Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

『色の無い檻』

2017.07.22 07:35

 苦しいの....。


 傍から見たら、美しい飾り紐に縁どられた綺麗な住処。


 外から見れば、綺麗な世界。


 捕えられ、この美しい檻に閉じ込められた私たち。


 内から見れば、色の無い、寒々とした世界。


 生きている間は、一生此処から出られない。


 美しいべべを纏って、呼ばれた方へ泳いで行って、しゃなり、しなりと科(しな)を作って、パクパクと水面から顔を出し、束の間の不自由な自由を味わうだけ。


 遊女を金魚に例えるけれど、金魚も遊女によく似てる。


 此処から出られるのは、命の尽きた時。


 苦しいの。


 此処から出して。


 捕えられ、美しい檻に閉じ込められた私たちの叫びを知らぬあなたは、屈託なく、今日も私を呼ぶ。


 ねぇ、苦しいの。


 此処から出して。


 薄れて行く意識の中で、この世の初めに見た、紅い花の色が見えた。


 水の微かな揺らぎが、私を水面に押し上げて、あなたの掌から見えた束の間の青空、澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んで、私は茶色の新しい褥を敷いた檻の中でやがて融け、いつか、一滴の水になる。



photo/文:麻美 雪