『世界のあいさつことば学』 稲葉 茂勝(著)
2016年8月刊行。著者は国際理解教育学会会員。編集・制作は「こどもくらぶ(エヌ・アンド・エス企画編集室)」。八重洲ブックセンターで、ふっと目に留まり、思わず買いました。この本は、世界の国々のあいさつの言葉やその成り立ちを紹介しています。
例えば「おはよう」。各国の朝のあいさつ言葉を直訳すると・・・
●英語 Good morning →よい朝
●フランス語 Bonjour →よい日
●イタリア語 Buon giorno →よい日
●スペイン語 Buenos dias →よい日
●ドイツ語 Guten Morgan →よい朝
●ロシア語 ドーブラエ ウートラ →よい朝
●韓国語 アンニョン ハ セ ヨ →やすらかですか
●中国語 早上好(ザオ シャン ハオ) →朝元気
●タイ語 サワッディー →やすらかに
●ヒンディー語 ナマステー →あなたに恭礼します(うやうやしく礼をします)
●アラビア語 ルイヘル フーバサ →よい朝
●スワヒリ語 Jambo →お変わりないですか?
韓国語やヒンディー語、スワヒリ語の言葉そのものは知っていましたが、ただの「おはよう」だと思っていました。でも、よくよく考えれば、日本語の「おはよう」とは、機能としては同じだけれど、成り立ちは違いますよね。ということは、本来込められていた思いも違うわけですよね。
日本語の「おはよう」は、諸説あるようですが、『日本文化いろは事典』によれば、「お早くから、ご苦労様でございます」などの略で、朝から働く人に向かって言うねぎらいの言葉だったそうです。他の情報では、起源は歌舞伎にあるという説で、公演の為に楽屋入りした座長を迎え「お早いおつきですね」「お早くからご苦労さまです」という様に相手をねぎらい使っていた言葉が始まりだったとも言われています。いずれにせよ、相手のねぎらいがあったわけですね。
ちなみに、英語のGood morning.は元々I wish you a good morning.が省略された形ですね。「私はあなたにとって良い朝になることを祈っています。」というのが本来の意味です。
いずれにしても、何気なく朝のあいさつとして自然に使っている私たちは、その言葉を、朝のあいさつ言葉の「音」としてしか実際のところは認識していません。もちろん、言葉というのはそんなものかもしれませんが。
それでも、言葉はそれぞれに意味合い(こめられている思い)があるということを理解しておくことは大事です。この朝のあいさつ言葉一つとっても、そのことを改めて思いました。
また、直訳が同じになるものもありました。もちろん、それぞれのニュアンスや語の成り立ちは違うんでしょうけど、言葉は違うけれど、その意図していることが同じというのも面白いですね。
この本には、世界の国々のたくさんの「あいさつ言葉」がその語源や文化背景とともに説明されています。「あいさつ」はコミュニケーションの始まりとも言いますが、世界の人々を理解する第一歩として、この本は素晴らしいと思います。写真も豊富で、世界の子供たちの素敵な表情も大きな魅力です。内容はとても奥深く、大人も楽しめますが、基本的には子供向けの本ですので、学校図書館用におすすめです。
個人的には、日本語の「すみません」の語源、世界の「がんばれ」などが面白かったです。
同じ出版社・編集者から、「けん玉学」「じゃんけん学」などの異文化理解本も出ています。こちらも面白そうです。