30年前のトランペットレッスンの話
もう30年ほど前の音大受験のお話をここで何度かしております。
トランペットの師匠である津堅直弘先生のレッスンはおよそ月に一回でした。レッスンの日は実家の横浜から国分寺までの道のりが果てしなくて、実際湘南新宿ラインとかそういうのなかったので、かなり時間がかかっていたと思います。高校生の僕にとっては、もうこれだけでスペシャル感がありました。
当時は乗り換え案内もありませんでしたから、路線図をたよりに乗り換えをして、何をどうやって間違えたのかわかりませんが、立川から青梅線に入ってしまったこともありました。これもスペシャル感。
それはともかく、月に一回のレッスンというのは、本当に貴重な時間であり、この1回でどれだけ吸収できるか必死でした。津堅先生は淡々とレッスンを進める方で、アーバン(教則本)の1曲を吹いて、先生が吹いて(ちょっとアドバイスをしてくださって)、もう一回吹いて、「はい次」。手取り足取りというレッスンではないので、先生が吹いている一挙一動を全部目視でインプットし、耳で音をインプットして、言われたことを覚えて、頭の中がパンパンになった状態で横浜に戻る電車内、アーバンを開いて復習。
それを忘れないように翌日学校に行って練習。次のレッスンまでにできる限り先まで譜読みして、吹けるようになるために必死。でも先生のような音は到底出ないし、演奏テクニックも全然足りない。そんな繰り返しでした。
こうした中で理解したのは、レッスンは教わる場というよりも、自分の練習の成果を聞いてもらってフィードバックを受ける場であり、結局、全部自分でやらなきゃいけないのだ、ということでした。
数十年経って、レッスンをする立場になった今、僕の言動をインプットしようとメモをされたり吹いているところをよく観察し、ご自身でレッスン後に研究している方ほど当然ですが上達スピードが速いです。
趣味でトランペットを楽しむ方は上達することだけが目的ではありませんから、どのようにレッスンを受けられても構わない、ということは付け足しておきます。
ちなみにここでレッスンしております。よろしければぜひ。オンラインレッスンもしております。
荻原明(おぎわらあきら)