イスラエル・パレスチナ聖地での衝突 中東の終わりの無い闘いに夜明けはくるのか
ますます悪化する中東情勢。イスラエルとパレスチナに加えてヨルダンもその渦に巻き込まれ、国際社会の深刻な問題として再浮上している。
1、金属探知機設置が大きな問題に拡大
事の発端はエルサレム旧市街のイスラム教聖地ハラム・アッシャリフ(ユダヤ教では「神殿の丘」と呼ばれている)で14日に起きた銃撃事件を受け、敷地入り口に金属探知機を設置したことにある。
パレスチナ人など、イスラム教徒は金属探知機の設置が聖地の管理を進める動きだとして反発し、衝突が日ごとに激化したのだ。
混乱はその後隣国ヨルダンなどにも拡大。大きな事件はイスラエル大使館で襲撃事件が起きたことである。事態の早期収束を図るため、イスラエル政府は25日未明、金属探知機の撤去を決定。聖地の警備を「先端技術を使った検査機」で代替すると発表した。
2、終わる事のない闘い
しかし、パレスチナや、聖地を管理するヨルダン政府管轄下のワクフ(イスラム教宗教協議会)は、銃撃事件以前の聖地の状態に戻すべきだ」と主張。パレスチナ自治政府のアッバス議長は25日夜、パレスチナ指導部の会合で、「あなたたちを支持し、誇りに思う。私たちの聖地を損なおうとする者への正当な反応だ」として一連のイスラエルへの反発を支持した。さらにイスラエル当局との治安協力の一時停止を継続すると発表し、両者の関係はまたもや悪化の一途を辿ることになった。
イスラエルとパレスチナ。その問題はお互いの聖地が同じ場所にあるがゆえに混乱と衝突を何度も繰り返してきた。共存こそが最大の解決テーマであり、第三国を含めた中東和平交渉を経て一時は両者の関係が良い方向に進展するかに思えた。
しかし時代は逆戻りする運命なのか。キリスト・ユダヤ教徒とイスラム教徒の闘いは現代もなお、続いている。それに拍車をかけるように、イスラム教徒であるトルコのエルドアン大統領もイスラエルが聖地を奪おうとしていると主張。世界のイスラム教徒に向け、「全員がエルサレムを訪問すべきだ。みんなでエルサレムを守ろう」と呼び掛けている。
3、政敵イランが早速反応
長年、イスラエルの政敵として過去に何度も対立してきたイランが早速この問題について反応した。イラン政府ではなく、イランメディアの主張だが、「イスラエルが、地域や世界の脅威の源であることは明らかである。アメリカ大使館のテルアビブからエルサレムへの移転、パレスチナ領土の占領と入植地の拡大、占領地における礼拝の時刻を知らせる放送の禁止など、これらはアメリカ陰謀と合致する」と報じている。
米国とイスラエルが憎いイランならではの主張である。しっかりと背後に構えているであろう米国も名指しで批判している。ユダヤ人国家、イスラエルとの同盟にある米国は今後も中東和平について関心を示すだろうか。
トランプ大統領はイランに対して強気の姿勢を崩さない。新たな制裁を模索しており、実行に移すのは時間の問題である。イランも対抗姿勢を崩さず、米・イランの問題も急進展を見せている。これが中東問題特有の現象であり、国家間同士の対立はあらゆる周囲国を巻き込み、外交戦略に利用するのが常である。イランの動きも米国の動きも、最後には糸で繋がる。それが中東情勢を見る上でのキーワードである。
4、ムスリムの生きづらい世の中であることは間違いない
筆者はキリシタンでもなければ、ムスリムでもない。しかし客観的に、公正に判断して、現状の世界はムスリムが生きづらい世の中であることは間違いない。
一般的なイスラム教徒は世界平和を願い、助け合い精神を大事にしていると言う。確かに街で見かけるムスリムは礼儀正しく、好印象だ。しかし、一部の過激派、聖戦を信じる暴力的な連中が世界中にイスラム教が悪という印象を植え付けたのだ。
ただ、逆に言えばイスラム過激派に命を狙われる、キリスト教徒や欧米各国、ならびにその同盟国で生きる我々も生きづらい世の中であるとも言える。
今、各地で起こるテロ攻撃の根本的な理由は宗教対立であり、その縮図がイスラエル・パレスチナ問題であることを、我々は頭に刻んでおくべきだろう。
Mitsuteru.O