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イギリス紀行19

2022.01.15 07:00

そこから歩いて行く。エリオットの住んでいたマンションも遠くないはずなのだが、中々見つけることができない。地球の歩き方のMAPが小さいせいもあるし、GOOGLEマップが使えないこともある。とにかく歩くしかない。いつの間にか、横にはテムズ河が走っていた。このへんのはずなんだけど、と歩いていて、ようやく見つけた。カーマイルというプレートがあり、そこらしいとビデオを回して、解説を入れながら歩く。しかしちょっと歩いていてから気づいた。いや、ここじゃなくて、もう少し先のマンションではないか。先ほどの建物は他の歴史家の住んでた場所らしい。紛らわしいな。

さらに五分から十分探して、ようやくエリオットの住んでいたカーマイルマンションを見つけた。先ほどより大きなマンション(小さなホテルのようでもある)。部屋がいくつもあるようで、エリオットはここに住んでいたのか、と改めて思いを馳せる。で、再びビデオを回し始めて、入り口を覗き込んでると、英国紳士がやってくる(そこの住人らしい)。「ここはプライベートだから入ったらダメだよ。」と言われて、すぐに「エリオットが住んでたのはここですか?」と聞いてみた。相手は「エリオット?」とよく分からない様子。「詩人で、ノーベル賞をとった人」と英語で説明してもピンときた様子はない。逆に「ここは007の原作を書いてた作家が住んでたんだ。」と教えてもらった。

まるでジェームズ・ボンドみたいなカッコイイ英国紳士に、そんなことを教えてもらいまたテンションが上がる。そう、やっぱりイギリス人にとって007は特別なようだ。今やダニエル・グレイヴ版007が何作も作られ、世界中でヒットして好評だからかもしれない(ショーン・コネリーはもちろん)。そうだコベントガーデンの近くにあった映画博物館も、「007博物館」に変わってしまっていた。昔日の詩人であるエリオットよりも、007の原作者のほうが現代のイギリス人にとって価値があるのかもしれない。そういうことはたまに起こる。昔アメリカ留学してたときも、小説家のカート・ヴェネガットのことをアメリカ人に聞いたら「誰?」って感じだった。で「ああ、古い小説家ね。」という答えにびっくりした。だってヴォネガットは七十年代から九十年代に書いてた人(当時は九十年代後半だった)。ヘミングウェイよりは新しいのに。