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yoyo

山下賢二『ガケ書房の頃 そしてホホホ座へ』2

2021.12.24 13:32

『ガケ書房の頃』読み終える。昨日少しだけ書いた感想はこちら。

特に印象的だったのは「ガケ書房後期の五年間、僕は寝ても覚めても毎日楽しくなかった」というフレーズだ。

「苦しかった」とは言えても「楽しくなかった」という言葉はあまり言えないんじゃないかと思う。それは「苦しかった」と言うと人々はその裏にある苦労を慮り、時にすごいと称賛するからだ。けれども「楽しくなかった」は違う。楽しさというのは自分のためのもので、楽しくなかったからといって誰も褒めてはくれない。尊敬もされない。「楽しくなかった」は自分のための言葉だ。本書はそんな自分のための言葉ばかりで語られている。


主に語られているのは憧れの果てについて。憧れから繰り広げられていく苦しみ。でもそのすべての始まりは憧れなのだという現実。憧れだけではやっていけない、けれども憧れがなくてはやっていけない。そういう憧れを讃えるでなく、かといって否定するでもない。少年時代の甘やかな思い出、青年期の自分が何者にもなれていない焦燥感や虚しさ、憧れ。それらの行方をただただ淡々と描いた話だった。

あとがきに「ブルースとか、そういう言葉のほうが似つかわしかった」というフレーズがあったのだけど、本当にそうだと思った。これはブルース。人生だ。