2分
2013.03.12 18:09
突然の、「サヨナラ」のメール。
メールで別れを告げるなんて卑怯だと思った。酷い仕打ちだと思った。
会えば彼女は追いすがってしまうかもしれない。
彼は、もう少し続けてみようかと思ってくれるかもしれない。
会って別れを告げることを選ばなかった彼は、
会っても追いすがられたところで別れの決意を翻す気持ちはないから、メールだったのか。
それとも、会えばココロが揺れるから、メールだったのか。
彼女は、どちらにしても、会えば自分が惨めな思いをすると思った。
突然の「サヨナラ」のメール?
いや、彼女も気づかないふりをして
引き伸ばしていただけだったのだから。
先に言われてしまったのは、何だか悔しいけれど、酷い仕打ちなのではなく、
彼が悪者になるのを引受けてくれたのだ、と思うことにした。
「わかった」と、短い返信をしたあと、彼と過ごした間のメールの数々を消去する。
彼と過ごしたのはたったひとつの季節だったけれど、
一日何通もの往復があったそれらには、彼専用のボックス*を作っていた。
2分かかった。
長いのか短いのか、わからなかった。
彼と過ごした時間さえも、長いのか短いのか、わからなかった。
彼女のココロの中から彼が消去される日は、来るのか来ないのかも、わからなかった。
ああ、消去ではなく、何処かにうまく収めることができればいいな、と彼女は思った。
*注)昔話なので携帯電話は、今の仕様とは違っていました。