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草原のコトノハ

産声

2017.08.16 06:46
終戦の日に産声をあげた命があった。

暑苦しい蝉とラジオの声の前に、

敗北の悲しみだったろうか、

終わることへの混乱だったろうか、

安堵だったろうか、

産声をとり囲む空気は。



黒い瞳は、そのどれをも拒まず、

大きく開いて見ていた。


拒んでいたのは誰?ダレ?

他を知るのを拒み、

他を受け入れることを拒み、

受け入れることで

自分に影響が及ぶのを拒み、

蟹の甲羅のように、

本当の思いを閉じ込めて、

若い瞳の色を変えてしまった

正体はナニ?



終戦の日に産声をあげた命があった。

黒い瞳が見ていたかったのは

繰り返される命の営みの中にある

希望の光だったはずだ。

誰もに用意された自身の人生を

味わう喜びのはずだった。


歳月が過ぎて、今は…

戦後なのか?

それとも

未来の戦前なのか。


あの日の産声が

静かに問う