300文字小説 唐変木な小父さん
2020.04.10 16:41
3軒先の町内会館で、夏祭りの打ち合わせがある。
サンダルを履いて出かけてみると、入口には人だかりができていた。
若夫婦が生まれたばかりの赤ん坊を抱いて来ている。
「かわいいわぁ。コンニチワ、太郎ちゃん」
「ばぶばぶ」
「おじいさん。ほら、田中さんちの太郎ちゃんよ」
「ほうほう、かわいいのぅ」
そんな様子を見て、私も一団に加わった。
「おおぅ、ほんとうにかわいいですなぁ」
私は小百合の顔を見て思わずこんな言葉を発していた。
「そこの小父さん、褒める相手、間違ってるんじゃねえの」
ふと見ると小百合の舅(しゅうと)、啓介が私の後ろに立ってぶつくさ言っている。
啓介は、私の幼馴染である。
了
小倉一純