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WUNDERKAMMER

百頭女

2017.07.21 04:51


「ジェルミナル、私の妹、百頭女。惑乱、眠る木の葉とそっくりで幽霊たちとアリたちがいるだけで、ほとんど一人ぼっち。幽霊の上で、ただ一人生き生きと、美しく、自分の夢に彩られている。

血なまぐさい暴動のたびに恩恵と事実にあふれて生きる。微笑みは火、黒い霧と白い錆の形をして山複に落ちる。彼女の球体、幽霊は私たちと再会するだろう。

大気より軽やかで、力強く孤独、火山より力強く、軽やかで孤独、海よりも孤独な、いつも軽やかで力強い。

眠りながらほとんど微笑をうかべんばかり見えない眼をしている。

こころしたまえ、人の記憶にとどまる限り百頭女はかつて一度なりとも、再増殖の幽霊と関係したことはない。これからもそうはならないだろう。

むしろ、露の中に浸されて、凍った菫(すみれ)の花を糧とする。

両目のない眼、百頭女は秘密を守る。

百頭女とロプロプは野生状態にもどり、彼らの忠実な鳥たちの眼を、新鮮な木の葉でおおってやる

百頭女を見るだけで誰なのかわかる。だが君が説明を求めればそれだけで、私はその答えがわからなくなってしまう。」


これは物語から抜き出した百頭女に関する言葉です。

わかるようなわからないような、言葉にはできないけれど感じる事はできたような

脈略のない夢のようですね。若干悪夢寄りの。


「百頭女」この言葉、なんと読むのでしょうか?

もずおんな?ひゃくとうめ?ひゃくあたまおんな?

そんなことどうでもいいし、意味がないし、そもそも読むに当たり関係がない。

じゃあまぁいいか。そういうものか。

そう思える柔軟さがこの本を読むに当たり必要だなと思います。


この本の特徴はなんといっても「絵画」

使われている技法はフロッタージュ(擦り)、コラージュ。

絵で見せる文字、文字からにじみ出る絵。

文字で想像させ、想像を絵で加速させる。

絵を見てみるとわかるのですが不自然に浮いている箇所があり、それがまた想像をふくらます切欠になっています。


どうしても人って解読がしたくなるんですよ。

作者の意図を完璧に読み取りたくて、理解できない物を理解したくて、納得したくて。

ひとつ飛ばしで読んでみたり、意味を深読みしてみたり

「あれがあの隠語で、だとするとこれがああで・・・」

それで自分なりの解釈をして読み砕いた気になって、読書完了。


百頭女は「そんな事はどうでもいいし、答えはないから個人個人で自由な解釈をなさいな」

と女神のような寛大さをもち、私たちはその恩恵にあずかるだけです。

デジャビュのような文が出てきたり、

単語の様な珍美な絵と文がそこにはあり、読む人に何かを訴えているような黙っているような、

幽霊というあるのかないのかわからない存在を出したり「ロプロプ」という鳥人間?っぽい百頭女と同列らしい存在がいたり、球体=幽霊っぽかったり、イコールになる存在があると考えること自体が杞憂なのでは?と自問自答を繰り返す。考えていること自体が恥ずかしい、恐れ多い事なのかもしれません。

解釈をしたいという感情事態が愚かであり、百頭女はそこに存在するだけなのかもしれない。

あるいは作者にしかわからない作者にとっての正解があるのかも。


集中してなにかを考え込みたい時や、またただ単に考えに立体感を持たせずにただそこにあるだけの物を受け入れたい時に読むのにオススメですよ。