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Musilogue blog

Interview vol.1 藤谷一郎&栗原健

2017.07.23 15:10

——第1回目の鼎談ということで、まずは「Musilogue Music Showcase」を立ち上げたきっかけを教えてください。

野崎良太(以下、野崎) これまでJazztronikでライヴをやってきて、演奏してくれるミュージシャンをステージ上で紹介する機会はあったのですが、それはあくまで言葉での紹介だけで、短い時間しか確保出来ない。当然演奏しているのは僕の曲で基本的には僕がお願いした事を演奏してくれているのですが、この素晴らしいミュージシャン達を知ってもらえる機会がそれだけではもったいないな、という思いがありました。皆さんそれぞれ色々な活動をしているので。そこで、個々のメンバーがそれぞれ単独でライヴをするというよりはもっと企画性を持ったプロジェクトとしてライヴ・イベントを立ち上げ、例えば栗原君の事を気になっている音楽好きな方が、彼の演奏をより身近な距離感で聴けると様な事が出来たら良いのではと思いまして。そんな矢先、こういう企画が実現出来そうな楽屋(らくや)という良い場所にも出会い。ミュージシャンが1人でライヴを企画するには相当なパワーが必要だから、僕がバックアップしたり、周りの人にバックアップを頼んだりして、イベントとして盛り上げていこうと思っています。そういうイベントを最低でも2年間ぐらいは続けたいなって。

——これまでコンピレーションCDとして発表してきた企画の発展型でもありますね。

野崎 そう。とにかく僕が突っ走り型の人なので、やるって決めたらサッとやる性分なので。今回は自分に鞭打つためにもホームページも自分で作って、みんなに意思表示しました(笑)。

——ここ数年、野崎さんは周囲のミュージシャンの紹介に力を入れていますよね。

野崎 あまり知られてないですが、Jazztronik自体がもともとそういう意図でスタートしたユニットです。いつも一緒に演奏しているミュージシャンをフィーチャーして音楽を作る、というのがJazztronikをスタートした当初のコンセプトでした。活動していくうちに、だんだんと自分が前に出てくる事にはなっているけど、もともとはそういうプロジェクトでした。本当は、どちらかというと僕は裏方さんで、なんなら好きなミュージシャンを集め彼らに演奏してもらって、自分は客席で聴いて楽しんでいたいタイプです。「Musilogue Music Showcase」を通じて、夢がようやくカタチになるという感じもしますね。

——第1回の「Musilogue Music Showcase」に出演する藤谷一郎さん、栗原健さんがJazztronikに参加するきっかけは?

野崎 ノリだよね(笑)。

栗原健(以下、栗原) そうですよね。

——藤谷さんもノリで!?

野崎 藤谷さんとの出会いのエピソードはなかなか衝撃的ですよね(笑)。

藤谷一郎(以下、藤谷) Jazztronikが『Beauty Flow』を発表する時期に初めて会ったんですが、ライヴで会ったのが最初でしたっけ?

野崎 いやいや、レコーディングですよ。スタジオで初めて会ったじゃないですか。

藤谷 そうそう、その出会いが衝撃でしたね。当時、自分がやっていたユニットの曲をJazztronikにリミックスしてもらったんです。そんな縁もあってJazztronikでベースを弾かせてもらうことになり、レコーディングへ参加しました。初めてJazztronikのレコーディングをまかされて、こっちとしては緊張していたわけですよ。でも、スタジオに入ったら野崎さんは別の部屋で…。

野崎 取材を受けてましたね。

藤谷 で、最初に「やっといてください」って言われて(笑)。

野崎 (笑)。

藤谷 やっといてって言われても…。良いとか悪いとか、ここをこうして、とか判断してくれる人が居ないのって結構辛いんですよ(笑)。作曲者の好みを感じて弾くのが仕事なんですがその作曲者がいない。なので、こんな感じかなぁ…と手探りで弾いていかなきゃいけなくて…。

野崎 良い感じに仕上がってましたよ(笑)。

藤谷 本当にレコーディングが終わるまで野崎さんはスタジオに来なかった。それが一番最初のレコーディングだったので衝撃を受けましたね。

野崎 今ではそれが当たり前ですけどね(笑)。

藤谷 音楽的な相性が良かったんだと思います。僕が僕なりに良いと思うことを、そのまま良いと思ってもらえるから長いお付き合いになっているのかな、と思いますね。

野崎 そうだと思います。

——ライヴに参加するようになったのも自然な流れですね。

藤谷 メジャーから音源も発表して、名前も知られているミュージシャンのライヴなら、普通はいかにCDなどの音源で聴ける音を再現するかが勝負になるんですけど、Jazztronikの場合はライヴのノリが全く違います。

野崎 CDの音源をライヴでそのまま再現したいって思った事は、ほぼ無いかな。

藤谷 そこが逆にやりがいでもあるし、やりやすい。

栗原 音源を聴くとすごく上手いミュージシャンが演奏しているし、ソロもうまい。だから自分ももっと上手く、きれいに吹けなきゃいけない気もしたんですが、どうやらそうでもないな、と(笑)。ある程度まかせてくれるし、やって良いんだ、と思いました。

——栗原さんがJazztronikのライヴに参加したきっかけは?

栗原 僕は知り合いのトロンボーン奏者が呼んでくれたのがきっかけですね。正直、名前は知っていたけど音楽まではそれほど知らなかったんです。そんな状態でライヴに参加して、自分なりにやってはみたものの、さっきも言った通りきっちり吹けなかったので、もう呼ばれないんじゃないかと思いました(笑)。

野崎 その時のライヴで、1回もやったことない「SAMURAI」を、ステージでいきなりやったんだよね。

栗原 テンション的に楽しかったのは覚えているけど、吹いた内容は覚えてない(笑)。

藤谷 それ以来、「SAMURAI」をリハーサルなしでやるのがバンド初参加のミュージシャンにとっての登竜門的な儀式になったよね。

——ミュージシャンにとって、Jazztronikの曲ってやっぱり難しいんですか?

栗原 難しい!!

藤谷 むちゃくちゃ難しい。

野崎 僕もぜんぜん覚えられない曲があります。

——(笑)。それでは、ライヴ前は入念に練習して、練習して…。

藤谷 いや、そうでもない(笑)。

栗原 ていうか、前もって資料が来ない(笑)。

野崎 ビッグバンドの時は違うけど、ライヴでは個々のミュージシャンにまかせる部分も多い。どうしてもこういうラインを弾いてほしい、という時には言いますけど、細かく指示して結局は「自分の感じ」ばかりになってしまうのが嫌で。若い頃はライヴでも曲のかなりの部分をコントロールしていました。でも、今はコントロールしてもあまり意味がない、演奏している人の良い所を引き出せないと思っています。だから、みんなが納得いく所に終着すれば良いかな、と思うようになりました。

藤谷 野崎さんみたいなタイプは珍しいですよね。

栗原 Jazztronikに関わりはじめて、自分のアイディアが通る楽しさを知りました。

野崎 比べるのはおこがましいけど、マイルス(・デイヴィス)のライヴとか見た事あるでしょ?彼だって、ほとんど他のミュージシャンにまかせっきりのとかあるし(笑)。

栗原 肩をポンて叩いてどっか行っちゃう、みたいな。

——そこにJazztronikのジャズたり得る部分があるんでしょうね。

野崎 録音物は録音物。演奏はライヴだから、その時にしか聴けない特別な事を聴かせないといけない。お決まりの部分は20%ぐらいで、残りの80%ぐらいは新しい事をやったほうが良いと思っていて。みんなそれぞれ、僕が知らない現場でやってきた要素とかをどんどん持ち込んで欲しい。

——話は変わりますが、藤谷さん、栗原さんの音楽的なルーツとは?

栗原 僕が通っていた学校にはブラスバンドとか吹奏楽部がありませんでしたが、上の世代ではブルーハーツやメタリカ、同世代ではBOØWYが流行っていたりと音楽が身近な環境ではありましたね。そこで、カセットとかレコードで1950年代のロックンロールとかリズム&ブルースを聴いて育ちました。で、周りでバンドをやりだす人が出てくるんだけど、自分はそこでサックスに出会いました。そこである日、どうしても我慢できなくなって父に「サックスやりたい」って言ったら、親父「おれも若い頃はジャズ・ミュージシャンになりたかった」と言って、サックスを買ってくれたんですよね。ちなみに、最初はアルト・サックスだったんですけど、たとえばキング・カーティスみたいにロックンロールとかリズム&ブルースではバンドにテナー・サックス奏者がひとり入るんですよね。それがカッコいいと思っていたので、テナーにスイッチしました。で、高校卒業後は楽器屋さんとかの勧めもあって専門学校に通いつつ、慶応大学のビッグバンドサークルにも入って練習しました。以後はSUPER BUTTER DOGに誘われて参加したり、路上で演奏したり、The Roomでのセッションに参加したり、といろいろ活動していました。

——もしも好きなミュージシャンと自由にバンドを組めたとしたら、誰と組みますか?

栗原 三宅純さんみたいな人には憧れますね。自分で作曲して、自分で演奏できるというのがひとつの目標でもあります。いまはMusilogueでの制作を通じて作曲の勉強をさせてもらっている感じです。

野崎 栗原くんは衝撃的な曲を作ってくるからね。

栗原 そうですか?

野崎 コード進行がちょっとイラッとするような曲とか作ってくるからね(笑)。

栗原 聴く人をイラっとさせて覚えてもらうという独自の手法をとっています。

嘘です。(笑)。やっていくうちに上手くなると思います。

——おふたりが尊敬するミュージシャンは誰ですか?

栗原 やっぱりジャズメンが多いですね。アドリブがカッコよくて、佇まいがカッコよくてもちろん音色もカッコよくて。そしてグルーヴする。例えばジョー・ヘンダーソンの曲はクラブで聴いてもカッコいいし、良い音のオーディオで聴いてもカッコいいです。(ソニー・)ロリンズや(ジョン・)コルトレーン、ファラオ・サンダースはもちろんのこと、ガトー(・バルビエリ)とかも独創的で、プレイと作る曲がどっちもカッコいい人が特に好きです。それから、マシュー・ハーバートやジミ・テナー、Aphex Twin、ビョークなど、ジャンル問わず好きで、挙げだしたらきりがないです…。

藤谷 僕は究極の器用貧乏というか。あらゆる音楽がめちゃくちゃ好きで、逆に深く聴きこむというスタイルではないんですよね。ただ、一番最初に影響を受けたのは間違いなくビートルズです。それは今も変わらないかも。アレンジの良さ、メロディーの良さが衝撃的でしたね。

                        

——音楽にのめりこんだのはいつ頃からですか?

藤谷 とにかくませた子どもだったので、小学生の時にはもうお小遣いをもらって御茶ノ水のディスク・ユニオンに行って、そこで中古のビートルズのレコードを買って聴くような生活でした。あとは同級生に中学生の兄貴がいて、彼からイエスとかのプログレのレコードを借りたりして聴いていましたね。若い頃はとにかく色々なバンドでライヴをやって、メジャーデビューしてやるぞ!と意気込んで活動していました。最初はロックが好きだったんですけど、ベーシストとしても面白いリズムが強烈な音楽にどんどん好きになって、ラテンとか、ブラックミュージックにものめり込んでいくようになりましたね。

——リーダー・バンドをやってみたいと思うことはありますか?

藤谷 自分はそんなに「僕が僕が」ってタイプじゃないんですよ。縁の下の力持ちとしてバンドを支えている喜びを感じるタイプです。

——曲作りについてはどうですか?

藤谷 曲を作る脳とベースを弾く脳みそは違うから、ベースがカッコよく響く曲を書こう!というテンションにもならなくて、今度のライヴで演奏する曲作りでも、ちょっと迷いがあります。僕が書いてもベースが目立たない曲はいくらでも書けるんですけど、今回のライヴは自分がメインだから、曲作りにおいてもチャレンジですね。良い機会を与えてもらったな、と思っています。

——第1回の「Musilogue Music Showcase」ではどんな曲を聴かせてくれる予定ですか?

藤谷 考えなきゃ、と思っています。

野崎 考えなきゃ、と思っています。

藤谷 1回目にしてチャレンジングな企画ですよね。

野崎 栗原くんはリード楽器だから作る楽曲も想像がつくけど、藤谷さんがどんな曲を作ってくるかは僕にも未知数ですね。これから2人に参考音源を送って、考えてもらって、レコーディングします。「Musilogue Music Showcase」でライヴをやるチームでは毎回、音源も作ってもらいます。ライヴと連動させてアルバム単位で曲を作ってなるべく販売する、というのも「Musilogue」の活動の一部です。

——なるほど。

野崎 とにかく前例が無いので周囲に伝えるのが難しいのですが、レコーディングするもの、つまり録音物が無くなる事はまだないので、そんな録音物を生で演奏するとこうなるんですよ、とか、録音物はこういう風に演奏して作ってますよ、という所を表現できると良いですね。技術を録音物で残して、ライヴで人々の記憶に残すような演奏をお届けしたいと思っています。

——6月30日のライヴがどうなるか、いまから楽しみです。

藤谷 ハードル上げるのやめてください(笑)。

野崎 Jazztonikでも出来ないし、それぞれのソロ活動でも出来ない、そんな演奏が聴けると思いますよ。

藤谷 僕らにとっても、お客さんにとってもチャレンジです(笑)。みんなで一緒に頑張りましょう。

栗原 オー!!(笑)

藤谷 なんなら「しゃべり」の時間もけっこうあって良いのかもしれないですね。いい機会なので、ベースという楽器とか、ベース演奏に関する話をする時間をとっても良いかもしれませんね。

——ライヴは2部制なので、藤谷さん、栗原さんがそれぞれメインを張るライヴを約1時間ずつ楽しむことができますね。

藤谷 それは考えないようにしてるんで言わないでください(笑)。

野崎 2人にはステージの前に出てもらって、ライヴ中のMCの大変さを味わってほしいですね。僕はしゃべらないからね(笑)。

藤谷 うわ…。