ。就留した一個上の先輩が大企業に就職を決め、大層偉そうに語り出す。ありがた〜いご高説を垂れ流しはじめる。内定者がそんなに偉いのか?俺をバカにしてんのか?SNSで見かけるたびに"内定祝い"している姿に嫉妬に似た殺意が確かに生まれる。そしてその黒い塊は持て余せば持て余すほど塊の輪郭がぼんやりとしてくる。

悔しさなのか、惨めさなのか、それとも卑屈さなのか。親の期待の重み、はたまた自分自身への期待の重み?失望、焦燥、恨み、妬み。そしてやっぱり、悔しいんだ。


就活が終わるまで、黒い塊は慢心と並んで律儀に座り続けた。



6月20日、KD社の二次面接の結果がメールで届いた。第一志望だったKD社。出版社最大手のとにかくすげえ企業…。

大学受験の合格発表並みに緊張しながらメールを開く。

あっさりと、祈られた。


B社も中旬に落ちていたし、漫画誌で有名なSY社は僕が漫画を読まないことを見抜かれ、落ちていた。

そんな中、例のS社は最終面接にたどり着くことが決まった。

週2日勤めているバイトで、暇を見つけてはS社の社員に就活の話をふっかけ、各フェイズの選考情報をかき集めていたのが実ったのだろうか。とにかくそこまで来た。初めての最終面接。6月最終週。ここで終われば就活も終われる。


控え室には4人の学生がいた。午前の部を考慮すれば最終に残ったのは恐らく10人だろう。エントリー数は2000近くらしい。慢心が唇の端を釣り上げて笑う。

他愛もない雑談をその4人としつつ自分の番がやってくる。

目の前の重厚な扉の先には輝かしい未来の自分が待っているはずだ。ノックを3回し、ドアノブに手をかける。


「……を、自分の言葉で、お願いします」

7人の役員の視線が一気に集まる。


おう、自己紹介だよな。

……え、自分の言葉…?

今まで面接でしてきた自己紹介って自分の言葉だったのだろうか?

そもそも"自分の言葉"ってなんだ?

言葉はそもそも自分のものじゃない。先人からの借り物だ……。


私は、と口を開いてから、噛み合わない歯車のように僕の口は空回りを続けた。今まで使ったことのない言葉がつっかえつっかえ口をつく。役員達が僕をどう見ていたかは御察しの通りだ。

パニックだった。平静を装っていたかもしれないが大パニックだった。こんなことは初めてだった。騙し騙し上手くやってきたはずだったのに。化けの皮を、剥がされた。

僕がインターン生だったこともあってか、質問の鋭利さが増しているようだ。期待の裏返しなのか?どのみち、僕はその期待を裏切り続けた。


その日のうちに結果はきた。しかもS社でのバイト中に。


短い電話だった。電話の主が喋り始めて15秒で要件は済んだとばかりにプツリと切られる。

何も考えられなかった。「内定自慢」のSNS投稿が頭の中でリフレインする。また追いつけない。置いていかれる。

その日が来るまで絶対、いけると思ってた。自分がいけないと嘘だ、とも。


残りの持ち駒は3つ。就職留年という言葉が頭をよぎる。

自分ならKD社だって夢じゃないと、夢見ていた。でもそれは夢だった。眠れる森の美女ならぬ、眠れる東京の凡人だった。S社で犯した大失敗によってようやく目が覚めた。


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7月篇に続く!