グアテマラシティの国立宮殿(旧大統領府)
グアテマラシティの旧市街、中央公園の北側にある国立宮殿に行ってきました!ここはグアテマラの歴史と文化が凝縮されたような場所で、本当に見所がたくさん!国立宮殿を見て回れただけでも、グアテマラシティにわざわざ来た甲斐がありました!
高層ビルなど近代的な建物が並ぶグアテマラシティで、スペイン植民地支配の面影がひと際目立つ国立宮殿は、独立政権下で囚人たちの労働によって建てられたそうです。スペイン語では「ナショナル・パラシオ・デ・ラ・グアテマラ」と呼ばれています。
この荘厳な建物は、1936年から1943年にかけて建築された旧大統領府で、その当時、最高の技術を持つ建築家、芸術家、技術者を集めて作られました。ルネッサンス、ネオクラシック、バロックなどの建築様式を融合させた優美なコロニアル建築で、グアテマラ建築の最高傑作と評されています。
この旧大統領府の建物は、100年弱の時を経た現在、グアテマラの中央政府庁舎として行政の中心としての役割を担っています。この建物のすぐ裏手には、新しい大統領官邸があります。残念ながら、こちらは見学ができませんでした。ちなみに中央公園を挟んだ西側には、大きな国立図書館もあります。
国立宮殿では、内部の見学も可能です。毎週火曜日から土曜日まで、午前9時30分から午後4時まで、毎日30分ごとに内部を見学できるツアーがあり、それぞれガイドがつきます。入場料は外国人のみ40ケツァール。ドルでの支払いはできません。
本当は英語とスペイン語のガイドツアーがあるそうですが、私が訪れた時は英語のツアーがなく、スペイン語しかありませんでした。なお、国立宮殿専属のツアーガイドなしに、単独で内部を見学することはできません。
私は、スペイン語はできないのですが、内部を見学するためスペイン語のツアーに参加することに。意外にもいくつかのグループがツアーに訪れていましたが、私が外国人だったためか、ラッキーなことに私ひとりのためにガイドさんが案内をしてくれました。
国立文化王宮の内部に入ると、まずはじめに正面の「平和の中庭」にある「平和の像」のオブジェに案内をされます。両腕は、グアテマラ人の「統合」を表しています。
スペインによる植民地支配の歴史を乗り越えて、国立国家として歩みを進めるグアテマラですが、マヤの先住民とスペインからアメリカ大陸の開拓にやってきた征服者との間には熾烈な戦いが繰り返されたわけで、「平和」は新しい国づくりの大きな目標であり、手段でもあります。
この像のそばには、2004年にグアテマラを訪れたダライ・ラマが贈った「平和の火」が灯されています。36年間も内戦が続いたグアテマラで、今の平和が二十四時間続くようにとの願いが込められています。
国立文化宮殿の文化的価値のひとつが、グアテマラの画家アルフレッド・ガルペス・スアレスの巨大壁画です。壁画は吹き抜けの階段を上がるホールの玄関上部に三面に渡って立体的に描かれています。宮殿正面のエントランス2箇所に、それぞれ巨大壁画があります。
壁画の大きなテーマは、マヤ文明に起源を持つグアテマラ先住民の生活文化と、中世に始まるスペイン植民地時代の歴史と現代社会です。歴史の光と影を乗り越えて、スペインの植民地支配から独立したグアテマラ国民のアイデンティティを描写しています。
下の壁画の中心部分に描かれているのは、スペインからもたらされた近代文明と科学技術。古代マヤ文明への誇りと帰属意識に、決して好ましい形での始まりではなかったであろう近代の西洋文明との出会いが、描かれています。
右上に見えるカトリック教会は、アンティグアにあるラ・メルセー教会です。アンティグアでもひと際美しく、中米最大級と言われる噴水跡(18世紀の地震で崩壊)があるようにグアテマラのカトリック信仰に大きな役割を果たして来たラ・メルセー教会ですが、グアテマラシティにも分教会となるラ・メルセー教会が置かれているそうです。
なお、もうひとつのホールに描かれた壁画には、グアテマラが経験した二つの大きな戦いと、セルバンテスで知られるスペインの傑作文学作品「ドンキホーテ」も描かれています!
壁画を並んで、大きな見所となっているのが、レセプションやカクテルパーティーなどが行われるホールのステンドグラスとシャンデリア。国立宮殿には、ここともうひとつの大ホール(こちらは、ヨーロッパのオペラハウスのような美しいホールですが、現在は修復作業中のため見学ができませんでした!)にいくつかのシャンデリアが飾られていますが、すべて現在のチェコ共和国からボヘミアングラスをわざわざ輸入して作られたものだそうです。
そして壁にはフリオ・ウルエラ・ヴァスケスやロベルト・ゴンザレス・ゴイリらによるステンドグラス。暗闇にスデンドグラスを通して鮮やかな光が差し込む姿は、実に優美で、シャンデリアの豪華さがホールに華やかさを添えています。
建設当時、スペイン系住民、メスチーソやラティーノと呼ばれる混血の人たち、そして先住民の間には、今よりももっと明白な社会的、経済的格差があったでしょうから、全国民が豊かな生活をしていたわけではない状況で、そうした不満の声を抑え混んでここまで豪華な大統領府を建築できたということは、非常に強力で絶対的な独裁政権が存在していたことがわかります。
建設から100年近くが経ち、時代とともに建物の役割も変わった今、こうしてグアテマラの歴史と文化を知ることができる重要な文化財として完全な状態で保存維持されているのは、観光客にとって非常に大きな魅力です。グアテマラにとっても文化資源を大切に保管していくという意味で、大切な施設なのだと思います。
国立宮殿は建築が絢爛豪華で、息を飲むほど美しいので、スペイン語がわからなくても、ツアーに参加して内部を見て回るだけで十分に楽しめます。特に、大迫力の壁画は見事で、グアテマラシティを訪れた際には必見です。
今回のツアーで気づいたのは、私自身スペイン語はわからないにもかかわらず、この10日間で少しだけ聞き覚えたスペイン語の簡単な単語と、アンティグアなどで見聞きしたグアテマラ全体の簡単な歴史、英語に近い発音のスペイン語の単語、視覚から飛び込んでくる情報とガイドさんのジェスチャーなどで、とても不思議ですが、結局6割くらいは理解できた気がします。ここは本当に来てよかった!