【岡山rep】「10年で漏れ出す放射能」- 末田一秀氏(核のごみキャンペーン関西)
6/3~6/4に開催された、「高レベル放射性廃棄物の最終処分—どうする!原発のゴミ 全国交流会」の基調講演の内容をまとめました。
“最良の条件”のもと、漏れだすことを前提に安全性の語られる地層処分
「1年間原発を動かすと、30本の高レベル廃棄物(ガラス固化体)がつくられる計算です(100万キロワット1基分の場合)。その処分地の適地提示では、原子力の縁がなかった地域も適地となります。」
地層処分は、放射性物質が「漏れてくることを前提」で進められています。
地表まで漏れ出すのに何万年もかかるとして、そのころには放射能も低減されているという理屈です。
しかし、事業者の公表したレポートを読んで「一番都合のよい条件で“安全です”と言われても納得できない」、と言っている方もいます。
「最大被ばく量は約80万年後の0.01マイクロシーベルトだからはるかに危険性は低い」と推進派は言っています。本当にそうでしょうか。条件が下回れば、状況も変わるのではないかと考えます。
条件1)安定した地層があるのか
まず、日本には安定した地層がないのではないか、との疑問があります。
50kmよりも浅い地点での震度4以上の地震が起こる頻度をみると、日本列島は地下が安定していません。数万年の間に、新しい断層ができるのではないかとも考えられます。東日本大震災後にも、地下水の流れが変わって急に温泉が噴き出した地域もありました。こんなことが地層処分場の近くで起こらないと限らない。事業推進側も、地震による地層の変化等については認識しています。
条件2)津波は来ないのか
次に、50年以上続く操業期間中に輸送中の高レベル廃棄物が津波に襲われたらどうでしょう。六ケ所村から港へ運んでいき、地上で陸送し、処分場についたらオーバーパックします。現在、沿岸部から20km以内のところに処分場を作るとのことですが、津波が来たらどうするのでしょうか。
条件3)「ガラス固化体」はすべて“良品”か
最後に、不良品の「ガラス固化体」から、放射性廃棄物が漏れ出す可能性がある点を指摘します。
ガラスは非常に安定してるので何かがにじみ出るわけではない、というのが事業推進派の意見です。しかしこれは技術的にうまくいった時を想定してのこと。
ガラス固化体を生成する際には、高レベル放射性廃液をガラスと混ぜて溶かし、キャニスターに入れます。しかし六ケ所村の再処理工場のアクティブ試験を見てみると、ガラスと溶けたようなドロドロしたものではなく、さらさらと流れて行ったり、ぼとっと落ちたりする光景が見られました。しっかり混ざっていないまま、キャニスターに流れている恐れがあるのです。
これまで117本が生成されていますが、しっかりガラスと混ざったものは54本で、その他は「非定常」「逸脱」と分類される不良品です。
再処理工場はまだ試運転段階なのですが、今後このような不良品が出てこないとは限りません。
ガラスと混ざっていなければ、放射性物質だけが地下水に流れ出す可能性があります。
なお、日本は過去に、ラアーグやセラフィールドの再処理工場に日本の使用済み核燃料の再処理を委託してきました。そこで生成され日本に返還されてきた高レベル廃棄物はどうなっているのでしょうか。それは、日本のようにモニターで監視をしていないからわかりません。だから、「ガラスと混ざっているから溶け出さない」と言っているけれども、それは確証が得られないということになります。
たった10年で地表に到達する?TRU廃棄物とは
TRU廃棄物→「超ウラン元素」を含む放射性廃棄物で、いわゆる「低レベル放射性廃棄物」に分類されるもの。「TRans-Uranic waste」の略。再処理やMOX燃料加工の時に発生。
資金管理センターのWebサイトでも相当詳しく説明されているので参照
(http://www.rwmc.or.jp/disposal/tru/1-1.html)
「実は地層処分で埋められるものは高レベル放射性廃棄物だけではなく、このTRU廃棄物も埋める計画です。
再処理工場のフィルターに含まれているヨウ素129が問題で、半減期が1570万年あります。原発事故のヨウ素131は半減期8日。どちらも甲状腺にたまってしまう性質があるものです。再処理工場で使用されたフィルターはヨウ素129が付着しているので「TRU廃棄物」となって地下に埋められます。
でもその埋め方については、ドラム缶につめてコンクリートで覆うだけ。すぐに地下水と接触して錆びて、溶けだしてしまう恐れがあります。
高レベル放射性廃棄物で想定しているのは、「放射性物質が漏れだしても岩石に吸着するため地表まで到達するのに何万年もかかるから安心」ということ。けれども、TRU廃棄物に含まれるヨウ素129は岩石に吸着しません。電気事業連合会の評価結果レポートによると、埋めてたった10年で、TRU廃棄物が地表に到達すると推計されているのです。」
さらに
「NUMOの派遣事業で勉強会を開催した際、NUMOの技術部長が来てくれたため、TRU廃棄物について説明を求めました。上記について「TRUに関しては技術的な課題と認識している」と言いました。「すると、“天然バリア”は存在しないではないか」と問いかけると、「仰る通りです」と答弁したのです。」
NUMOの担当者でも課題を認識しているのに、公開のシンポジウムの際には争点にならない。
だからこそ、「市民側からも、TRU廃棄物に関する率直な意見・質問をNUMOに投げかけることが必要」と末田さんは仰っていました。
事故について
今回の末田さんのお話の中では、「坑道の水没や、高レベル廃棄物の落下等の事故が考えられる。」といいます。
「世界で唯一稼働している深地層処分場は、一つしかありません。核兵器処分のためにできたTRU廃棄物の処分場。ここでは地下655メートルに廃棄物を埋めています。しかしここで2014年に、火災事故が起こりました。岩塩を掘り進んで外へ運び出すための車が大変古いものだったので、故障し炎上してしまったのです。
“事故が起こらない”というのは安全神話。TRU廃棄物を埋める場合は、こうしたことも考えないといけないでしょう。」
これからどうなっていくのか…?
「政府は、「4万本規模の処分場」を計画していますが、そうした理由は、コストが一番安いから。しかし日本は今、プルトニウムを約48トンもっていますが、これから原発をまた使い続けるとプルトニウムは400トン~500トン生産される想定になります。
使い道の無い余剰プルトニウムは持てず、これだけの量の再処理はそもそもできないでしょう。ガラス固化体での処分計画は、絵に描いた餅です。」
「民主党時代に作った「革新的エネルギー・環境戦略」では、直接処分の研究を初めて打ち出しました。
ただ、使用済燃料の直接処分は容量や放射能も増えます。直接処分では、1000年後の有害度は8倍になるので、その点も考慮しないとなりません。
さらに、MOX燃料をどういう風に処分するのかは、政府も説明できていません。六ヶ所村再処理工場では、使用済みMOXは再処理できません。プルサーマル(高浜・伊方)で炉を動かした後、どうするのか。政府側も説明できていないのです。」
ちなみに、「コストに関しては再処理しないほうが安い」とのこと。末田さん個人としては、「地層処分以外の管理方法を考えるべき。暫定的に地上に保管することに、テロの心配があるのは当然。地上か浅い地下で管理するのがと良いとは思っているが、議論を続けていきたい。」としています。
参考情報