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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

カール大帝の夢7-馬上少年過ぐ

2017.08.21 05:34

「馬上少年過ぐ。世平らかにして白髪多し」。伊達正宗ではないが、カール大帝は46年の治世で53回もの遠征を行い、西欧中を駆け巡った。これほど行軍できたのは騎馬の力である。すでにカールマルテルの時代から、フランク諸侯の全員の馬揃えが牧草の生え揃う5月に行われ、貢納も牛から馬に代えられている。

身長185㎝はさぞや馬上で映えたろう。ところがローランの歌の末尾に思わぬことが書かれている。「キリスト教徒があんたを呼んでいる、皇帝は出掛けたくなかった、神よなんとつらい人生だ」カールはキリスト教のために遠征に行かされたというのだ。征王かつ聖王という不思議な王である。

事実ローマ風衣装を嫌い、かわうそや黒テンの毛皮のフランク風の衣装を好んだ。が、ローマへ行くときは正装したらしい。子供のときから家庭教師についてキリスト教を学び、アウグスティヌスを聞かされ、王となっても著作をいつも読ませていたという。

王が読み書きができないのはステイタス、秘書に読ますのだ。しかしカールはラテン語をしゃべれ、ギリシャ語を解していた。その上、教育を進めるのに自分が書けなきゃいかん、と毎晩枕元で字を勉強していた。教養人でありながら、狩猟好き、怒ると何千人も切り殺す。矛盾しているが、この王だからこそフランクとキリスト教を繋げた。息子の代にはうまくいかなくなる。

下はパリのノートルダム前の騎馬像