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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

カール大帝の夢6-戦う大司教

2017.08.20 05:19

カール大帝のイスラムとの戦いを描いた勇壮な叙事詩「ローランの歌」だが、内容たるやほとんど血しぶき飛び散る修羅場の戦場。「三国志」のほうがはるかにストーリーがあるよ。その中でひときわ異彩を放つのがランス大司教テュルバン。坊主のくせに強いのなんの。多勢に無勢の戦況で、ローランを守って獅子奮迅!

しかしさしものテュルバンも、確かオリヴィエが絶対絶命のところに救出にかけつけて矛4本に刺し貫かれる。ところがすっくと立ち上がり、側のローランに「私は負けたりはしない。真の勇士は降参などせぬものだ」と言い放って最期の闘いへ。

しかも戦いもさることながら、最後の力を振り絞って、死んだ戦友たちの遺骸に十字を切って、自分の仕事、罪業の消滅を祈っていく。さらに気絶したロランに水を持って行こうとして後ろから刺され、それでもローランのもとにたどりつき、角笛を渡して息絶えるという漢の死にざま。

実はこの大司教のモデルが居るらしい。アキテーヌの聖ギョーム。彼は、カール・マルテルの孫で、アキテーヌ公としてカール大帝に仕え、スペイン遠征ではおおいに武勲を立てたとのことだ。また801年にはカールの息子、ルイと一緒にバルセロナの攻略に成功、後に修道院を建立して自身も僧となった。この戦う僧侶伝説が形成され、ついに十字軍で「修道騎士団」なるものができるのである。

下はアキテーヌの聖ギョーム