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少子化対策は、若いカップルの自由な生活設計から?

2017.08.21 04:43

子どもにまつわることって、とかく自身の経験から判断しがちなので、「こうでしょ」「いやいや、私が感じたのは…」と個人の視点からなかなか抜け出せず、水掛け論になることが多い気がします。広い視野を持って、社会を見通すって、なかなか難しい。

そこで今回ご紹介するのは、ニッセイ基礎研究所・天野研究員の少子化対策に関する分析です。「(私の知る限り)こうに違いない」という少子化対策における印象合戦を止めるため、国の統計局や厚労省のオープンデータ、東京都の統計から、東京都の低出生率を支配している要因を分析し、分かりやすく解説しています。

文章は少し難解な印象ですが、読み込むと非常に面白い。

要約は以下の点です。(少子化が問題だと思う方、時間のある時にぜひ読んでください!)


・47都道府県あっても10人に1人は東京都の人。つまり東京の分析=日本人の10%が存在するエリアの出生率の増減要因を知ることができる。

・日本で最大人口を誇る一方で、出生率は1970年代から常に最下位。日本全体の出生率を引き下げる最大要因エリア。

・女性とパートナーの双方が、前向きにカップリング・妊娠・出産・育児に取り組める社会づくりが、出生率引き上げには最も重要。(なぜ東京都ではかなわないのか?→★にまとめ)

・35~39歳の出生率は、現状では東京都全体の出生率の増減に無関係。でも40代女性の出生率が高いエリアほど低出生率となる。不妊治療への社会投資は、出産奨励策としては有意義だけど、少子化対策としては目的外投資となる。(部分的にはショックな結果ですね…)

・出生率が高いエリア<1>…核家族化している、婚姻発生に比べて離婚発生率が高い、10代が出産している、家が広い、持ち家が持てる=カップルが自由自在な形成力を持てる。伝統的な価値観とは別に、柔軟に2人で生活を設計できることが、出生率向上に寄与する?

・出生率が高いエリア<2>…マイルドヤンキー(地元好き好き)が多い、華やかなイメージのサービス業(3次産業)より製造業(2次産業)で働く人が多い、共働きが多い、公的借金割合が高い(=1人あたり納税額の多いお金持ちエリアは出生率が低い=お金があれば少子化対策になるわけではない)

・20代と30代前半の出生率は東京都全体の出生率に大きく影響し、特に20代後半は全体の出生率とほぼ完全一致。東京都では、全体の出生率の真の支配者、ラストボス的存在。


★東京都の出生率を支配する8要因…①15歳未満人口比率(子どもの割合が高いほど出生率も高い)、②離婚化指標(離婚化が高いほど出生率が高い)、③1平方キロあたり人口密度(過密化するほど出生率が下がる)、④2次産業就業者比率(働き方などの検証が必要)、⑤1住宅あたり延べ面積(大邸宅になるほど生まれない。広い家の管理が女性任せなら負担でしかない?)、⑥飲食店数(飲食店が多いと出生率は上昇。家事負担が少ないほど子供は生まれやすい?)、⑦薬剤師数(薬剤師が多いほど出生率は低くなる。薬剤師が多い=高齢者が多い?)、15歳未満人口における保育所在所児童比率(保育園児が多いほど出生率が高くなる)


他にも、20代、30代前半ほどではないものの、「10代後半女性の出生率も全体の出生率にプラスの影響を持つ」「40代の女性の出生率は全体の出生率にむしろ弱いマイナスの影響を及ぼす」ことを紹介しています。いろいろ考えさせられる分析です。