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『ポリコレの正体』に見るLGBTのホンネ

2021.12.20 02:50

「レディース・アンド・ジェントルメン、ボーイズ・アンド・ガールズ」

もしあなたが、このようなアナウンスに違和感を覚えなければ、批判の対象になってしまうかもしれない。
いまだにピンと来ないという方は、12月に発行されたばかりの『ポリコレの正体』(方丈社)をぜひお読みいただきたい。


著者でノンフィクションライターの福田ますみ氏は、国内外で猛威を振るう「ポリコレ」(※)の問題を深く掘り下げ、「ポリコレを現状の流れのまま無批判に進めることが、公平で平等な社会づくりにつながるのか、あなたや家族、友人たちや社会を幸福にしてくるのか?」(まえがき)と、読者にポリコレの問題とその本質について「考え始める契機」を提供している。

※ポリティカル・コレクトネスの略。「政治的正しさ」などと訳される。


冒頭のアナウンスについても本書で言及しているが、東京ディズニーランドやディズニーシーでこのアナウンスをすでに取り止めるなど、「ご法度」と考える企業や団体も少なくない(代わりに「ハロー・エブリワン」を使用)。


このようなことで驚いてはいけない。現在米国では「ポリコレの弊害」によって、ある優秀な高校教師が「女性から男性になった生徒に対し、『she』『her』『hers』を使った、ただそれだけの理由でクビに」なってしまうというからまた驚きである。さらにリベラルな都市として知られるニューヨークやカリフォルニアでは、このような「代名詞プロナウンスを誤って使ったら懲役が科される」というのだから唖然とする方も多いのではないだろうか。


なぜ米国社会がこのようになってしまったのか?
その深層はぜひ本書をお読みいただきたいが、本書ではポリコレの典型的な主題である、LGBT(性的少数者)についても2つの章を割いて考察している。その中で印象に残ったエピソードを、“LGBTの本音”という観点から3つほど紹介してみたい。


①レズビアンカップルに育てられたゲイの教授の本音

以下は、米国でレズビアン(L)のカップルに養子として育てられたという「あるゲイの教授」の言葉だ。

母親が2人いる家庭に育ったことで、相当精神的ダメージを受けた

そのような家庭だったから、その影響で自分はゲイになってしまった。だから、ゲイやレズビアン同士のカップルが養子縁組できる制度はおかしい


彼はこのように主張したことによって「大学で村八分にされてしまった」という。

日本でも同性カップルによる養子縁組は認められているが、このような当事者(養育される側)の主張などを踏まえ、行政はもっと真剣に検討するべきではないだろうか。


②「LGBT早期教育」を受けた幼稚園児の叫び

次は「LGBT早期教育」に対する幼稚園児の悲痛な叫びだ。

米国では幼稚園などにトランスジェンダー(T)の女性や男性が絵本の読み聞かせに来る。そこで変わったキャラクター(紫色のペンギン)を用い、こうほのめかすという。

「このパープルペンギンは男でもないし女でもない。このペンギンさんのように、あなたたちも自分を男の子だと思っていても、女の子かもしれないよ」と(女の子には逆のことを語る)。

そう聞かされたある幼稚園児は、「私は女の子だと思っていたけど、男の子になっちゃうの?」と、親に怯えながら泣いて訴えたという。米国のポリコレ事情に詳しいジェイソン・モーガン氏(麗澤大学准教授)は、「幼児虐待に等しい行為です」と憤りを露わにする。しかし、米国ではこのような偏った教育にも批判が許されないのだ。


「多様性」が声高に叫ばれる昨今、LGBTに対する異論は多様性の内に含まれないように感じられる。福田氏も「多様性とは、本来そうした異なる価値観の人々をも包摂し、その寛容の精神で共存することではないのか」と疑問を呈する。


③「LGBT」自体を疑問視する当事者の本音

当事者の本音を紹介した4章で取り上げられた4人の内で、ゲイの「かずと氏」の声は特に私たちに多くの示唆を与えてくれる。「北陸地方のとある街に住む」というかずと氏は、40代半ば(当時)。「私はLGBTとは無縁なホモにすぎない」と語り、次のように本音を吐露している。


気がつけば、当事者とは無縁なところに、LGBTなんていう世界が完成していた。一緒に暮らす相方も知り合いの若いゲイたちも、誰ひとり自分をLGBTとは思っていません同性愛者=弱者、不幸、なんてとんでもない。同世代のノンケが、家のローンだの子供の教育費に頭を悩ませているのに比べると、生活ははるかに楽、ホモでよかったと思います


また、今年注目を集めた「LGBT理解増進法案」についても、インタビュー当時から関心がなかったようで、「特に不便を感じていないんですよ。そういうことは別世界の話ですね。そう考えているゲイは少なくないと思いますよ」と漏らす。


そして、最後の一節が何とも印象的だった。

かずと氏の今一番の願いは、LGBTブームなるものが一刻も早く終息することだ

* * *

以上は、本書のほんの一部であるし、LGBT当事者のごく一部の声に過ぎない。ただ、いわゆる「LGBT活動家」が、必ずしも「普通の性的マイノリティの本音を代弁してはいない」ということは確かだろう。日本における2010年代後半の過剰とも言える「LGBTブーム」を冷静に把握し直すためにも、本書が役立つに違いない。


ちなみに、本書の5章【事例研究】では、このサイトの発起人兼管理人で、埼玉県春日部市議の井上英治氏についても取り上げられている。


さらに、本書ではLGBT問題にとどまらず、ポリコレの思想的な背景をはじめ、BLM(ブラック・ライブズ・マター)の不都合な真実などにも迫っており、読み応え十分だ。


かつてブッシュ元大統領がポリコレを推進する人々を「多様性の名のもとに多様性をつぶしている」と批判したように、昨今の風潮に危機感を抱いている方にはぜひご一読いただきたい。


『ポリコレの正体』目次

まえがき

1章 ポリコレは、全体主義への一里塚

2章 日本のポリコレは、「反日・日本人」養成所

3章 BLMの不都合な真実

4章 LGBTを‟弱者ビジネス”にしょうとする人々

5章 【事例研究】LGBTイデオロギーとどう向き合うか?