地質|自然環境|大洗町史(第1章第3節)
大洗町の地質(『大洗県立自然公園地質図』より)
第1章 自然環境
第3節 地質
1.地質のアウトライン
大洗町の古生代の地層は「大洗層」と呼ばれ、台地の下半部および大洗海岸に露出している地層である。これは、おもに礫混じりの礫岩より成っていて、砂の固まってできた砂岩や、粒子の細かい泥が固まってできたシルト岩の薄い層をはさむ地層である。地層の厚さは約1000メートル以上に達する。
大洗層の礫岩は、おもに20センチメートル以上でなかには50センチメートル以上のも混じっている。礫岩は円みをおびており、雑然としている。礫は粘土が固まってできた比較的軟らかい頁岩(けつがん)、砂が固まってできた砂岩、酸性の深成岩である花崗岩が多く、チャート(非結晶質または肉眼的には結晶の見えない石英の細粒からなる珪質岩で、珪酸分が生物起源のものをいう。日本の古生界に広く分布する岩石)やホルンヘルス(砂岩や泥岩から接触変成作用によってできた岩石)も混じっている。また、火山岩類に入る流紋岩、安山岩や雲母片岩の礫も混じっている。礫岩の基質は砂である。この地層には約10センチメートルくらいの礬土(ばんど)(酸化アルミニウムの含有量の多い頁岩)がはさまれており、上部ほどその数が多くなっている。特に那珂川の南岸低地には植物の破片が多く含まれており、炭化樹幹を含む暗灰色の砂質シルト岩や砂岩の厚いはさみがみられ、多くの植物化石が出土する。大洗層より出土する植物化石はコケ類、ソテツ類、毬果類(きゅうかるい)(マツ・スギ・ヒノキ・モミ)単子葉類(イネ科・ユリ科・ラン科など)や双子葉類(ヘチマやアサガオ)などで構成されている。
磯浜地域深井戸柱状図
(『大洗県立自然公園計画調査報告書』より)
2.洪積世時代の地層
地質年代で洪積世とは、地質時代の最後の区分で第四紀の前半である。この時代は氷河時代を含み、現在の自然環境の成立に直接関与した気候、海水準などの変化と地殻変動、火山活動があり、人類が出現した。地層は見和層・河成段丘礫層・関東ローム層・沖積層に区分される。
(見和層)
大洗層の上には、見和層の上部層が厚さ10センチメートルくらい重なっている。この地層は砂を主とし、下部層は粒度が均質で、地層中に黒雲母の多い細粒砂を主とすることが多い。上部層は縞目が発達した細かい礫混じりの粒砂である。地層は一般に砂鉄混じりである。砂層中には何枚かの薄い礫層がはさまれ、ときには、10センチメートルから15センチメートルの厚さに発達することがある。この礫は砂岩・チャート・花崗岩などを主としている。
磯浜地域地層序概念図
(『大洗県立自然公園計画調査報告書』より)
(関東ローム層)
関東ローム層は、関東地方の台地、丘陵の上を広く覆う火山灰土で、関東火山灰層または関東赤土層ともいい、俗に赤土ともいう。富士山・箱根山の火山灰が堆積したもので、粘土、泥、砂をほぼ等量に含み、安山岩、玄武岩から成り、厚さは5メートルから15メートルくらいのものが多い。大洗町では厚さ2メートルから4メートル程度である。鹿沼軽石層より上位の部分は下位に比べて明るい褐色をしている。 この塊状で均質な風化火山灰層は1メートルから1.5メートルくらいである。鹿沼軽石層より下位のローム層は、より暗い褐色をして、ややしまっている。厚さは1メートルから2メートルくらいである。南側では、東京軽石層に相当する軽石のレンズ状の薄い層が、鹿沼軽石層より約1メートル下の層準にみることがある。この層準の下位には30センチメートルから50センチメートル程度のローム層がみられるが、著しく粘土化しており、暗褐色をしている。
(沖積層)
沖積層とは地質時代の新世代第四紀の後期、ほぼ一万年前から現在までで、考古学上の新石器時代以降にあたる。この時期に流水や風で運ばれて低地に堆積した運積土が沖積土で、礫・砂・泥・粘土などから成り、沖積平野を形成している。
涸沼川が流入する西方湖岸付近には、水面下に砂を主とした三角州が形成されている。また湖底にはシルトの堆積がみられる。涸沼は那珂川との合流点付近で、那珂川の自然堤防によって涸沼川の谷がせき止められて形成されたものである。ここの沖積層からは貝化石が出土する。
―より上はローム層・下は見和層(大洗町大貫)
本書について|もくじ
出典|大洗町史(通史編)、昭和61年3月31日発行
発行者|大洗町長 竹内 宏
編集者|大洗町史編さん委員会
発行所|大洗町
印刷|第一法規出版株式会社
登録者|金澤 真里(ONCA)