大学カリキュラムへの導入
2021年、初めて大学教育カリキュラムに臨床美術を導入していただきました。
看護学部看護学科4年生の選択科目「補完・代替医療」、2年生の必修科目「老年看護学方法論(アクティビティケア)」の2科目です。
国家試験前の4年生17名、選択科目では最多となる履修人数で、新しい取り組みに対する学生への興味と期待感を感じる中での開講となりました。
学生には、臨床美術を実際に継続して受ける側(ケアされる側)に立ち、感じることを大切にすること、そして、学生同士で作品を鑑賞し合うことで共感し合い、互いに違う個性を認めることを通じて、医療従事者(ケアする側)として必要である他者への共感力や個を受容する力、傾聴力、五感を通して「感じる心」を高める感性教育を目的としました。
4年生選択科目は全5コマで、平面から立体まで表現技法がそれぞれ違う5つのアートプログラムを実施しています。(全5回:紙やすりに描く色面デザイン・さつまいもの量感画・秋のアナログ画・人参のネガポジ画・立体造形やわらかい形)
2年生の必修科目は1コマで、大学の周辺にある公園から落ち葉を拾ってきてもらい、「落ち葉と銅箔のレリーフ」を制作しました。
↓ 鑑賞会の様子です。
↓ こちらは2年生77名、しーんと集中して静まり返った瞬間です。
毎回、感じたことや気付きを作品画像付きでレポートにまとめ、作品へのコメントを私が返すという方法で、短い期間でも、一人ひとりとコミュニケーションを取るようにしました。毎回のレポートからは、学生自身が素直に感じたこと(苦悩、喜び、変化、楽しみ)を知ることで、私自身も声かけの仕方、見守り方も工夫することができました。回を重ねるごとに、学生の中で変化が見られるようになっていきました。
《以下、学生の感想をご紹介します。》
・みんなと語り合いながら作品を作る過程が一番楽しく感じることができました。
・普段生活していて味わえない感情を体験でき、ものすごく楽しかったです。5回があっという間でした。本当に補完代替医療の授業をとって良かったと心から思いました。
・普通の美術とは違い、作品を作ることでリフレッシュ出来て心身の健康に繋がると感じた。
・すべての人が平等に行うことができるため、ノーマライゼーションの理論に似ているなと感じました。先生の何も否定しない、誰にでも平等に声をかけ賞賛する、ポジティブな関わりが臨床美術をしている人にどのような影響を与えるのか実感しました。
・臨床美術を実際に行ってみて、先生が初回で仰っていた傾聴の姿勢、個を受容する力、他者への共感力を培うことができたと思います。
・先生が毎回、作品に対して長文でコメントをくれるので読むのが楽しかったし、何より個性を認めてくれるような気がして嬉しかったです!
・周りからもプラスの評価をして貰えたので、自己肯定感が上がるような気がしました。
・授業を重ねるたびに自分の思ったままにとか、描きたいものをとか思えるようになって毎回の授業が楽しかったし、正解ってないんだなと思いました。
・実際にやってみて心が安らぐような感覚があるなと感じました。
・これから医療従事者として人と接するなかで、患者さん一人ひとりの気持ちや尊厳を尊重して関わって行きたいと思いました。
・作品は家に飾って、医療従事者になった時にいつでも思い出せるようにします。
・その人の問題点にだけ目を向けるのではなく、残された機能や生活背景など周りに目を向けることで、その人本来の強みを生かした関わりやケアができると感じました。
・どんな作品でも肯定的に賞賛することができ、それが自己肯定感を高める関わりにつながっていることを実感しました。
・人は何歳になっても褒められるのは嬉しいことだと改めて実感しました。
・先生の明るさ、関わり方、優しさが今後、看護師として働いていく中で一番活かしていきたいと思いました!
・脳の活性化以外にも、自分の作った作品が手元に残ることや他者との交流ができ、病院に長期入院されている患者さん等にも効果的だと思いました。
・相手に効果的な褒め方、好印象を抱かれるような接し方を探していきたいと思います。
・補完・代替医療を広める人にも自分自身がなりたいと思いました。
・治療を選択するのも患者さんの意思が尊重されるべきだし、患者さんが不安な気持ちや思いを表出できるように、私はどんな思いでも傾聴や受容する姿勢を大事にした関わりをしたいと思いました。
・感想を言い合うことでお互いの感じ方に触れ、より深くその人のことを知ることができたように感じたので、現場でも患者さんとの関係性を築く時に用いてみたいです。
今回、大学授業という形で、より多くの学生に体感してもらう機会になりました。将来看護師になる学生に伝え、その先にいる患者さんへとつながる・・
未来への種まきになったのなら、嬉しいです。^^
来年度もより多くの学生たちに出会うことを、心より楽しみにしています。