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勉強を教える人、仕事を教える人の条件

2017.08.01 02:43

子どもが勉強で伸び悩むと、「どうしてできないの」と怒る親がいます。

これは論外。

できないことを指摘しても改善されません。

覚え方を変えるきっかけを作る。

覚えやすい環境を整えてあげる。

子どもだって勉強ができないのは自慢にならないのは分かっています。



子どもを叱る親はきっと、勉強の成績が優秀で何も困ったことがなかったのでしょう。

だから、子どものつまづきを理解できない。

そうでないとしたら、自分のことを棚に上げる情けない親です。


勉強できるかどうかは親次第。

私がテレビ局時代に聞いた話を少し紹介します。


彼は優秀な記者でした。超有名大学を卒業して性格も良い。

いつも興味深い取材をして、私を何度か驚かせました。


その彼がこう言いました。



僕は小学生まで本当に勉強ができませんでした。

自分でも分かるほど、本当にできなかったのです。

母親のおかげで勉強ができるようになりました。

夕食後のテーブルに私と弟を呼んで、

ずっと勉強を見てくれたのです。

毎晩です。

僕の家には勉強机がありませんでした。

食事をするテーブルが勉強机の代わりでした。

毎日、毎日、母親に丁寧に教えてもらったことは忘れません。


彼は慶応大学の出身です。

小学生の時に全然勉強ができなかったのに、

優秀だと評価される大学に難なく入学、卒業しました。


これが、勉強できるかどうかは「環境だ」という理由の1つです。

仕事も同じです。

一流企業に入った新入社員がよく、

先輩から「なんでできないのか」と怒られる話を聞きます。


私が入社した北海道新聞でもよく、

先輩が後輩を怒鳴りつけている場面を目にしました。



私が本社社会部の記者だった時、

ユニークで優秀な先輩記者と出会いました。

私が連載の企画記事を書くことになり、

その先輩記者が「デスク作業」を担当しました。

デスク作業とは、記事の手直しです。


その先輩の質問が変わっていました。


アラカワ、その時の店内はどんな匂いがした?

アラカワ、その人の手を握ってどんな感触だった?

アラカワ、その店にどんな音楽が流れていた?


先輩がデスクした原稿を読んで驚きました。

現場にいた私よりも分かりやすく描写していました。



だから、私は「マスコミに取材される方法」のセミナーで

プレスリリースの書き方を教える際に、

「記者の頭に映像を流しましょう」と言うのです。

その方が伝わるから。

記者が取材したくなるように心が動くから。


その先輩記者からこんな言葉も聞きました。



後輩に「仕事ができない」と怒るヤツはダメだな。

仕事を教えられないのは自分だと言っているようなものだから。

アラカワもそう思うだろ?

ほら、周りを見ろよ。

アイツもアイツもバカな先輩記者だぞ。




相手に聞こえるほどの声で話すので驚きました。

新聞社らしい、新聞記者らしいとも言えますが…。

その先輩記者は後に論説委員になり、

新聞の「顔」でもある一面のコラムも担当しました。



子どもの勉強に話を戻します。

きょう、こんなブログを読みました。

名古屋で学習塾「心学塾」のステップアップを経営する

皿井啓之(さらい・ひろゆき)さんの記事です。





大手の進学塾で講師を務める多くがアルバイトの大学生です。

私のテレビ局時代の後輩と違って、

勉強でつまづいたことがない大学生が多いかもしれません。

そういう人には分からないのです。

つまづく子どもの理由が。

寄り添うことで成長する子どもの気持ちが。



元新聞記者、テレビ局デスク

メディアコンサルタント・荒川岳志